学習トップ理由で解く 柔道整復師リハビリテーション医学 ▸ §4 リハビリテーション医学の評価と診断 / QJ33P021

理由で解く 柔道整復師

QJ33P021 リハビリテーション医学

出典:第33回柔道整復師国家試験(2025)午後 問21
問題
運動麻痺や失調などがなく要素的には動作が可能なはずなのに、実際には目的動作に障害がみられる状態はどれか。
選択肢
1 失行
2 失認
3 注意障害
4 遂行機能障害
解答
正解1(失行)
解説

麻痺も失調もなく、何をすべきかも分かっているのに目的の行為が遂行できない状態を失行という。設問文はこの定義をほぼそのまま述べている。

失行の診断は除外から始まる。まず運動麻痺、感覚障害、失調、不随意運動といった要素的な障害がないことを確認し、次に指示や課題そのものを理解できていることを確かめる。それらが揃ったうえでなお目的行為ができない場合に失行と判断する。背景にあるのは、行為の運動プログラムを組み立てて呼び出す過程の破綻であり、責任病巣は左頭頂葉を中心とする領域とされる。左半球の損傷であっても症状は両手に現れうる点が特徴である。臨床では、身振りや模倣ができない観念運動失行、道具の使用や一連の手順が乱れる観念失行、衣服を正しく着られない着衣失行、図形の模写や組み立てが崩れる構成失行などの型が知られている。日常場面では「歯ブラシを渡されたのに使い方の身振りが出ない」「櫛で歯を磨こうとする」といった形で気づかれることが多い。

✓ 1. 正しい
失行
要素的な運動・感覚の障害がなく、課題の理解も保たれているのに、目的にかなった行為ができない状態を指す。個々の筋は動かせるのに、それらを目的に沿って組み立てる過程が働かないと考えると理解しやすい。設問文の「要素的には動作が可能なはずなのに」という限定が、まさに失行の定義に対応している。
✗ 2. 誤り
失認
視力・聴力・触覚といった感覚そのものは保たれているのに、入ってきた情報が何であるかを認識できない状態である。「できない」ではなく「分からない」側の障害で、視覚失認、相貌失認、聴覚失認などが含まれる。行為の障害である失行とは切り口が異なる。なお半側空間無視は失認の一種として扱われることもあるが、方向性注意の障害として注意障害に位置づける立場もあり、本問の鑑別には関わらない。
✗ 3. 誤り
注意障害
必要な対象へ注意を向け、それを持続し、複数の対象に配分する働きが低下した状態である。動作自体は行えるものの、気が散る、注意が続かない、二つのことを同時に進められないという形で現れる。目的行為そのものが組み立てられない失行とは区別する。
✗ 4. 誤り
遂行機能障害
目標を立て、手順を計画し、実行しながら結果を確かめて修正するという一連の働きの障害で、前頭葉が中心となる。個々の動作は行えるのに段取りが組めず、物事を最後までやり遂げられない点が特徴である。単一の行為が成立しない失行とは水準が異なる。
ポイント
  • 失行の定義は「要素的な運動・感覚障害がなく、課題も理解しているのに目的行為ができない」。除外診断が前提となる。
  • 主な型は観念運動失行(身振り・模倣)、観念失行(道具使用・系列動作)、肢節運動失行、着衣失行、構成失行。
  • 責任病巣は左頭頂葉が中心。左半球の損傷でも症状は両手に出うる。
  • 失認は「認識」の障害、失行は「行為」の障害。注意障害は「注意を向ける力」、遂行機能障害は「段取り」の障害と整理する。
  • 対応は、口頭指示だけに頼らず実際の場面と道具を使い、手順を分けて繰り返す。できた動作は日常の流れに組み込んで定着させる。
比較表
症状障害されている働き典型的な現れ方主な責任部位
失行目的行為の組み立てと実行道具の使い方の身振りが出ない、櫛で歯を磨こうとする左頭頂葉が中心
失認入力情報の認識見えているのに何か(誰か)分からない(視覚失認・相貌失認)後頭葉・頭頂葉
注意障害注意の選択・持続・配分気が散る、注意が持続しない、二重課題が困難前頭葉・脳幹網様体賦活系など
遂行機能障害計画・実行・自己修正段取りが組めず最後までやり遂げられない前頭葉
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