学習トップ理由で解く 柔道整復師リハビリテーション医学 ▸ §4 リハビリテーション医学の評価と診断 / QJ34P015

理由で解く 柔道整復師

QJ34P015 リハビリテーション医学

出典:第34回柔道整復師国家試験(2026)午後 問15
問題
頭部画像(別冊 No. 1)を別に示す。考えられる診断はどれか。
図
選択肢
1 脳梗塞
2 脳出血
3 外傷性脳損傷
4 くも膜下出血
解答
正解1(脳梗塞)
解説

提示された頭部画像は同一断面のCT・MRI T2強調像・MRI拡散強調像(DWI)の3枚組である。CTには出血を示す高吸収域がまったくなく、DWIでは左大脳半球にだけ斑状の高信号が散在している。急性期脳梗塞の典型的な画像パターンであり、正答は脳梗塞である。

まずCT画像を見る。側脳室体部より上方の高位断面で、脳実質内に白い(高吸収の)塊はなく、脳溝・脳槽も黒いまま保たれ、頭蓋骨内板に接する血腫もない。出血を伴う3疾患(脳出血、くも膜下出血、外傷性脳損傷の急性期血腫)はいずれも発症直後から高吸収域として写るため、このCT所見だけで除外できる。次にMRI T2強調像を見ると、明らかな左右差に乏しい。ところが拡散強調像(DWI)では、左大脳半球の前頭葉から頭頂葉にかけての皮質・皮質下に、境界のはっきりした斑状の高信号が数個散在し、右半球には同様の所見がない。DWIは虚血によって細胞内へ水が移動し水分子の拡散が制限された状態(細胞性浮腫)を鋭敏にとらえるため、発症数十分後から高信号を示す。CTやT2強調像で所見が乏しいのにDWIだけが陽性という組み合わせは、まさに超急性期〜急性期の脳梗塞を意味する。

ここで注意したいのは、梗塞巣の見え方はモダリティによって正反対になる点である。単純CTでは「出血は高吸収(白)、梗塞は低吸収(黒)」と覚えるが、MRI拡散強調像では梗塞が高信号(白)として描出される。「白いから出血」と短絡せず、まず画像の種類を確認してから色調を判断する習慣をつけたい。また本例のように一側半球に複数の病巣が散在するパターンは、心原性塞栓や動脈原性塞栓といった塞栓性の機序を示唆する。リハビリテーション医学の観点では、病巣が左半球にあることから右片麻痺・右半身の感覚障害が予測され、左半球が優位半球であれば失語症を伴いうる。この病巣部位の把握が、急性期からの離床計画やコミュニケーション手段の選択に直結する。

✓ 1. 正しい
脳梗塞
脳梗塞は栄養血管の閉塞によって支配領域が虚血に陥る病態である。本画像ではCTに高吸収域がないこと(=出血系の除外)と、DWIで左大脳半球の皮質・皮質下に斑状の高信号が散在すること(=急性期虚血巣の証明)の2点がそろっており、急性期脳梗塞と判断できる。CTやT2強調像で所見に乏しくてもDWIが陽性であれば脳梗塞を否定してはならない、という点が本問の核心である。
✗ 2. 誤り
脳出血
脳出血であれば、発症直後からCTで被殻・視床・小脳・橋・皮質下といった好発部位に高吸収(白)の塊が写り、周囲に浮腫を伴ったり脳室内へ穿破したりする。提示されたCTには脳実質内に白い塊がまったく認められないため否定される。
✗ 3. 誤り
外傷性脳損傷
外傷性脳損傷では、頭蓋骨内板に接する凸レンズ型(急性硬膜外血腫)や頭蓋内面に沿う三日月型(急性硬膜下血腫)の高吸収域、前頭葉下面・側頭葉先端の脳挫傷、頭蓋骨骨折などが手がかりになる。提示されたCTでは頭蓋骨は連続しており、内板に接する血腫も脳表の挫傷像も認められない。加えて外傷性の病変は外力の加わった部位とその対側に生じ、血管支配域とは無関係である点も、本例の所見と合わない。
✗ 4. 誤り
くも膜下出血
くも膜下出血は脳動脈瘤破裂などによりくも膜下腔(シルビウス裂・脚間槽・迂回槽など)へ血液が広がるため、CTでは脳槽・脳溝がヒトデ型(五角形)に白く描出される。提示されたCTでは脳溝は髄液そのままの黒い低吸収として保たれており、否定される。
ポイント
  • 画像を読む前にモダリティを確認する。単純CTでは梗塞=低吸収(黒)だが、MRI拡散強調像(DWI)では梗塞=高信号(白)で、見え方は正反対になる。
  • DWIは細胞性浮腫を反映し発症数十分後から高信号。CT・T2強調像で所見に乏しくても、DWIが陽性なら急性期脳梗塞と判断する。
  • 本問の所見:CTに高吸収域なし(出血系の除外)+DWIで左大脳半球(前頭葉〜頭頂葉)の皮質・皮質下に斑状高信号が散在=左大脳半球の急性期脳梗塞。
  • 一側半球に複数病巣が散在するパターンは塞栓性機序(心原性・動脈原性)を示唆する。
  • 脳出血はCTで脳実質内(被殻>視床>皮質下>小脳>橋)に白い塊として写る。
  • くも膜下出血はCTで脳実質ではなく脳槽・脳溝が白くなる。突然の激しい頭痛という病歴も合わせて判断する。
  • 外傷性脳損傷は頭蓋骨に接した血腫の形(硬膜外=凸レンズ型/硬膜下=三日月型)と外傷歴が決め手。
  • 左半球の病巣→右片麻痺、優位半球であれば失語。病巣部位が分かれば症状予測と早期離床・訓練計画に直結する。
比較表
疾患単純CTでの所見MRIでの所見分布・位置本画像との対応
脳梗塞低吸収(黒)。超急性期は所見に乏しいDWIで高信号(発症数十分後〜)。T2高信号は数時間以降血管支配域に一致した皮質・皮質下合致:CTに高吸収域なし、DWIで左半球に散在性高信号
脳出血高吸収(白)の塊血腫の時期により信号が変化被殻・視床・皮質下・小脳・橋否定:CTに白い塊がない
くも膜下出血脳溝・脳槽が高吸収(ヒトデ型)FLAIRで脳溝が高信号くも膜下腔(シルビウス裂・脚間槽)否定:CTで脳溝は黒く保たれている
外傷性脳損傷急性期血腫は高吸収微小出血の検出などに有用頭蓋骨内板に接する(硬膜外=凸レンズ型/硬膜下=三日月型)否定:内板に接する血腫も骨折線もない
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