学習トップ理由で解く 柔道整復師整形外科学 ▸ §25 臨床実地問題 / QJ32P067

理由で解く 柔道整復師

QJ32P067 整形外科学

出典:第32回柔道整復師国家試験(2024)午後 問67
問題
78歳の女性。自宅で尻もちをついた際に腰痛が生じ、動けなくなったため救急車で病院へ搬入された。腰痛は強かったが、両下肢の動きは保たれていた。単純エックス線像(別冊 No. 2)を別に示す。正しいのはどれか。
図
選択肢
1 脆弱性骨折である。
2 皮膚症状を合併する。
3 疼痛は軟骨の摩耗による。
4 手術治療が第一選択である。
解答
正解1(脆弱性骨折である。)
解説

78歳女性が尻もちをついた後に強い腰痛で動けなくなり、両下肢の運動は保たれている——骨粗鬆症を背景とした椎体骨折の典型的な経過で、軽微な外力で生じた脆弱性骨折である。

脆弱性骨折とは、骨強度が低下した骨に、健常な骨なら折れないような軽微な外力(目安として立った高さからの転倒以下)が加わって起こる骨折をいう。高齢女性は閉経後の骨量減少を背景に骨粗鬆症をきたしやすく、尻もち程度の外力で椎体が圧潰する。好発は胸腰椎移行部(第11胸椎〜第2腰椎)で、寝返りや起き上がりなど体幹に軸圧・屈曲がかかる動作で痛みが強まり、安静臥位で軽くなるのが特徴である。本例は両下肢の動きが保たれており、脊髄・馬尾の圧迫による麻痺は考えにくい。単純エックス線像は、一般に椎体の圧潰・変形の有無を確認するために撮影される検査であり、その画像所見と病歴・身体所見を合わせて診断を組み立てる。麻痺がなければ治療はまず保存療法で、体幹装具による外固定と疼痛管理を行い、痛みに応じて早期離床とリハビリテーションを進める。同時に骨粗鬆症そのものの薬物治療と転倒予防(環境整備、下肢筋力・バランス訓練)を並行させ、次の骨折を防ぐことが重要になる。柔道整復師としては、高齢者の軽微な外傷後に強い腰背部痛が続く場合はこの骨折を疑い、速やかに医師の診察・画像評価につなぐ。

✓ 1. 正しい
脆弱性骨折である。
骨強度が低下した高齢女性に、尻もちという軽微な外力が加わって生じた骨折であり、脆弱性骨折の定義そのものに当てはまる。椎体は海綿骨が主体で骨量減少の影響を受けやすく、大腿骨近位部・橈骨遠位端・上腕骨近位部とともに脆弱性骨折の好発部位である。1つ起こると次の骨折の危険が高まるため、診断後は骨粗鬆症の評価と治療につなげる。
✗ 2. 誤り
皮膚症状を合併する。
椎体の圧迫骨折そのものは皮膚に病変をつくらないため、皮膚症状の合併を前提とする記述は当てはまらない。高齢者の背部痛で皮疹を伴う場合はむしろ帯状疱疹など別の病態を考える手がかりになり、両者を区別する視点をもつとよい。
✗ 3. 誤り
疼痛は軟骨の摩耗による。
軟骨の摩耗が痛みの主因となるのは変形性関節症や変形性脊椎症の機序であり、本例には当てはまらない。ここでの痛みは骨折した椎体の不安定性と骨性の疼痛によるもので、体動時に鋭く増強し安静臥位で軽減するという性質を示す。経過が数か月かけて徐々に進む変形性の痛みとは、発症の仕方からして異なる。
✗ 4. 誤り
手術治療が第一選択である。
麻痺を伴わない骨粗鬆症性椎体骨折では、体幹装具による外固定・疼痛管理・早期離床を柱とする保存療法が第一選択となる。安静が長引くと廃用や誤嚥性肺炎、認知機能低下を招くため、痛みの程度に合わせて動ける範囲を広げていく。手術(椎体形成術や後方固定術など)は、痛みが遷延する例、偽関節となった例、遅発性に麻痺が出現した例などで検討する位置づけである。
ポイント
  • 脆弱性骨折=骨強度の低下+軽微な外力。立った高さからの転倒以下の力で起こる骨折を指す。
  • 高齢女性・尻もち・強い腰背部痛の3点がそろえば、まず骨粗鬆症性椎体骨折を考える。好発は胸腰椎移行部。
  • 体動時に痛みが強く安静臥位で軽減するのが特徴。下肢の運動が保たれていれば麻痺の合併は考えにくい。
  • 単純エックス線像は椎体の圧潰・変形の有無を確認するために撮影する。画像所見と病歴・身体所見を合わせて診断する。
  • 初期治療は体幹装具+疼痛管理+早期離床。過度の安静は廃用を招くため、痛みに合わせて活動を広げる。
  • 並行して骨粗鬆症の薬物治療と転倒予防を進め、次の骨折(ドミノ骨折)を防ぐ。
  • 手術は痛みの遷延・偽関節・遅発性麻痺などで検討する二次的な選択肢。
比較表
比較項目骨粗鬆症性椎体骨折(本例)変形性脊椎症
痛みの機序椎体の圧潰と不安定性による骨性疼痛椎間板・椎間関節の変性と軟骨摩耗
発症軽微な外力を契機に急に起こる年余にわたり緩徐に進む
痛みの性質体動・起き上がりで増強、臥位で軽減動き始めや長時間の同一姿勢でこわばり・鈍痛
下肢麻痺通常は伴わない(伴えば脊髄・馬尾の圧迫を疑う)狭窄を伴えば間欠跛行やしびれ
第一選択の治療体幹装具・疼痛管理・早期離床+骨粗鬆症治療運動療法・薬物療法などの保存療法
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