学習トップ理由で解く 柔道整復師外科学概論 ▸ §6 失血と輸血・輸液 / QJ31P050

理由で解く 柔道整復師

QJ31P050 外科学概論

出典:第31回柔道整復師国家試験(2023)午後 問50
問題
輸血の副作用で正しいのはどれか。
選択肢
1 滴下速度と無関係である。
2 移植片対宿主反応がある。
3 発疹は出現すると長時間持続する。
4 腎不全は不適合輸血直後に起こる。
解答
正解2(移植片対宿主反応がある。)
解説

輸血の副作用のうち、輸血後移植片対宿主病(PT-GVHD)は、製剤に含まれる供血者リンパ球が患者の組織を攻撃して起こる重篤な合併症です。「移植片対宿主反応がある」とした2が正しい記述です。

輸血副作用は「いつ起こるか」で整理すると覚えやすくなります。即時型(おおむね24時間以内)にはABO不適合による急性溶血性反応、蕁麻疹などのアレルギー反応・アナフィラキシー、発熱性非溶血性輸血反応、輸血関連急性肺障害(TRALI)、輸血関連循環過負荷(TACO)があります。遅発型には遅発性溶血性反応、輸血後GVHD、輸血感染症が含まれます。PT-GVHDは製剤中の生きたドナーTリンパ球が患者体内で拒絶されずに生着・増殖し、患者の皮膚・肝・腸管・骨髄を「非自己」として攻撃する病態です。輸血後およそ1〜2週で発熱と紅斑が出現し、肝障害・下痢に続いて汎血球減少をきたし、致死率がきわめて高いため、放射線照射血液製剤を用いて供血者リンパ球を不活化することで予防します。

✓ 2. 正しい
移植片対宿主反応がある。
輸血後GVHDのことです。輸血された生きたリンパ球が患者組織を攻撃し、発熱・紅斑・肝障害・下痢に続いて汎血球減少が起こります。血縁者からの輸血ではHLAが一部一致して患者の免疫系がドナーリンパ球を排除できず、かえって発症リスクが高まる点が有名です。現在は放射線照射により予防されています。
✗ 1. 誤り
滴下速度と無関係である。
滴下速度は大きく関係します。重篤な反応の多くは輸血開始直後に現れるため、開始からしばらくは緩徐に滴下して患者のそばで観察し、その後も定期的に観察するのが基本手順です。また急速大量輸血では循環過負荷(TACO)による心不全・肺水腫、低体温、クエン酸による低カルシウム血症などが起こり得ます。
✗ 3. 誤り
発疹は出現すると長時間持続する。
蕁麻疹型アレルギー反応による発疹は輸血中から直後に現れますが、輸血を中止し抗ヒスタミン薬などで対応すれば通常は比較的短時間で消退します。むしろ発疹は重篤化の最初のサインとして重要で、出現したら輸血を止め、喘鳴・嗄声・血圧低下といったアナフィラキシーへの進展がないかをただちに確認します。
✗ 4. 誤り
腎不全は不適合輸血直後に起こる。
ABO不適合輸血で直後に起こるのは血管内溶血そのもので、発熱・悪寒・背部痛・血色素尿・血圧低下として現れます。遊離したヘモグロビンによる尿細管障害とDIC・腎血流低下を経て急性腎不全(乏尿・無尿)に至るのは、数時間から数日かけてです。時間経過が異なる点が誤りです。輸血中に背部痛や血色素尿を認めたら、直ちに輸血を中止して医師に報告し、輸液で尿量を確保します。
ポイント
  • 輸血後GVHD=ドナーの生きたTリンパ球が患者組織を攻撃。輸血後1〜2週で発症、汎血球減少をきたし致死率が高い。予防は放射線照射血液製剤
  • 血縁者からの輸血はHLAの部分一致でGVHDリスクが上がるため避ける。
  • 重篤な反応は輸血開始直後に出やすい。開始時は緩徐に滴下し、そばで観察する。
  • ABO不適合輸血は「直後に溶血 → 数時間〜数日で急性腎不全」という時間差で覚える。
  • 急速大量輸血ではTACO(循環過負荷)、低体温、クエン酸中毒(低Ca)に注意。
比較表
発症時期主な副作用特徴
即時型(〜24時間)急性溶血性反応(ABO不適合)発熱・背部痛・血色素尿。腎不全は後から
即時型アレルギー・アナフィラキシー蕁麻疹、喘鳴、血圧低下
即時型TRALI/TACO輸血後の急性呼吸困難・肺水腫
遅発型(数日〜)遅発性溶血性反応貧血の遷延、黄疸
遅発型(1〜2週)輸血後GVHD発熱・紅斑・肝障害・汎血球減少
遅発型輸血感染症肝炎ウイルス、細菌汚染など
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