学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §16 各論(骨折) 上肢 / QJ32P077

理由で解く 柔道整復師

QJ32P077 柔道整復理論

出典:第32回柔道整復師国家試験(2024)午後 問77
問題
上腕骨解剖頸骨折で正しいのはどれか。
選択肢
1 転倒時に手を衝き受傷する。
2 関節の腫脹は軽微である。
3 変形は触知しづらい。
4 ハンギングキャストを用いる。
解答
正解3(変形は触知しづらい。)
解説

上腕骨解剖頸骨折は関節包内骨折で、厚い三角筋などに覆われ骨片の転位も乏しいため、外から変形を触れ取ることが難しい。よって3が正しい。

解剖頸は骨頭と大・小結節の間を走る細いくびれで、ここで折れると骨折線が関節包の内側を通る。関節包内骨折の一般的な性質として、出血が関節内にとどまるため皮下出血斑が出にくく、骨膜性仮骨がつくられにくいので骨癒合が遅れやすい。さらに骨頭を養う血管が骨折線で遮断されると骨頭壊死や偽関節を招くため、予後は良好とは言えない。本骨折自体は上腕骨近位端骨折のなかでは頻度が低く、臨床で多く出会うのは外科頸骨折のほうである。所見としては、肩関節部の腫脹と激しい運動時痛、上肢の自動挙上不能が中心で、外観の変形ははっきりしないことが多い。転位・骨頭壊死のリスクを考えると、疑った時点で無理な整復を試みず、三角巾などで安静を保ったまま整形外科へ紹介するのが適切な対応となる。

✓ 3. 正しい
変形は触知しづらい。
骨折部が関節包の内側にあり、三角筋・回旋筋腱板といった厚い軟部組織に覆われているうえ、腱板や関節包が骨片を支えて大きな転位が起こりにくいため、外見上の変形や骨片の触知は困難。腫脹と運動時痛が主で、所見が乏しいことがかえって特徴となる。
✗ 1. 誤り
転倒時に手を衝き受傷する。
転倒して手を衝き、力が上肢を通って肩に伝わる介達外力は、上腕骨外科頸骨折の代表的な受傷機転として整理される。解剖頸骨折はまれで、肩外側部への直達外力によって骨頭が押し込まれるように生じるものが典型とされ、本問ではこの記述は外科頸骨折の説明として扱われている。
✗ 2. 誤り
関節の腫脹は軽微である。
関節包内骨折では出血が関節腔にたまるため関節血腫を生じ、肩関節部は腫脹する。「関節包内骨折だから所見が乏しい」のは皮下出血斑が出にくいという点であって、腫脹が軽微になるわけではない。
✗ 4. 誤り
ハンギングキャストを用いる。
ハンギングキャストはギプスの重みで持続牽引をかける方法で、上腕骨骨幹部の斜骨折・螺旋骨折などに用いる。関節包内骨折である解剖頸骨折では、牽引力が骨片を離開させて骨癒合を妨げるため適さない。
ポイント
  • 解剖頸骨折=関節包内骨折。頻度は低いが、骨頭壊死・偽関節のリスクが高い。
  • 関節包内骨折の性質=関節血腫による腫脹はあるが皮下出血斑は出にくく、骨癒合が遅れやすい。
  • 厚い軟部組織に覆われ転位も少ないため、外見の変形や骨片の触知は難しい。
  • ハンギングキャストは上腕骨骨幹部骨折に用いる方法。牽引は関節包内骨折では不利。
  • 手を衝いての介達外力で多いのは外科頸骨折。両者の頻度と機転を対で覚える。
比較表
項目解剖頸骨折外科頸骨折
頻度まれ多い(高齢者に好発)
骨折線と関節包関節包内関節包外
皮下出血斑出にくい・遅れて出現上腕内側〜前胸部に明瞭に出現
変形触知しづらい転位により変形を触れやすい
予後の懸念骨頭壊死・偽関節肩関節拘縮
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