学習トップ理由で解く 柔道整復師必修問題 ▸ §15 肩鎖関節上方脱臼の診察および整復 / QJ34A016

理由で解く 柔道整復師

QJ34A016 必修問題

出典:第34回柔道整復師国家試験(2026)午前 問16
問題
肩鎖関節上方脱臼の整復で助手が行う患側上肢の牽引方向はどれか。
選択肢
1 前上方
2 前下方
3 後上方
4 後下方
解答
正解3(後上方)
解説

肩鎖関節上方脱臼の変形は、鎖骨遠位端の挙上と肩甲骨(肩峰)の下垂が合わさって生まれます。整復で戻すべきは下がった肩峰の側なので、助手は患側上肢を後上方へ牽引し、下垂した肩峰を鎖骨遠位端に近づけます。

上方脱臼ではまず肩鎖靱帯が損傷し、完全脱臼(第3度)ではさらに烏口鎖骨靱帯(円錐靱帯・菱形靱帯)も断裂して転位が大きくなります(亜脱臼=第2度では肩鎖靱帯が断裂しても烏口鎖骨靱帯は断裂しません)。支持を失うと、鎖骨遠位端は僧帽筋上部線維(鎖骨外側1/3に付着)に引かれて挙上位となり、肩甲骨は上肢の重みで下方・前方・内方へ落ち込みます。外見上の階段状変形やピアノキー症状は、この「鎖骨遠位端の挙上」と「肩峰の下垂」が重なった相対的な突出として現れます。整復は、助手が患側上肢を後上方に牽引して肩甲骨を挙上・後方回旋させ、同時に術者が鎖骨遠位端を上方から下方へ圧迫することで、両骨端を向かい合わせる操作になります。整復自体は容易ですが保持が難しいため、整復位が得られたらただちに絆創膏固定などで肩峰の再下垂と鎖骨遠位端の再挙上を抑え、上肢の重みが関節にかからないよう提肘を併用します。

✓ 3. 正しい
後上方
「後方」の成分で肩甲骨を後方回旋させて肩峰を鎖骨遠位端の真下へ戻し、「上方」の成分で下垂した肩峰を持ち上げます。この2方向がそろって初めて関節面が向かい合い、術者の下方圧迫が効きます。
✗ 1. 誤り
前上方
挙上する向きは合っていますが、前方へ引くと肩甲骨が胸郭上を前外方へ滑り、肩峰が鎖骨遠位端の前方にずれてしまいます。上下は合っても前後が合わず、整復位に納まりません。
✗ 2. 誤り
前下方
下方への牽引は、もともと下垂している肩峰をさらに引き下げる操作です。転位(鎖骨遠位端の相対的な突出)が大きくなり、変形が増強します。前後の向きも逆です。
✗ 4. 誤り
後下方
後方成分は適切ですが、下方成分が肩峰の下垂を助長します。牽引で上肢の重みを肩甲帯から取り除くどころか、逆に重みを加えている状態になります。
ポイント
  • 上方脱臼の変形は「鎖骨遠位端の挙上(僧帽筋上部線維の牽引)」+「肩甲骨・肩峰の下垂(上肢の重み)」の合成。だから肩峰を持ち上げる方向が必要。
  • 助手=患側上肢を後上方に牽引/術者=鎖骨遠位端を上方から下方へ圧迫。役割をセットで覚える。
  • 損傷するのは肩鎖靱帯と烏口鎖骨靱帯(円錐靱帯・菱形靱帯)。第2度(亜脱臼)=肩鎖靱帯は断裂するが烏口鎖骨靱帯は断裂しない第3度(完全脱臼)=両靱帯とも断裂し転位が大きい
  • 整復は容易だが保持が困難。整復直後から絆創膏固定+提肘で、肩峰の再下垂を抑えるところまでが治療。
  • 整復の確認は、階段状変形の消失とピアノキーサインの陰性化。固定後も再転位がないか繰り返し確認する。
比較表
牽引方向上下の成分前後の成分結果
後上方肩峰を挙上(適切)肩甲骨を後方回旋(適切)整復位が得られる
前上方肩峰を挙上(適切)肩甲骨が前外方へ滑る前後がずれて適合しない
後下方肩峰の下垂を助長肩甲骨を後方回旋(適切)転位が増大
前下方肩峰の下垂を助長肩甲骨が前外方へ滑る上下・前後とも逆
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