学習トップ理由で解く 柔道整復師整形外科学 ▸ §25 臨床実地問題 / QJ33P067

理由で解く 柔道整復師

QJ33P067 整形外科学

出典:第33回柔道整復師国家試験(2025)午後 問67
問題
76歳の女性。重い段ボールを持ったあとから右示指が屈曲しにくいことを主訴に来院した。手指屈曲時の写真(別冊 No. 3)を別に示す。考えられるのはどれか。
図
選択肢
1 側索損傷
2 伸筋腱損傷
3 浅指屈筋腱損傷
4 深指屈筋腱損傷
解答
正解4(深指屈筋腱損傷)
解説

重い物を持った直後から示指が屈曲しにくくなった症例です。手指を握り込んだときにDIP関節だけが曲がらない所見から、深指屈筋腱の損傷が考えられます。

手指を曲げる腱は二本立てです。浅指屈筋(FDS)は中節骨に付着してPIP関節を屈曲させ、深指屈筋(FDP)はさらに遠位の末節骨底に付着してDIP関節を屈曲させます。DIP関節を曲げられる腱はFDPだけなので、FDPが断裂すればDIP関節の自動屈曲が単独で失われ、他の指が握り込めるなかでその指の末節だけが伸びたまま残ります。手指屈曲時の写真で確認したいのは、まさにこの「一本だけ末節が伸びている」所見です。重い段ボールを持ち上げる動作は、屈曲している指が強制的に伸展されるのと同じ力の加わり方で、FDPが末節骨付着部から引き抜かれる裂離損傷(いわゆるジャージフィンガー)の典型的な受傷機転にあたります。高齢者では腱の変性が加わって、より軽い負荷でも断裂しうる点も念頭に置きます。屈筋腱の断裂は自然治癒が期待できず、時間が経つほど腱が近位へ退縮して手術が難しくなるため、疑った段階で速やかに手の外科を扱う医療機関へ紹介することが重要です。

✓ 4. 正しい
深指屈筋腱損傷
DIP関節を屈曲させる唯一の腱が深指屈筋腱です。これが断裂すると、握り込んでもその指のDIP関節だけが伸びたまま残ります。検査では、PIP関節を検者が固定した状態でDIP関節を自動屈曲できるかを確認します。腱の退縮が進む前に対応する必要があるため、速やかな医療機関への紹介が求められます。
✗ 1. 誤り
側索損傷
側索は指伸筋腱膜の一部で、終止腱としてDIP関節を伸展させる構造です。損傷すればDIP関節が伸展できなくなり、槌指のように末節が屈曲位に垂れます。本例は「屈曲しにくい」という訴えなので、障害されている運動方向が逆です。
✗ 2. 誤り
伸筋腱損傷
伸筋腱が損傷されると障害されるのは伸展です。損傷部位に応じて槌指(DIPの伸展不能)、ボタン穴変形、下垂指などが生じますが、いずれも屈曲は保たれます。本例の主訴とは合いません。
✗ 3. 誤り
浅指屈筋腱損傷
浅指屈筋腱はPIP関節の屈曲を担うので、断裂するとPIP関節の自動屈曲が障害されます。ただし深指屈筋が働くためDIP関節は屈曲でき、握り込みの形は深指屈筋腱断裂とは異なります。また浅指屈筋腱が単独で断裂することはまれです。判別には、他の指を伸展位に固定してPIP関節の屈曲を確認する検査を用います。
ポイント
  • 浅指屈筋(FDS)=中節骨に付着しPIP屈曲。深指屈筋(FDP)=末節骨に付着しDIP屈曲。
  • DIP関節を曲げられるのはFDPだけ。だからFDP断裂ではDIP自動屈曲が単独で失われる。
  • 検査法:PIP関節を固定してDIP屈曲を見ればFDP、他指を伸展位に固定してPIP屈曲を見ればFDS。
  • 握った指が強制伸展される受傷機転(ジャージフィンガー)が典型。高齢者では変性断裂も加わる。
  • 屈筋腱断裂は自然治癒しない。腱が退縮する前に速やかに手の外科へ紹介する。
比較表
損傷障害される運動特徴的な所見
深指屈筋腱DIP屈曲握り込んでも末節だけ伸びたまま
浅指屈筋腱PIP屈曲DIP屈曲は残る。単独損傷はまれ
側索・終止腱DIP伸展槌指(末節が屈曲位に垂れる)
伸筋腱(中央索)PIP伸展ボタン穴変形
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