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理由で解く 柔道整復師

QJ32A127 病理学概論

出典:第32回柔道整復師国家試験(2024)午前 問127
問題
肺癌で正しいのはどれか。
選択肢
1 我が国において患者数が急速に増加している。
2 肺癌全体の5年生存率は70%程度である。
3 組織学的には扁平上皮癌が腺癌より多い。
4 女性に多い。
解答
正解1(我が国において患者数が急速に増加している。)
解説

肺癌は、高齢化と過去の喫煙習慣の影響を受けて我が国の罹患数・死亡数が増え続けており、この試験が行われた2024年時点で部位別のがん死亡数第1位を占めていました。生存率・組織型・性差の3点は数字を取り違えやすいので、正しい相場観をここで固めましょう。

喫煙が肺の上皮を長年にわたって傷つけ、遺伝子変化が積み重なって癌が生じます。喫煙率そのものは低下してきたものの、発癌までに数十年の時間差があること、そして人口の高齢化が進んだことで、実数としての患者数は増加傾向が続いています。第32回国家試験当時に公表されていたがん統計では、肺癌の年間死亡数はおよそ7万5千〜7万6千人で全部位中1位、年間罹患数はおよそ12万〜13万人でした。一方で早期には症状が乏しく発見が遅れやすいため、全臨床病期をまとめた5年相対生存率はおよそ35%(30%台)にとどまり(全国がん登録2014〜2015年診断例)、他の主要な癌と比べても低い部類に入ります。組織型は肺野末梢に生じる腺癌が約半数を占めて最多で、扁平上皮癌はその次です。性別では男性が女性の約2倍と、男性に多いのが特徴です。

✓ 1. 正しい
我が国において患者数が急速に増加している。
高齢化の進行と、過去に喫煙率が高かった世代が発癌年齢に入ってきたことが重なり、肺癌の罹患数・死亡数は実数として増加を続けてきました。出題時点では死亡数が年間約7万5千人を超えて部位別で最も多く、罹患数も年間12万人を上回る規模です。年齢の影響を取り除いた年齢調整率は横ばいから減少に転じていますが、設問が問うている「患者数」(実人数)は増えており、この肢が正しいと判断できます。
✗ 2. 誤り
肺癌全体の5年生存率は70%程度である。
70%は高すぎます。肺癌は初期症状に乏しく、咳や血痰で受診したときにはすでに進行していることが多いため、全臨床病期を合わせた5年相対生存率はおよそ35%(30%台)にとどまります。70%前後という水準に当たるのは、大腸癌(約71%)・胃癌(約67%)・子宮頸癌(約76%)です。予後の良い代表格として名前が挙がりやすい乳癌(女性・約92%)や前立腺癌(約99%)は、70%どころか90%を超える水準にあります。肺癌はこれらと比べて際立って低く、その落差の大きさが、症状が出る前に見つけることの重要性を物語っています。なお我が国の対策型肺がん検診は、厚生労働省の指針により40歳以上を対象とした年1回の胸部エックス線検査(喫煙指数の高い高危険群では喀痰細胞診を併用)として実施されます。低線量CTは任意型検診や研究の段階にとどまり、国の指針に基づく対策型検診には含まれていない点に注意しましょう。
✗ 3. 誤り
組織学的には扁平上皮癌が腺癌より多い。
多い・少ないが逆です。かつて喫煙率の高かった時代は扁平上皮癌が目立ちましたが、現在の我が国では腺癌が最多で肺癌全体の約半数を占め、扁平上皮癌はそれに次ぐ2番目です。腺癌は肺野(末梢)に発生し、非喫煙者や女性にも生じるため、この構成比の変化につながっています。
✗ 4. 誤り
女性に多い。
肺癌は男性に多い癌です。出題時点の統計では、罹患数・死亡数とも男性が女性のおよそ2倍で、部位別死亡数では男性の1位、女性では大腸癌に次ぐ2位でした。最大の危険因子である喫煙の習慣率が男性で高かったことが背景にあります。ただし女性にも腺癌を中心に一定数発生し、受動喫煙も危険因子になるため、性別で除外せずに考える姿勢が大切です。
ポイント
  • 第32回が行われた2024年時点で、肺癌は部位別がん死亡数の第1位(年間およそ7万5千人)。罹患数も年間12万人規模で、実数として増加が続いている。
  • 5年相対生存率(全臨床病期)はおよそ35%(30%台)=全国がん登録2014〜2015年診断例。集計方法(全国がん登録か院内がん登録か、対象年次、病期構成)により30%台〜40%台前半と幅が出るが、いずれにせよ主要な癌の中では低い部類。
  • 他の癌との比較で相場観を持つ。70%前後=大腸癌(約71%)・胃癌(約67%)・子宮頸癌(約76%)/90%超=乳癌(女性・約92%)・前立腺癌(約99%)。肺癌の約35%はこれらより明らかに低い。
  • 組織型は腺癌が最多(約半数)、次いで扁平上皮癌。腺癌は肺野(末梢)、扁平上皮癌と小細胞癌は肺門(中枢)に多い。
  • 性別は男性が女性の約2倍。最大の危険因子は喫煙で、受動喫煙も危険因子となる。
  • 我が国の対策型肺がん検診(厚生労働省指針)は胸部エックス線検査(40歳以上・年1回)+高危険群への喀痰細胞診。低線量CTは指針に含まれない(任意型・研究段階)。
  • 数字を丸ごと暗記せず、「死亡1位・生存率は低め・腺癌が最多・男性優位」の4本柱で押さえると、選択肢の真偽をすばやく判定できる。
  • 施術所で長引く咳や血痰、体重減少などを訴える方に出会ったら、症状を軽く見積もらず、医療機関の受診と検診をすすめる。
比較表
組織型頻度・好発部位特徴
腺癌最も多い(約半数)。肺野=末梢非喫煙者や女性にも発生する。初期は無症状のことが多い
扁平上皮癌2番目に多い。肺門=中枢喫煙との関連が強い。咳・血痰。PTHrP産生による高カルシウム血症
小細胞癌肺門=中枢喫煙との関連が強い。増殖・転移が速い一方、化学療法・放射線への感受性が高い。ADHやACTHの産生
大細胞癌肺野=末梢分化の目印に乏しく、増殖が速い
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