学習トップ理由で解く 柔道整復師外科学概論 ▸ §6 失血と輸血・輸液 / QJ32P050

理由で解く 柔道整復師

QJ32P050 外科学概論

出典:第32回柔道整復師国家試験(2024)午後 問50
問題
抗原抗体反応(不適合輸血)の早期症状で誤っているのはどれか。
選択肢
1 発熱
2 発疹
3 けいれん
4 悪心・嘔吐
解答
正解3(けいれん)
解説

不適合輸血の早期症状は、補体活性化とサイトカイン放出による発熱・悪寒、ヒスタミン遊離による皮膚症状、平滑筋収縮による消化器症状が中心です。けいれんは早期ではなく、ショックやDICへ進行した段階で現れうる症状なので、これが答えになります。

ABO不適合輸血では、受血者の血漿中にもとから存在する抗A・抗B抗体(自然抗体、IgM)が輸血された赤血球に結合し、補体を最後まで活性化して血管内溶血を起こします。このとき生じる補体分解産物(アナフィラトキシン C3a・C5a)と炎症性サイトカインが、体温調節中枢を刺激して発熱・悪寒戦慄を、血管を拡張させて血圧低下を、消化管平滑筋を収縮させて悪心・嘔吐を招きます。ヒスタミンが加われば発疹・蕁麻疹・掻痒感が出ます。腰背部痛は消化器症状と同じ機序ではなく、血管内溶血で生じた遊離ヘモグロビンが腎血管の攣縮・腎虚血を引き起こすことを反映する症状として現れます。胸部絞扼感は気管支平滑筋の収縮と血圧低下に伴うものです。これらは輸血開始後わずか数分〜十数分でそろうため「早期症状」と呼ばれます。一方けいれんは、ショックによる脳灌流低下やDIC・急性腎不全といった重篤化した局面で問題になる中枢神経症状で、時間軸がひとつ後ろにずれます。症状に気づいたらただちに輸血を中止し、点滴ラインは生理食塩液に切り替えて確保したまま医師へ報告し、バイタルサインと尿の色(ヘモグロビン尿の有無)を確認します。

✓ 3. これが答え(早期症状ではない)
けいれん
けいれんは溶血そのものが直接起こす症状ではなく、ショックによる脳血流低下、DIC、急性腎不全に伴う電解質異常など、事態が進行してから生じうる中枢神経症状です。輸血直後に真っ先に現れる症状群には含まれないため、これが設問の答えになります。
✗ 1. 早期症状にあたる(答えではない)
発熱
補体分解産物と炎症性サイトカインが体温調節中枢に作用し、悪寒戦慄を伴う発熱が起こります。不適合輸血でもっとも高頻度かつ最初に出る徴候のひとつで、早期症状の代表です。
✗ 2. 早期症状にあたる(答えではない)
発疹
抗原抗体反応に伴って肥満細胞・好塩基球からヒスタミンが遊離し、蕁麻疹様の発疹や掻痒感、顔面紅潮として現れます。皮膚は変化が目で見えるため、輸血中の観察ポイントとして重視されます。
✗ 4. 早期症状にあたる(答えではない)
悪心・嘔吐
アナフィラトキシンによる消化管平滑筋の収縮と血圧低下が重なって、悪心・嘔吐が早期から出現します。なお、同じ早期症状でも腰背部痛は消化器症状とは機序が異なり、遊離ヘモグロビンによる腎血管の攣縮・腎虚血を反映する症状として、胸部絞扼感は気管支平滑筋の収縮と血圧低下によって生じます。機序は分かれますが、いずれも「輸血を始めてすぐ」に現れる点が共通しています。
ポイント
  • 機序の骨格:抗原抗体反応 → 補体活性化 → 血管内溶血 → アナフィラトキシン・サイトカイン放出+遊離ヘモグロビンの出現。ここから症状を導ける。
  • 早期症状の顔ぶれ:発熱・悪寒戦慄/発疹・掻痒/悪心・嘔吐/腰背部痛/胸部絞扼感/血圧低下・頻脈/ヘモグロビン尿。
  • 同じ早期症状でも機序は別。悪心・嘔吐は消化管平滑筋の収縮、腰背部痛は遊離ヘモグロビンによる腎血管攣縮・腎虚血、胸部絞扼感は気管支平滑筋収縮と血圧低下による。
  • 覚え方は「皮膚・消化器・発熱は早い、中枢神経症状は遅い」。けいれん・意識障害はショックやDICまで進んでから。
  • 遅れて出る重大合併症は急性腎不全とDIC。遊離ヘモグロビンによる尿細管障害が背景。
  • 気づいたときの行動:輸血をただちに中止 → 生理食塩液でラインを確保 → 医師へ報告 → バイタルと尿色を確認 → 血液バッグと患者検体を保存。
比較表
時期主な症状背景にある変化
早期(輸血開始後 数分〜十数分)発熱・悪寒戦慄、発疹・掻痒、悪心・嘔吐、血圧低下、頻脈、呼吸困難、胸部絞扼感補体活性化とサイトカイン・ヒスタミン遊離、平滑筋収縮
早期(同時期)腰背部痛、ヘモグロビン尿血管内溶血による遊離ヘモグロビン。腎血管の攣縮・腎虚血
進行期(数時間〜)けいれん、意識障害、乏尿・無尿、出血傾向ショックによる脳灌流低下、急性腎不全、DIC
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