学習トップ理由で解く 柔道整復師解剖学 ▸ §1 人体解剖学概説 / QJ34A052

理由で解く 柔道整復師

QJ34A052 解剖学

出典:第34回柔道整復師国家試験(2026)午前 問52
問題
上皮に線毛がみられるのはどれか。
選択肢
1 口腔
2 食道
3 気管
4 尿管
解答
正解3(気管)
解説

線毛は、粘液にからめ取ったものを一方向へ押し流すための装置である。選択肢のうち線毛をもつ上皮があるのは気管だけで、正解は3。

上皮の種類は「その場所で何が起きるか」で決まると考えると整理しやすい。食物や器具が直接こすれる口腔・食道は重層扁平上皮で、細胞を何層にも重ねて摩耗に耐える。尿がたまって大きく伸び縮みする尿路は移行上皮(尿路上皮)で、容積の変化に細胞の形を変えて対応する。これに対し気管は多列線毛円柱上皮で、杯細胞が分泌した粘液に吸い込んだ塵や細菌をからめ取り、線毛がそろって咽頭側へ打つことで外へ送り返す(粘液線毛輸送)。線毛上皮は気道のほかに卵管にもあり、こちらは卵子を子宮へ運ぶ。つまり線毛は「粘液に絡めた微細な異物や、自力で動けない卵子を、筋層を使わずに上皮の表面で運ぶ管」の目印である。食塊や尿のように大きな内容物は、上皮ではなく管壁の平滑筋の蠕動が運ぶ。だから同じ「管」でも、食道や尿管には線毛がない。

✓ 3. 正しい
気管
気管の上皮は多列線毛円柱上皮で、杯細胞の粘液と線毛の協調した運動により異物を咽頭へ送り返す。線毛上皮は鼻腔・咽頭鼻部(上咽頭)・喉頭下部(声帯より下)から気管・気管支・細気管支まで続き、末梢へ向かうほど上皮は低く薄くなり、ガス交換を行う肺胞ではついに単層扁平上皮となる。なお咽頭は部位によって上皮が変わり、空気だけが通る咽頭鼻部は多列線毛円柱上皮(呼吸上皮)、食塊も通る咽頭口部・咽頭喉頭部は重層扁平上皮である。「運ぶ場所には線毛、交換する場所には薄い上皮、こすれる場所には重層扁平上皮」と対で押さえる。
✗ 1. 誤り
口腔
口腔粘膜は重層扁平上皮で、線毛はない。咀嚼のたびに食物が直接こすれるため、表層が剥がれても下層から補える多層構造になっている。硬口蓋や歯肉など強い力がかかる部位では角化が加わり、頬粘膜など可動部は非角化にとどまる。
✗ 2. 誤り
食道
食道も(非角化)重層扁平上皮で、線毛はない。食塊が通過するときの摩擦に耐えるための構造で、食塊を運ぶ仕事は上皮ではなく管壁の筋層による蠕動が担う。食道下端で胃の単層円柱上皮へ切り替わり、この境目が食道胃接合部(Z線)である。
✗ 4. 誤り
尿管
尿管の上皮は移行上皮(尿路上皮)で、線毛はない。尿を腎盂から膀胱へ送るのは管壁の平滑筋による蠕動運動である。表層のアンブレラ細胞と強固な密着結合が尿の成分を組織側へ通さないバリアとなり、伸展時には細胞が扁平に変形して内腔の拡大に対応する。
ポイント
  • 線毛=粘液に絡めた微細な異物や卵子を、筋層を使わず上皮の表面で一方向へ運ぶ装置。代表は気道(鼻腔・咽頭鼻部・喉頭下部〜細気管支)と卵管。
  • 食塊や尿のような大きな内容物は線毛ではなく、管壁の平滑筋の蠕動が運ぶ(食道・尿管に線毛はない)。
  • 気管は多列線毛円柱上皮+杯細胞。粘液線毛輸送で異物を咽頭へ戻す。
  • 摩擦を受ける通路(口腔・咽頭口部〜咽頭喉頭部・食道・肛門管・腟)は重層扁平上皮。ただし咽頭鼻部(上咽頭)は多列線毛円柱上皮で、咽頭は部位により上皮が変わる。
  • 尿路(腎盂・尿管・膀胱)は移行上皮。伸展に応じて細胞の形が変わる。
  • ガス交換の場である肺胞は単層扁平上皮。「運ぶ場」と「交換する場」で上皮が変わる。
比較表
部位上皮の種類線毛その形である理由
口腔重層扁平上皮(一部角化)なし咀嚼による摩擦に耐える
咽頭鼻部(上咽頭)多列線毛円柱上皮あり空気だけが通る気道の一部
咽頭口部・咽頭喉頭部重層扁平上皮なし食塊が通過する摩擦に耐える
食道重層扁平上皮(非角化)なし食塊通過の摩擦に耐える(輸送は蠕動)
気管多列線毛円柱上皮あり粘液とともに異物を咽頭へ運ぶ
尿管移行上皮(尿路上皮)なし伸展に対応し尿を漏らさない(輸送は蠕動)
肺胞単層扁平上皮なしガスが通り抜けやすい薄さ
卵管単層線毛円柱上皮あり卵子を子宮へ運ぶ
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