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理由で解く 柔道整復師

QJ32A123 病理学概論

出典:第32回柔道整復師国家試験(2024)午前 問123
問題
代償性の変化はどれか。
選択肢
1 トレーニングによる骨格筋の発達
2 加齢男性の前立腺肥大
3 妊娠時乳腺組織の発達
4 左腎摘出後の右腎肥大
解答
正解4(左腎摘出後の右腎肥大)
解説

代償性肥大とは、対になった臓器や組織の一部が失われたとき、残った側が働きを肩代わりして大きくなる変化である。片方の腎を摘出した後に反対側の腎が大きくなるのが典型例である。

肥大や過形成は、どんなきっかけで起きたかによって名前が分かれる。使用頻度が増えたことによるものが作業性(労作性)肥大で、トレーニングによる骨格筋の発達や高血圧による心肥大がこれにあたる。失われた分の機能を補うために起こるのが代償性肥大で、片腎摘出後の対側腎、肝部分切除後の残存肝が代表である。ホルモンの刺激で起こるのが内分泌性(ホルモン性)の肥大・過形成で、妊娠時の乳腺や子宮、前立腺肥大症などが含まれる。実質が減って脂肪や結合組織が増えたために見かけだけ大きくなるものは仮性肥大と呼び、デュシェンヌ型筋ジストロフィーの下腿がその例である。分類名を丸暗記するのではなく「なぜ大きくなったのか」を一言で言えるようにしておくと、初見の選択肢でも判断できる。

✓ 4. 正しい
左腎摘出後の右腎肥大
腎という対になった臓器の片方を失ったため、残った右腎が全体の濾過量を維持しようとして大きくなる。まさに代償性肥大である。組織的には残存するネフロンの糸球体と尿細管が大きくなり、単一ネフロンあたりの濾過量が増える。ドナー腎摘出後などで実際にみられる現象である。
✗ 1. 誤り
トレーニングによる骨格筋の発達
繰り返し負荷をかけたことで筋線維が太くなる作業性(労作性)肥大である。何かを失った分を補っているわけではないので代償性とは言わない。骨格筋も永久細胞であり、線維の数ではなく1本1本が太くなる。
✗ 2. 誤り
加齢男性の前立腺肥大
加齢に伴うアンドロゲンとエストロゲンのバランスの変化を背景に、内尿道周囲の腺組織と間質が増える内分泌性の変化である。名称は「肥大」だが、組織学的な実体は細胞数が増える過形成である。夜間頻尿や排尿困難をきたす。
✗ 3. 誤り
妊娠時乳腺組織の発達
エストロゲン、プロゲステロン、プロラクチンなどのホルモン刺激による内分泌性(ホルモン性)の肥大・過形成である。妊娠時の子宮平滑筋が肥大するのと同じ機序で、授乳を終えると退縮する生理的な変化である。
ポイント
  • 代償性肥大=失われた機能を残った側が肩代わりする。片腎摘出後の対側腎、肝部分切除後の残肝。
  • 作業性(労作性)肥大=使いすぎ・負荷増大。トレーニングによる骨格筋、高血圧による心筋。
  • 内分泌性(ホルモン性)=ホルモン刺激。妊娠時の乳腺・子宮、前立腺肥大症、甲状腺腫。
  • 仮性肥大=実質が減り脂肪・線維組織が増えて大きく見えるだけ。デュシェンヌ型の下腿。
  • 前立腺肥大症は名前が「肥大」でも実体は過形成。名称と病理用語のずれに注意する。
比較表
分類きっかけ代表例
代償性肥大臓器・組織の一部が失われた片腎摘出後の対側腎肥大、肝部分切除後の残肝
作業性(労作性)肥大使用頻度・負荷の増大トレーニングによる骨格筋、高血圧による心筋
内分泌性(ホルモン性)ホルモンの刺激妊娠時の乳腺・子宮、前立腺肥大症、甲状腺腫
仮性肥大実質減少+脂肪・結合組織の増加デュシェンヌ型筋ジストロフィーの下腿
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