学習トップ理由で解く 柔道整復師生理学 ▸ §14 感覚の生理 / QJ32A086

理由で解く 柔道整復師

QJ32A086 生理学

出典:第32回柔道整復師国家試験(2024)午前 問86
問題
頭が直立位にあるとき頭部の水平回転の開始に応答するのはどれか。
選択肢
1 球形嚢
2 卵形囊
3 半規管
4 コルチ器
解答
正解3(半規管)
解説

頭部の「回転(角加速度)」をとらえる受容器は半規管です。頭が直立位のときの水平方向の回転は、主に外側(水平)半規管が担当します。

内耳の前庭器は、半規管と耳石器(卵形嚢・球形嚢)の2系統に分かれます。半規管は、骨半規管の中に膜半規管が納まった二重構造で、膜半規管の中は内リンパ、骨半規管との間の隙間は外リンパで満たされます。膜半規管のふくらんだ部分(膨大部)には、有毛細胞をのせた感覚上皮の隆起である膨大部稜があり、有毛細胞から伸びる感覚毛は、その上を覆うゼラチン様のクプラの中に埋まっています。つまり膨大部稜=感覚上皮、クプラ=その上にかぶさるゼラチン質の帽子であり、両者は別の構造です。膜半規管内の内リンパが動くとクプラが傾き、中に埋まった感覚毛がたわんで有毛細胞が興奮します。回転が始まった瞬間は、内リンパが慣性でその場に取り残されるため管との間に相対的な流れが生じ、クプラが傾いて発火頻度が変わります。逆に同じ速さの回転が続くと内リンパも管と一緒に回ってしまい流れが消えるので、応答は減衰します。つまり半規管は「回り続けていること」ではなく「回り始め・回り終わり=角加速度」に応答する受容器です。一方の耳石器は平衡砂(耳石)の重みを利用するため、重力の向き(頭位)と直線加速度を検出します。設問の「回転の開始に応答する」という表現が、半規管を指す決め手になります。

✓ 3. 正しい
半規管
三半規管は互いにほぼ直交する3つの面に配置され、頭部直立位での水平回転の成分は外側(水平)半規管がとらえます。回転開始時のクプラの傾きが膨大部稜の有毛細胞を興奮させ、前庭神経の発火頻度が増減して、回転の向きと強さが中枢へ伝わります。角加速度の受容器と覚えておけば、この設問は迷わず選べます。
✗ 1. 誤り
球形嚢
球形嚢は耳石器の一つです。頭部直立位では感覚斑(平衡斑)がほぼ垂直の面に位置するため、上下方向の直線加速度(エレベーターの昇降のような動き)や頭部の傾きに応答します。回転そのものをとらえる構造ではないので、ここでは選びません。直線加速度=耳石器、と整理しておきましょう。
✗ 2. 誤り
卵形囊
卵形嚢も耳石器で、直立位では感覚斑がほぼ水平の面に位置し、前後・左右といった水平方向の直線加速度と頭部の傾きに応答します。「水平」という語に引かれて選びやすい肢ですが、卵形嚢が受け持つのは水平方向の“移動”であって“回転”ではありません。水平回転の開始をとらえるのは外側半規管だと押さえてください。
✗ 4. 誤り
コルチ器
コルチ器(ラセン器)は蝸牛管の基底板上にある聴覚の受容器で、音による基底板の振動を有毛細胞が電気信号に変換します。担当するのは聴覚であって平衡覚ではありません。同じ内耳・同じ有毛細胞でも役割が違う点を、蝸牛神経(聴覚)と前庭神経(平衡覚)の区別とあわせて確認しておくと確実です。
ポイント
  • 半規管=角加速度(回転の開始・停止)の受容器。耳石器(卵形嚢・球形嚢)=直線加速度と重力(頭位)の受容器。
  • 膨大部稜は有毛細胞をのせた感覚上皮の隆起、クプラはその上を覆うゼラチン質。感覚毛がクプラに埋まり、クプラの傾きが有毛細胞を興奮させる。
  • 骨迷路(骨半規管・前庭・蝸牛)の中は外リンパ、その中に納まる膜迷路(膜半規管・卵形嚢・球形嚢・蝸牛管)の中は内リンパ。膨大部稜・クプラ・平衡斑はいずれも膜迷路側にある。
  • 頭部直立位での水平回転は外側(水平)半規管が主に応答する。
  • 卵形嚢は水平方向の直線加速度、球形嚢は垂直方向の直線加速度に応答する。
  • 等速回転が続くと内リンパの流れが止まりクプラが元に戻るため、回転感覚は減衰する。
  • コルチ器は蝸牛内の聴覚受容器で、平衡覚には関与しない。半規管・耳石器は前庭神経、コルチ器は蝸牛神経が支配し、両者はまとめて内耳神経(第Ⅷ脳神経)となる。
比較表
受容器存在部位適刺激直立位での代表的な場面
半規管の膨大部稜(感覚上皮)+クプラ(ゼラチン質)骨半規管の中にある膜半規管(膜迷路)の膨大部。内部は内リンパ角加速度(回転の開始・停止)その場で首を左右に振り向く、体ごと回り始める
卵形嚢の平衡斑(+耳石)骨迷路の前庭内にある膜迷路(卵形嚢)。内部は内リンパ水平方向の直線加速度、頭部の傾き電車の発進・停車、前後左右への加速
球形嚢の平衡斑(+耳石)骨迷路の前庭内にある膜迷路(球形嚢)。内部は内リンパ垂直方向の直線加速度、頭部の傾きエレベーターの上昇・下降
コルチ器(ラセン器)膜迷路である蝸牛管の基底板上。内部は内リンパ音(基底板の振動)音の聞き取り(平衡覚には無関係)
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