学習トップ理由で解く 柔道整復師必修問題 ▸ §2 医療過誤とリスクマネジメント / QJ32A004

理由で解く 柔道整復師

QJ32A004 必修問題

出典:第32回柔道整復師国家試験(2024)午前 問4
問題
インシデントはどれか。
選択肢
1 患者が医療施設内で転倒し負傷した。
2 医療的準則に従わず患者に被害が生じた。
3 医療行為によって不測の事態が予想された。
4 医療行為によって医療従事者に被害が生じた。
解答
正解3(医療行為によって不測の事態が予想された。)
解説

インシデントは「実害が生じなかった(生じる可能性はあった)出来事」です。実害が生じればアクシデント、そこに過失が加われば医療過誤になります。分かれ目は被害者が誰かではなく、実害が出たかどうかです。

医療安全では、出来事を「実害が出たか」と「過失があったか」の2軸で整理します。インシデント(ヒヤリ・ハット)は、誤りが実施される前に気づかれた、あるいは実施されたものの結果として傷害に至らなかった段階を指します。アクシデントは実際に傷害・不利益が生じたもので、そのうち医療的準則からの逸脱(過失)が原因のものが医療過誤です。ここで注意したいのが「被害を受けたのが誰か」という点です。厚生労働省の「リスクマネージメントマニュアル作成指針」は、医療事故を「患者についてだけでなく、注射針の誤刺のように、医療従事者に被害が生じた場合」も含めて定義しています。つまり職員の受傷であっても医療事故に含まれるので、「被害者が医療者だからインシデントではない」という切り方はできません。判断するのはあくまで「実害が生じたか」であり、生じていればアクシデントに分類されます(職員の受傷については、これとは別に労働災害としての補償手続きが走ります)。ハインリッヒの法則が示すように、重大事故の背後には数多くのヒヤリ・ハットがあります。だからこそインシデントは責任を問わずに報告してもらい(インシデントレポート)、集めて分析し、手順や環境を直すことでアクシデントの芽を先に摘みます。「ヒヤリとしたら、その場で記録して共有する」という行動が、医療安全の出発点です。

✓ 3. 正しい
医療行為によって不測の事態が予想された。
実害が生じる前の段階で危険に気づいた状況であり、傷害は発生していません。これがインシデント(ヒヤリ・ハット)です。気づいた時点でレポートを出し、原因と再発防止策をチームで共有します。
✗ 1. 誤り
患者が医療施設内で転倒し負傷した。
実際に負傷という害が生じているのでアクシデント(医療事故)です。実害の有無がインシデントとの分かれ目になります。
✗ 2. 誤り
医療的準則に従わず患者に被害が生じた。
過失(準則からの逸脱)と実害の両方がそろっており、医療過誤にあたります。アクシデントの中でも過失が認められる類型です。
✗ 4. 誤り
医療行為によって医療従事者に被害が生じた。
すでに被害(実害)が生じているため、インシデントではなくアクシデントに相当します。否定の理由が「被害を受けたのが医療者だから」ではない点に注意してください。厚生労働省の指針では、注射針の誤刺のように医療従事者に被害が生じた場合も医療事故に含まれるとされています。職員の受傷にはこれとは別に労働災害としての補償手続きが必要になりますが、インシデントかどうかの分類はあくまで「実害が生じたか」で判断します。
ポイント
  • インシデント=実害なし(生じる可能性はあった)。ヒヤリ・ハットともいう。
  • アクシデント=実害あり。そのうち過失によるものが医療過誤
  • 医療事故の定義には、注射針の誤刺のように医療従事者に被害が生じた場合も含まれる(厚労省「リスクマネージメントマニュアル作成指針」)。労災補償の手続きはこれとは別に走る。
  • 分類の軸は「被害者が誰か」ではなく「実害が生じたか」。医療者の受傷でも実害があればアクシデント側。
  • インシデントレポートは責任追及のためでなく、原因分析と再発防止のために出す。
  • ハインリッヒの法則(重大事故1の背後に軽微29、ヒヤリ・ハット300)が報告文化の根拠。
比較表
用語実害過失
インシデント(ヒヤリ・ハット)なし(生じる可能性はあった)問わない危険に気づいて未然に防いだ
アクシデント(医療事故)あり問わない院内で転倒し負傷した/注射針の誤刺で職員が受傷した(患者に限らず医療従事者の被害も医療事故に含まれる。労災補償の手続きは別に走る)
医療過誤ありあり準則を守らず被害が生じた
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