学習トップ理由で解く 柔道整復師生理学 ▸ §14 感覚の生理 / QJ32A087

理由で解く 柔道整復師

QJ32A087 生理学

出典:第32回柔道整復師国家試験(2024)午前 問87
問題
下行性痛覚抑制系に含まれるのはどれか。
選択肢
1 後索核
2 内側毛帯
3 脊髄視床路
4 中脳水道灰白質
解答
正解4(中脳水道灰白質)
解説

下行性痛覚抑制系の起点は中脳水道周囲灰白質(PAG)です。残る3つはいずれも脊髄から脳へ向かう上行性の伝導路・中継核で、抑制系には含まれません。

痛みの情報は脊髄後角で中継され、脊髄視床路を通って上行します。これに対して脳の側から痛みの伝達そのものを弱める仕組みがあり、これが下行性痛覚抑制系です。経路は、中脳水道周囲灰白質(PAG)→ 延髄の縫線核群(大縫線核)や橋の青斑核 → 脊髄後角、という順に下ります。後角では、セロトニン(縫線核由来)やノルアドレナリン(青斑核由来)が働き、エンケファリンを含む介在ニューロンを介して一次求心性線維の終末からの伝達物質放出を抑え(シナプス前抑制)、二次ニューロンの興奮も抑えます。PAGはオピオイド受容体に富み、モルヒネなどのオピオイド鎮痛薬が効く主要な作用部位でもあります。競技中や事故直後に痛みを感じにくいことがあるのは、この系が強く働くためと説明されます。選択肢を見分ける手がかりは「上りの道か、下りの道か」です。

✓ 4. 正しい
中脳水道灰白質
中脳水道周囲灰白質(PAG)は下行性痛覚抑制系の出発点です。ここから延髄の大縫線核や橋の青斑核を経由して脊髄後角へ下行し、痛覚伝達を抑制します。オピオイド受容体が豊富で、モルヒネの鎮痛作用が発現する中心的な部位でもあるため、「PAG=鎮痛のスイッチ」と結び付けて覚えると定着します。
✗ 1. 誤り
後索核
後索核は延髄にある薄束核と楔状束核のことで、後索を上ってきた識別性触圧覚と深部感覚(意識にのぼる固有感覚)を中継します。後索‐内側毛帯路という上行路の中継核であり、痛覚の抑制には関与しません。まず「上行路の中継核」と位置づけて、下行性の抑制系と切り分けましょう。
✗ 2. 誤り
内側毛帯
内側毛帯は、後索核から出た二次ニューロンが延髄で交叉(毛帯交叉)したのち視床の後外側腹側核へ向かう上行線維束です。運ぶのは触圧覚・深部感覚であり、方向も脊髄から脳へ向かう上りです。下行性の抑制系とは経路も担当する感覚も異なります。
✗ 3. 誤り
脊髄視床路
脊髄視床路(特に外側脊髄視床路)は痛覚・温度覚を伝える代表的な上行路で、痛みに深く関わるため最も引っかかりやすい肢です。ただしこれは痛みを「伝える側」の経路であり、「抑える側」ではありません。下行性痛覚抑制系は、まさにこの経路への入力を脊髄後角のレベルで弱めます。痛覚の語が出てきたら、上行か下行かを必ず確認する習慣をつけてください。
ポイント
  • 下行性痛覚抑制系の経路は、中脳水道周囲灰白質(PAG)→ 延髄の大縫線核・橋の青斑核 → 脊髄後角。
  • 伝達物質はセロトニン(縫線核由来)とノルアドレナリン(青斑核由来)で、後角のエンケファリン介在ニューロンが仲介する。
  • 作用の実体は、一次求心性線維終末からの伝達物質放出の抑制(シナプス前抑制)と、二次ニューロンの興奮抑制。
  • PAGはオピオイド受容体に富み、モルヒネなどの鎮痛はこの系の活性化が主要な機序。
  • 後索核・内側毛帯は触圧覚/深部感覚の上行路、脊髄視床路は痛覚・温度覚の上行路。「上りは伝える、下りは抑える」と整理する。
比較表
選択肢の構造方向担当する働き主な部位・所属する経路
中脳水道周囲灰白質(PAG)下行痛覚伝達の抑制(鎮痛)の起点中脳。大縫線核・青斑核を経て脊髄後角へ
後索核(薄束核・楔状束核)上行識別性触圧覚・深部感覚の中継延髄。後索‐内側毛帯路
内側毛帯上行識別性触圧覚・深部感覚の伝達延髄で交叉し視床(後外側腹側核)へ
脊髄視床路上行痛覚・温度覚(外側)、粗大な触圧覚(前)の伝達脊髄後角で中継し交叉、視床へ
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