学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §19 各論(脱臼) 上肢 / QJ32P089

理由で解く 柔道整復師

QJ32P089 柔道整復理論

出典:第32回柔道整復師国家試験(2024)午後 問89
問題
肩関節烏口下脱臼の整復障害の要因となるのはどれか。
選択肢
1 肩甲下筋腱の伸長
2 関節上腕靱帯の弛緩
3 関節唇の嵌入
4 腋窩神経の麻痺
解答
正解3(関節唇の嵌入)
解説

整復を妨げるのは「関節の間に何かが挟まる」ことと「骨の形が壊れる」こと。関節唇の嵌入が該当し、答えは3。

烏口下脱臼は肩関節前方脱臼の大半を占め、上腕骨頭が関節窩の前下方(烏口突起の下)へ転位する。通常は関節包の裂孔から骨頭が脱出しているだけなので、牽引と回旋で骨頭を裂孔へ戻せば整復できる。しかし剥離した関節唇や関節包が骨頭と関節窩の間に折り込まれたり、上腕二頭筋長頭腱・腱板の断裂端が介在したり、大結節骨折・関節窩骨折で骨の形状が崩れると、骨頭が元の位置に収まらない。逆に組織が伸びた・緩んだ・麻痺したというだけでは、通り道をふさがないので整復の妨げにはならない。

✓ 3. 正しい
関節唇の嵌入
前下方の関節唇が剥離して骨頭と関節窩の間に折り込まれると、機械的なつっかえ棒となって骨頭が関節窩へ戻れない。数回で整復できないときは力を強めず中止し、画像評価を含めて医師へ紹介する。
✗ 1. 誤り
肩甲下筋腱の伸長
伸長は組織がゆるむ方向であり、むしろ抵抗は減る。肩甲下筋腱が問題になるのは骨頭と関節窩の間に「挟まった」場合で、伸びただけでは整復障害にならない。
✗ 2. 誤り
関節上腕靱帯の弛緩
前方の関節上腕靱帯が緩むと骨頭の通り道は広がるため、整復はむしろ容易な方向に働く。弛緩は反復性脱臼(再脱臼しやすさ)の要因であって、整復障害とは別の話。
✗ 4. 誤り
腋窩神経の麻痺
前方脱臼で最も多い神経合併症だが、神経は骨頭の通り道をふさぐ構造物ではない。三角筋部の感覚と外転筋力を整復の前後で評価・記録し、医師へ情報提供する。
ポイント
  • 烏口下脱臼=前方脱臼の代表。骨頭は関節窩の前下方へ転位する。
  • 整復障害因子は「介在するもの(関節唇・関節包・上腕二頭筋長頭腱・腱板断裂端)」と「骨性の障害(大結節骨折・関節窩骨折・骨頭骨折)」の2系統。
  • 伸長・弛緩・麻痺は整復を妨げない。弛緩は反復性脱臼の要因、麻痺は合併症として整理する。
  • 整復の前後で腋窩神経(三角筋部の感覚)と橈骨動脈の拍動を必ず確認・記録する。
  • 整復できないときは力を増さずに中止し、画像診断へつなぐ。無理な再試行は骨折や神経損傷を招く。
比較表
区分具体例理由
整復障害になる(介在)関節唇・関節包の嵌入、上腕二頭筋長頭腱の介在、腱板断裂端の介在骨頭の戻り道に物理的に挟まる
整復障害になる(骨性)大結節骨折、関節窩骨折、骨頭骨折受け皿や骨頭の形状が崩れる
整復障害にならない肩甲下筋腱の伸長、関節上腕靱帯の弛緩ゆるむ方向で抵抗が減る(反復性脱臼の要因)
整復障害にならない腋窩神経麻痺通り道をふさがない。合併症として評価する
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