学習トップ理由で解く 柔道整復師病理学概論 ▸ §5 循環障害 / QJ34A121

理由で解く 柔道整復師

QJ34A121 病理学概論

出典:第34回柔道整復師国家試験(2026)午前 問121
問題
充血の原因とならないのはどれか。
選択肢
1 細菌感染
2 温熱
3 アルコール摂取
4 ギプス固定
解答
正解4(ギプス固定)
解説

ギプス固定は静脈の還流を妨げる方向に働くため、生じるのは充血ではなくうっ血です。したがって充血の原因とならないのは4です。

充血は細動脈が拡張して流入する動脈血が増えた状態で、酸素を豊富に含む血液が集まるため、その部位は鮮やかな赤色になり、温かくなります。炎症の初期(発赤・熱感)、温熱刺激、運動、精神的興奮、アルコールによる血管拡張などがきっかけです。これに対しうっ血は、静脈の流出が妨げられて静脈血が滞った状態で、脱酸素化ヘモグロビンが増えるため暗赤色・チアノーゼとなり、冷たく、浮腫を伴います。ギプスや包帯の圧迫、深部静脈血栓、右心不全、腫瘍による圧迫が代表的な原因です。

臨床上とくに重要なのは、ギプス・包帯による圧迫はうっ血で止まるとは限らないという点です。圧迫が強まると静脈還流障害にとどまらず区画(コンパートメント)内圧が上昇し、ついには動脈血流まで損なわれてコンパートメント症候群となり、筋・神経の阻血が数時間続けば阻血性拘縮(Volkmann拘縮)という不可逆的な後遺症に至ります。上腕骨顆上骨折後の前腕や下腿の固定はとくに要注意です。確認すべきは5P——疼痛(pain、とくに他動伸展で増強する激痛)・蒼白(pallor)・脈拍消失(pulselessness)・知覚異常(paresthesia)・運動麻痺(paralysis)——で、しびれ、腫脹、色調変化、爪床の毛細血管再充満の遅れも同じ危険信号です。これらが1つでも認められれば、様子を見ずに直ちにギプスを割り入れる・包帯を緩めるなどして除圧し、ただちに医師へ連絡します。「しばらく観察してから」という判断は、取り返しのつかない拘縮を招きます。

✓ 4. これが正解(充血の原因とならない)
ギプス固定
ギプスによる外部からの圧迫は、まず壁の薄い静脈を圧して還流を妨げます。動脈血の流入が増えるわけではないので、生じるのは充血ではなくうっ血であり、末梢の暗紫色化・腫脹・冷感として現れます。さらに圧迫が強ければ動脈血流も阻害され、コンパートメント症候群からVolkmann拘縮に進むため、緊急の対応を要します。
✗ 1. 充血の原因となる(答えではない)
細菌感染
細菌感染は急性炎症を起こし、ヒスタミンやプロスタグランジンなどの化学伝達物質により細動脈が拡張します。これが炎症性充血で、発赤と熱感の正体です。
✗ 2. 充血の原因となる(答えではない)
温熱
温熱刺激は皮膚の細動脈を拡張させ、放熱のために血流を増やします。温罨法やホットパックで皮膚が赤く温かくなるのは、この温熱性充血によるものです。
✗ 3. 充血の原因となる(答えではない)
アルコール摂取
アルコールとその代謝産物であるアセトアルデヒドは血管を拡張させます。飲酒後の顔面紅潮・熱感は皮膚の充血によるものです。
ポイント
  • 充血=動脈血の流入増加(鮮紅色・温かい)、うっ血=静脈血の還流障害(暗赤色・冷たい・浮腫)
  • 充血の原因:炎症、温熱、運動、精神的興奮、アルコール、血管拡張薬
  • うっ血の原因:ギプス・包帯の圧迫、静脈血栓、心不全、腫瘍による圧迫、妊娠子宮
  • うっ血が続くと浮腫・出血・褐色硬化を生じ、さらに進めば壊死に至る
  • 圧迫が強まると静脈還流障害だけでは済まず、区画内圧上昇から動脈血流も阻害され、コンパートメント症候群 → 阻血性拘縮(Volkmann拘縮、不可逆)へ進む
  • ギプス固定後は5P(疼痛・蒼白・脈拍消失・知覚異常・運動麻痺)を確認。1つでもあれば様子を見ずに直ちに除圧し、ただちに医師へ連絡する(Volkmann拘縮を防ぐため)
比較表
項目充血うっ血
血管の変化細動脈が拡張し動脈血の流入が増える静脈の還流が妨げられ静脈血が滞る
鮮紅色暗赤色・チアノーゼ
温度温かい冷たい
主な原因炎症、温熱、運動、アルコール、精神的興奮ギプス・包帯の圧迫、静脈血栓、心不全、腫瘍の圧迫
その後の経過一過性で回復することが多い浮腫・出血・褐色硬化、進行すれば壊死
圧迫が強い場合(固定時)静脈還流障害にとどまらず動脈血流も阻害 → コンパートメント症候群 → 阻血性拘縮(Volkmann拘縮)。5Pが1つでもあれば直ちに除圧し医師へ連絡
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