学習トップ理由で解く 柔道整復師病理学概論 ▸ §1 病理学の意義 / QJ33A116

理由で解く 柔道整復師

QJ33A116 病理学概論

出典:第33回柔道整復師国家試験(2025)午前 問116
問題
病理解剖の目的でないのはどれか。
選択肢
1 生前の疾患の正確な診断
2 疾患の本態解明
3 治療効果の検討
4 犯罪性の立証
解答
正解4(犯罪性の立証)
解説

病理解剖は、病死した人について遺族の承諾を得たうえで、生前の診断・治療・死因・病態を医学的に検証する解剖である。犯罪性の立証は司法解剖が担う役割なので、目的でないのは4。

日本で行われる解剖は、目的によって大きく系統解剖・病理解剖・法医解剖に分けられ、法医解剖はさらに司法解剖と行政解剖(監察医解剖)に分かれる。系統解剖は正常な人体構造を学ぶために献体をもとに大学で行うもの、病理解剖は病気で亡くなった患者を対象に遺族の承諾を得て「臨床診断は正しかったか」「治療はどこまで効いたか」「直接の死因は何か」「病変はどこまで広がっていたか」を肉眼から顕微鏡レベルまで確かめるもの、司法解剖は犯罪に関係する(またはその疑いのある)死体について刑事訴訟法に基づき捜査機関・裁判所の求めで死因と犯罪性を明らかにするもの、行政解剖(監察医解剖)は犯罪性が疑われない異状死体について監察医が死因を究明するものである。監察医制度が置かれていない地域では、死体解剖保存法に基づく遺族承諾による承諾解剖や、死因・身元調査法に基づく調査法解剖が行われる。病理解剖の所見はCPC(臨床病理検討会)で臨床医と病理医が突き合わせ、次の患者の診療に還元される点に価値がある。一方、法医解剖では遺族の承諾は要件ではない。「誰の求めで、何を明らかにするために行うのか」で線を引けば、選択肢の仕分けは一度で済む。

✓ 4. これが答え(病理解剖の目的ではない)
犯罪性の立証
犯罪性の立証は、捜査機関・裁判所の求めで刑事訴訟法に基づいて行われる司法解剖の目的である。病理解剖は遺族の承諾を前提とした医学的検証であり、事件性の判断や証拠の収集を担う立場にはない。なお、異状死体を検案した医師には医師法第21条により24時間以内に所轄警察署へ届け出る義務があり、司法解剖はその先の捜査手続きの中で行われる。遺族の承諾によって始まる病理解剖とは入口が違う、と押さえておきたい。この届出義務は「検案した医師」に課されたもので、柔道整復師には検案権も届出義務もない(柔道整復師法に該当規定はない)。施術中に急変が起きた場合にとるべき行動は、ただちに施術を中止して救急要請し、医師に引き継ぐことである。
✗ 1. 病理解剖の目的である(答えではない)
生前の疾患の正確な診断
臨床診断と実際の病変が一致していたかを確かめることは、病理解剖のもっとも中心的な目的である。画像や検査だけでは分からなかった病変の広がり、見落とされていた併存疾患などがここで判明する。
✗ 2. 病理解剖の目的である(答えではない)
疾患の本態解明
病変がどの細胞から起こり、どのように進展して臓器の機能を奪ったのかを組織レベルで追えるのは剖検ならでは。新しい疾患概念や病態の理解は、こうした剖検例の積み重ねから生まれてきた。
✗ 3. 病理解剖の目的である(答えではない)
治療効果の検討
投与した薬や手術・放射線治療が病巣にどこまで効いたか、逆に治療に伴う合併症(薬剤性肺障害、感染症など)が死因に関与していないかを判定することも病理解剖の重要な目的である。
ポイント
  • 病理解剖=病死した人が対象。遺族の承諾を得て行い、生前診断の妥当性・治療効果・直接死因・病態の解明が目的。
  • 司法解剖=犯罪に関係する(疑いを含む)死体が対象。刑事訴訟法に基づき捜査機関・裁判所の求めで行い、犯罪性の立証が目的。
  • 解剖は大きく系統解剖・病理解剖・法医解剖に分かれ、法医解剖=司法解剖+行政解剖(監察医解剖)。行政解剖は犯罪性の疑いのない異状死体の死因究明を担う。
  • 系統解剖=正常な人体構造を学ぶための解剖(献体による)。
  • 病理解剖の結果はCPC(臨床病理検討会)で共有され、次の診療の質向上につながる。
  • 異状死体の24時間以内・所轄警察署への届出義務は、医師法第21条が「検案した医師」に課すもの。柔道整復師にこの義務はなく、急変時は救急要請して医師に引き継ぐ。
  • 迷ったら「誰の求めで行うか」「何を明らかにするか」の2点で分類する。
比較表
解剖の種類対象誰の求めで行うかおもな目的
系統解剖献体された遺体大学(医学・歯学教育)正常な人体構造の学習・研究
病理解剖病死した患者主治医の依頼+遺族の承諾診断の妥当性、治療効果、直接死因、疾患の本態解明
司法解剖(法医解剖)犯罪に関係する(疑いのある)死体捜査機関・裁判所(刑事訴訟法)死因の特定と犯罪性の立証
行政解剖=監察医解剖(法医解剖)犯罪性の疑いのない異状死体監察医(都道府県知事が置く/死体解剖保存法)死因の究明(公衆衛生上の目的)

※監察医が置かれていない地域では、遺族の承諾による承諾解剖や、死因・身元調査法に基づく調査法解剖(警察署長の判断)によって死因究明が行われる。国家試験では「系統解剖・病理解剖・法医解剖(司法解剖+行政解剖)」の枠組みを押さえておけばよい。

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