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理由で解く 柔道整復師

QJ34P023 リハビリテーション医学

出典:第34回柔道整復師国家試験(2026)午後 問23
問題
77歳の女性。家族と同居している。老化に伴い歩行速度が0.9m/秒と低下しており、障害高齢者の日常生活自立度はA-1である。握力は左右とも15kg、BMIは16.5であり、最近、食事中にむせるようになった。適切な支援策はどれか。
選択肢
1 経管栄養を導入する。
2 散歩などの外出を促す。
3 屋内の移動に車椅子を使用する。
4 ハローワークに登録し職探しをする。
解答
正解2(散歩などの外出を促す。)
解説

歩行速度・握力の低下、著明なやせ、むせの出現がそろっており、AWGS2019でいう「サルコペニアの可能性(possible sarcopenia)」に該当し、フレイルが疑われる状態である。フレイルは適切な介入で改善しうる可逆的な段階なので、活動量と社会参加を保つ「散歩などの外出を促す」が適切な支援策となる。

本症例の数値を確認すると、歩行速度0.9m/秒は1.0m/秒未満、握力15kgは女性の基準18kg未満に該当し、AWGS2019でいう身体機能低下・筋力低下がともに認められる。ただしサルコペニアの確定診断にはDXAやBIAで測定した骨格筋量の低下が必須であり、本症例には筋量の測定値が示されていない。したがって現時点で言えるのは、一般の診療所・地域の現場で判定する「サルコペニアの可能性」の段階までであり、診断名として断定はできない。BMI16.5は18.5未満の低体重で、低栄養が背景にあることを示す。障害高齢者の日常生活自立度A-1は「屋内での生活はおおむね自立しているが、介助があれば外出し、日中はベッドから離れて過ごす」段階であり、まだ自分で動ける力が残っていることが重要な情報である。ここで活動量を下げてしまうと、低栄養→筋量・筋力低下→活動量低下→食欲低下→さらなる低栄養というフレイルサイクルが回り、廃用症候群と閉じこもりが一気に進む。したがって支援の基本は、転倒に配慮しながら歩行と外出の機会を保ち、そこに高エネルギー・高たんぱくの栄養補給とレジスタンス運動を組み合わせることである。むせに対しては、嚥下機能の評価を受けたうえで、とろみ付けなどの食形態調整、椅子座位で顎を引いた姿勢、一口量を少なくしゆっくり食べる、食後の口腔ケアといった対応を家族と共有し、誤嚥性肺炎を予防する。運動・栄養・社会参加の3本柱をそろえることが、この時期のフレイル対策の要となる。

✓ 2. 適切
散歩などの外出を促す。
屋内移動が自立している段階で外出の機会を保つことは、下肢筋力・バランス能力の維持、日光曝露による生活リズムの安定、他者との交流による社会的フレイルの予防につながり、食欲の改善も期待できる。家族と同居しているため付き添いも得やすく、実行可能性の高い支援策である。
✗ 1. 適切でない
経管栄養を導入する。
むせは嚥下機能低下のサインだが、この時点ではまだ経口摂取ができている。まず行うべきは嚥下機能の評価と、食形態・とろみ・姿勢・一口量の調整、口腔ケア、嚥下訓練である。経口摂取で必要量を確保できないと判断された段階で初めて経管栄養が選択肢となるため、現時点での導入は段階が飛んでいる。
✗ 3. 適切でない
屋内の移動に車椅子を使用する。
自立度A-1で屋内移動はおおむね自立しているため、歩けるのに車椅子に移行すると下肢の使用機会が減り、筋力低下と廃用がかえって進む。安全面が心配な場合は、車椅子に替えるのではなく手すりの設置、段差の解消、滑りにくい履物、必要に応じた杖の使用といった歩行を支える環境調整で対応する。
✗ 4. 適切でない
ハローワークに登録し職探しをする。
高齢者が社会参加の場をもつこと自体は望ましいが、本症例で今優先すべき課題は、低栄養・筋力低下・嚥下機能低下への具体的な対応である。就労という負荷の大きい形ではなく、散歩や地域の通いの場への参加といった、体力に見合った活動から社会とのつながりを保つのが現実的な支援となる。
ポイント
  • AWGS2019の基準値:握力は男性28kg未満/女性18kg未満、歩行速度は1.0m/秒未満。本症例は握力15kg・0.9m/秒で両方に該当する。
  • ただしサルコペニアの確定診断には骨格筋量の測定(DXA/BIA)が必要で、握力・歩行速度だけで判定できるのは「サルコペニアの可能性(possible sarcopenia)」の段階にとどまる。本症例も筋量の記載がないため診断名を断定できない。
  • BMI18.5未満は低体重。高齢者では低栄養が筋量減少を加速させるため、高エネルギー・高たんぱくの栄養補給を運動とセットで行う。
  • 障害高齢者の日常生活自立度はJ(生活自立)→A(準寝たきり)→B・C(寝たきり)。A-1は介助があれば外出でき、日中はベッドから離れている段階。
  • フレイルは可逆的。運動・栄養・社会参加の3本柱で、低栄養→筋力低下→活動低下の悪循環(フレイルサイクル)を断つ。
  • むせが出たらまず嚥下評価。食形態調整(とろみ)、顎を引いた座位、一口量を少なく、食後の口腔ケアで誤嚥性肺炎を予防する。
  • 安全確保は「動く手段を奪う」のではなく、手すり・段差解消・杖など歩行を支える環境調整で行う。
比較表
評価項目本症例の所見目安となる基準判定
歩行速度0.9 m/秒1.0 m/秒未満で身体機能低下(AWGS2019)該当
握力左右とも15 kg女性18 kg未満で筋力低下(AWGS2019)該当
骨格筋量記載なし(未測定)DXA・BIAで低下を確認して初めてサルコペニアと確定できる未評価→「サルコペニアの可能性」まで
BMI16.518.5未満は低体重低栄養が疑われる
摂食嚥下食事中のむせむせ・咳・湿性嗄声は嚥下障害のサイン嚥下機能低下の疑い
日常生活自立度A-1屋内はおおむね自立、介助により外出準寝たきり(歩行能力は残存)
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