学習トップ理由で解く 柔道整復師外科学概論 ▸ §6 失血と輸血・輸液 / QJ33P053

理由で解く 柔道整復師

QJ33P053 外科学概論

出典:第33回柔道整復師国家試験(2025)午後 問53
問題
急性出血の症状で誤っているのはどれか。
選択肢
1 血圧低下
2 全身蒼白
3 徐脈
4 冷汗
解答
正解3(徐脈)
解説

急性出血では圧受容器反射によって交感神経が緊張し、心拍数を上げて心拍出量を保とうとするため頻脈になる。誤っているのは選択肢3の「徐脈」である。

出血で循環血液量が減ると、心臓へ戻る静脈還流が減り、頸動脈洞と大動脈弓の圧受容器にかかる血管壁の伸展がわずかに弱まる。血圧計にはまだ現れない程度のこの変化を圧受容器が感知して、交感神経が一気に緊張する。その結果、心拍数と心収縮力が増して心拍出量を維持し(頻脈)、皮膚・筋・腹部内臓の細動脈が収縮して血流を心臓と脳へ回す(蒼白、四肢冷感)。同時に汗腺がコリン作動性線維の刺激で発汗するため、冷たく湿った皮膚=冷汗となる。ここで区別したいのは、圧受容器が拾う〈血管壁の伸展のわずかな低下〉と、血圧計で測る〈収縮期血圧〉が別物だという点である。代償が効いているうちは測定される血圧は保たれるので、血圧低下は遅れて現れる所見であり、「血圧が下がっていない=出血していない」とは言えない。逆に徐脈をきたすのは、交感神経の経路そのものが遮断される神経原性ショック(頸髄〜上位胸髄損傷など)が代表であり、急性出血の典型像とは異なる。柔道整復の現場で出血性ショックを疑ったら、出血部位の直接圧迫と保温、下肢挙上を行いつつ、ただちに救急要請して医療機関へつなぐ。

✗ 1. 正しい(答えではない)
血圧低下
出血量が循環血液量のおよそ30%を超えて代償が破綻すると、収縮期血圧が明らかに低下する。20%前後までの段階では末梢血管収縮と頻脈によって収縮期血圧は保たれ、頻脈と脈圧(収縮期−拡張期)の低下だけが現れる点に注意する。いずれにせよ急性出血で起こりうる症状であり、設問の条件(誤っているもの)には当てはまらない。
✗ 2. 正しい(答えではない)
全身蒼白
交感神経緊張により皮膚・筋・腹部内臓の血管が収縮し、限られた血液を心臓と脳に集中させる。その結果、顔面・眼瞼結膜・爪床が蒼白となる。ショックの5徴(蒼白・虚脱・冷汗・脈拍触知不能・呼吸不全)の筆頭であり、設問の条件には当てはまらない。
✓ 3. これが誤り(正答)
徐脈
急性出血で生じるのは徐脈ではなく頻脈である。1回拍出量が減っても心拍数を増やせば心拍出量(=1回拍出量×心拍数)を保てるため、身体はまず脈を速くして対応する。頻脈と脈圧低下は血圧低下より早期に現れるサインで、脈の触れ方が「速く弱い(微弱頻脈)」なら出血を強く疑う。徐脈を呈するのは、交感神経の下行路が絶たれる神経原性ショックや一部の心原性ショックであり、鑑別のカギになる。よって本肢が設問の求める「誤っているもの」である。
✗ 4. 正しい(答えではない)
冷汗
交感神経のコリン作動性線維が汗腺を刺激して発汗が起こり、同時に皮膚血管の収縮で皮膚温が下がるため、「冷たく湿った皮膚」すなわち冷汗となる。蒼白・頻脈とともに早期から出現する典型的な所見であり、設問の条件には当てはまらない。
ポイント
  • 急性出血の基本は交感神経緊張:頻脈・末梢血管収縮(蒼白・冷感)・発汗(冷汗)・呼吸数増加・不穏や意識レベル低下。
  • 心拍出量=1回拍出量×心拍数。1回拍出量が減った分を心拍数で補うから頻脈になる、と機序で覚える。
  • 早期サインは頻脈と脈圧低下。出血量20%前後までは収縮期血圧が保たれ、およそ30%を超えて代償が破綻してから血圧が明らかに下がるため、血圧正常でも出血を否定できない。
  • 圧受容器が感知するのは血管壁の伸展のわずかな低下。血圧計に出る血圧が下がるのはその後、という順序で理解する。
  • ショックの5徴(5P):蒼白・虚脱・冷汗・脈拍触知不能・呼吸不全。
  • 徐脈をきたすショック=神経原性(頸髄〜上位胸髄損傷)や一部の心原性。出血性との鑑別点になる。
  • 対応は出血部位の直接圧迫、保温、下肢挙上を行いながら、速やかに救急要請して医療機関へ引き継ぐ。
比較表
項目出血性(循環血液量減少性)ショック神経原性ショック
主な原因外傷・大血管損傷・消化管出血など頸髄〜上位胸髄損傷、高位脊髄麻酔など
脈拍頻脈(速く弱い)徐脈
血圧低下(20%前後までは代償されて保たれ、約30%超で明らかに低下)低下
皮膚所見蒼白・冷たく湿潤(冷汗)温かく乾燥、紅潮することもある
機序循環血液量減少に対する交感神経の代償交感神経の遮断による血管拡張と心拍数低下
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