学習トップ理由で解く 柔道整復師運動学 ▸ §6 歩行 / QJ34A115

理由で解く 柔道整復師

QJ34A115 運動学

出典:第34回柔道整復師国家試験(2026)午前 問115
問題
踵打ち歩行が特徴的なのはどれか。
選択肢
1 痙直型脳性麻痺
2 両側性小脳性障害
3 パーキンソン(Parkinson)症候群
4 脊髄性運動失調
解答
正解4(脊髄性運動失調)
解説

踵打ち歩行(踵を床に打ちつけるように接地する歩行)は、脊髄後索の障害で深部感覚が失われたときに現れる。足の位置が感覚でわからないため、足を高く上げて投げ出すように振り出し、踵から叩きつけて接地する。

運動失調は障害部位によって、小脳性(小脳および小脳路)、前庭性(前庭・前庭神経)、脊髄性=感覚性(脊髄後索や深部感覚の伝導路)の三つに分けられる。脊髄性運動失調では、位置覚・振動覚といった深部感覚の情報が中枢へ届かないため、体は視覚で足の位置を補おうとする。その結果、足元を見つめながら歩く、両足を開いて支持基底面を広げる、踵から強く接地して床からの衝撃で位置を確かめる、といった歩き方になる。視覚に頼っているので、閉眼したり暗所に入ったりすると動揺が著しく強まる(Romberg徴候陽性)のが決定的な特徴で、位置覚・振動覚の低下や腱反射の低下も伴う。代表疾患は脊髄癆、ビタミンB12欠乏による亜急性連合性脊髄変性症、後索を圧迫する頸椎症性脊髄症など、後索を侵す病変である。なお、足先が垂れて爪先から接地する鶏歩(下垂足)は末梢神経障害によるもので、踵から接地する踵打ち歩行とは接地部位が正反対なので混同しないようにしたい。歩行の型を問われたら「どこが障害されて、その結果どんな情報や制御が欠けるのか」までたどると確実に選べる。実際の対応としては、転倒予防のために足元の照度を確保し、段差をなくし、必要に応じて杖など触覚的な手がかりを増やすことが有効である。

✓ 4. 正しい
脊髄性運動失調
脊髄後索の障害で深部感覚が脱失し、下肢の位置を感覚で把握できなくなる。そのため足を高く上げて振り出し、踵を床に打ちつけるように接地する踵打ち歩行となる。視覚で代償しているため足元を見て歩き、閉眼で著明に悪化する(Romberg徴候陽性)。位置覚・振動覚の低下と腱反射の低下を伴う点も合わせて押さえたい。
✗ 1. 誤り
痙直型脳性麻痺
股関節内転筋群と下腿三頭筋の痙縮により、両膝が擦れ合うように交差するはさみ足歩行(はさみ状歩行)となり、尖足のため爪先側から接地する。腱反射亢進やクローヌスといった痙性の所見を伴う。踵を打ちつけるどころか踵が床につきにくいので、接地の様子が正反対である。
✗ 2. 誤り
両側性小脳性障害
小脳性運動失調では、両足を大きく開いた開脚歩行で体幹が動揺し、進路が定まらない酩酊様(よろめき)歩行となる。深部感覚は保たれているため、閉眼して視覚が絶たれても位置情報そのものは失われず、動揺の増強は軽度にとどまる(Romberg徴候陰性)点が脊髄性との鑑別点である。測定障害・企図振戦・断綴性言語・眼振を伴う。
✗ 3. 誤り
パーキンソン(Parkinson)症候群
前傾前屈姿勢で腕の振りが乏しく、歩幅の狭い小刻み歩行となる。歩き出しの一歩が出にくいすくみ足や、歩き始めると止まれずに速くなる加速歩行(突進現象)も特徴である。静止時振戦・筋強剛・無動を伴い、深部感覚の障害ではなく大脳基底核の機能障害によるもので、踵打ち歩行は生じない。
ポイント
  • 踵打ち歩行=脊髄後索障害による深部感覚脱失=脊髄性(感覚性)運動失調の特徴的歩行。
  • 視覚で代償するため足元を見て歩き、閉眼・暗所で著明に悪化する(Romberg徴候陽性)。位置覚・振動覚の低下、腱反射低下を伴う。
  • 小脳性は開脚した酩酊様歩行で、閉眼しても著明には悪化しない(Romberg徴候陰性)。測定障害・企図振戦・断綴性言語・眼振が手がかり。
  • パーキンソン症候群は小刻み歩行・すくみ足・加速歩行(突進現象)+静止時振戦・筋強剛・無動、痙直型脳性麻痺ははさみ足歩行・尖足+腱反射亢進・クローヌス。
  • 鶏歩(下垂足)は爪先から接地する点で、踵から接地する踵打ち歩行と接地部位が逆。
  • 原因疾患は脊髄癆、亜急性連合性脊髄変性症(ビタミンB12欠乏)、頸椎症性脊髄症など。転倒予防には足元の照度確保・段差の除去・杖など触覚的な手がかりが役立つ。
比較表
病態歩行の型と特徴閉眼での増悪その他の所見
脊髄性(感覚性)運動失調踵打ち歩行。足を高く上げ踵から打ちつける、足元を注視、開脚著明に悪化(Romberg徴候陽性)位置覚・振動覚の低下、腱反射低下
小脳性運動失調(両側性)酩酊様(よろめき)歩行。開脚、体幹動揺、進路が定まらない増強は軽度(Romberg徴候陰性)測定障害、企図振戦、断綴性言語、眼振
パーキンソン症候群小刻み歩行。前傾前屈、腕振り減少、すくみ足、突進現象静止時振戦、筋強剛、無動
痙直型脳性麻痺はさみ足歩行。股関節内転・内旋で両下肢が交差、尖足で爪先接地腱反射亢進、クローヌス、内転筋の緊張
腓骨神経麻痺など(参考)鶏歩。下垂足で膝を高く上げ、爪先から接地前脛骨筋の筋力低下、下腿外側〜足背の感覚障害
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