学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §18 各論(脱臼) 頭部・体幹 / QJ32P088

理由で解く 柔道整復師

QJ32P088 柔道整復理論

出典:第32回柔道整復師国家試験(2024)午後 問88
問題
胸鎖関節脱臼でみられないのはどれか。
選択肢
1 前方脱臼
2 後方脱臼
3 上方脱臼
4 下方脱臼
解答
正解4(下方脱臼)
解説

胸鎖関節脱臼は前方脱臼が最も多く、次いで後方、まれに上方に起こる。下方脱臼はみられないため、答えは4。

胸鎖関節は鎖骨内側端と胸骨柄・第1肋軟骨がつくる鞍関節で、関節面の適合性が低く、安定性のほとんどを靱帯が担う。前・後胸鎖靱帯、鎖骨間靱帯に加え、第1肋骨の上面と鎖骨内側端の下面(肋鎖靱帯圧痕)を結ぶ肋鎖靱帯が、鎖骨内側端を第1肋骨につなぎとめている。この靱帯が強く張るのは鎖骨内側端が第1肋骨から離れる方向、すなわち上方へ動こうとするときであり、肋鎖靱帯は内側端の上方転位に対する主要な制動として働く(上方脱臼がまれなのはこのためである)。一方、下方については、鎖骨内側端のすぐ真下に第1肋骨・第1肋軟骨と胸骨柄が位置し、骨が土台となって受け止めるため、そもそも抜けるスペースが物理的に存在しない。したがって転位方向は前・後・上に限られる。

✓ 4. これが答え(みられない)
下方脱臼
鎖骨内側端の直下には第1肋骨・第1肋軟骨があり、骨が壁となって下方へ抜けるスペースがない。「下は骨でふさがっている」と場所で覚える。なお肋鎖靱帯は鎖骨内側端が下がる方向ではむしろ緩むので、下方を止めているのは靱帯ではなく骨である。
✗ 1. みられる(答えではない)
前方脱臼
最も頻度が高い型。肩の後外側からの介達外力などで鎖骨内側端が前上方に転位し、皮下に突出して階段状変形として触知できる。整復位の保持が難しく再転位しやすい点を念頭に固定する。
✗ 2. みられる(答えではない)
後方脱臼
頻度は低いが起こる。鎖骨内側端が胸骨柄の後方に入り、気管・食道・大血管など縦隔の構造を圧迫しうる。嚥下困難・呼吸困難・上肢の静脈怒張を確認し、疑ったら直ちに医療機関へ搬送する。
✗ 3. みられる(答えではない)
上方脱臼
まれではあるが記載がある。鎖骨内側端の上方転位を制動しているのは肋鎖靱帯で、この靱帯が強い制動として働くため頻度は低い。逆にいえば制動が破綻すれば起こりうるので、「みられない」わけではない。
ポイント
  • 胸鎖関節は体幹と上肢をつなぐ唯一の関節。骨性の安定性が乏しく、前・後胸鎖靱帯、鎖骨間靱帯、肋鎖靱帯で支えられる。
  • 頻度は前方>後方>上方。下方脱臼はみられない。
  • 肋鎖靱帯は鎖骨内側端を第1肋骨につなぎとめ、内側端の上方転位を制動する。上方脱臼がまれな理由がこの靱帯。
  • 下方脱臼がないのは「鎖骨内側端の直下に第1肋骨・第1肋軟骨があり、抜けるスペースがない」から。靱帯ではなく骨の問題と押さえる。
  • 後方脱臼は縦隔臓器圧迫の危険があり緊急性が高い。呼吸・嚥下・静脈怒張を確認し速やかに医師へつなぐ。
  • 前方脱臼は再転位しやすいので、鎖骨内側端を押さえる圧迫と肩甲帯の位置を整える固定を組み合わせる。
比較表
転位方向頻度主な所見注意点
前方最多鎖骨内側端が皮下に突出、階段状変形整復位の保持が困難、再転位しやすい
後方少ない内側端が触れにくく陥凹、胸骨柄の後方へ気管・食道・大血管の圧迫。緊急搬送
上方まれ内側端が上方へ肋鎖靱帯が上方転位を制動するため頻度は低い
下方みられない第1肋骨・第1肋軟骨が直下にあり、下方へ抜けるスペースがない
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