学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §24 臨床実地問題 / QJ31P113

理由で解く 柔道整復師

QJ31P113 柔道整復理論

出典:第31回柔道整復師国家試験(2023)午後 問113
問題
21歳の男性。大学テニス部に所属している。右肩部周辺の鈍痛や易疲労感、挙上障害を訴え来所した。肩関節屈曲時に肩甲骨内側縁と肩甲骨下角が後方に突出するのがみられた。考えられないのはどれか。
選択肢
1 前鋸筋麻痺
2 僧帽筋麻痺
3 菱形筋麻痺
4 三角筋麻痺
解答
正解4(三角筋麻痺)
解説

この設問は「考えられないのはどれか」を問うている。肩甲骨の内側縁と下角が浮き上がる翼状肩甲は、肩甲骨を胸郭に引きつける筋の麻痺で起こる。三角筋にはその役割がないため、原因としては挙がらない。

肩甲骨は鎖骨を介する以外に骨性の連結をもたず、前鋸筋・僧帽筋・菱形筋・肩甲挙筋といった筋の働きで胸郭に押しつけられて安定している。この「押しつけ役」が抜けると、上肢を挙げた際に肩甲骨の内側縁と下角が後方へ浮き上がる翼状肩甲となる。最も代表的なのは長胸神経麻痺による前鋸筋麻痺で、肩関節屈曲(前方挙上)や壁押し動作で著明になる。副神経麻痺による僧帽筋麻痺、肩甲背神経麻痺による菱形筋麻痺でも肩甲骨の固定が破綻し翼状肩甲を生じうる。一方、三角筋は肩甲骨・鎖骨から上腕骨へ付く筋で、上腕骨を動かす側にある。麻痺すれば外転力は落ちるが、肩甲骨そのものは胸郭から浮かない。「肩甲骨を胸郭に付ける筋か、上腕骨を動かす筋か」で切り分けるのがこの問題の要点である。

✓ 4. これが答え(考えられない)
三角筋麻痺
三角筋は上腕骨を動かす筋であり、肩甲骨を胸郭に引きつける役割をもたない。腋窩神経麻痺では肩外転筋力の低下と上腕外側上部の感覚障害が問題になるが、肩甲骨内側縁や下角が浮き上がる翼状肩甲は生じない。
✗ 1. 考えられる(答えではない)
前鋸筋麻痺
長胸神経麻痺による前鋸筋麻痺は翼状肩甲の最も典型的な原因。肩関節屈曲時に肩甲骨の内側縁と下角が後方へ浮き上がるという本例の所見にそのまま合致するため、原因として十分に考えられる。
✗ 2. 考えられる(答えではない)
僧帽筋麻痺
副神経麻痺で僧帽筋が働かなくなると、肩甲骨の内転・上方回旋と胸郭への固定が破綻し、翼状肩甲と挙上障害を生じる。原因として挙がるので答えではない。
✗ 3. 考えられる(答えではない)
菱形筋麻痺
肩甲背神経麻痺で菱形筋が働かなくなると肩甲骨内側縁を胸郭に引きつける力が失われ、翼状肩甲を生じうる。頻度は前鋸筋麻痺より低いが、原因として除外できない。
ポイント
  • 翼状肩甲=肩甲骨の内側縁・下角が胸郭から浮き上がる所見。原因は肩甲骨を胸郭に固定する筋の麻痺。
  • 最多は前鋸筋麻痺(長胸神経)。僧帽筋麻痺(副神経)、菱形筋麻痺(肩甲背神経)でも生じる。
  • 前鋸筋麻痺は肩関節屈曲や壁押し動作で誘発しやすい。
  • 三角筋(腋窩神経)は上腕骨を動かす筋で、翼状肩甲の原因にはならない。
  • 「肩甲骨を胸郭に付ける筋か、上腕骨を動かす筋か」で分類すると迷わない。
比較表
支配神経翼状肩甲主な働き
前鋸筋長胸神経生じる(最多)肩甲骨の外転・上方回旋、胸郭への固定
僧帽筋副神経生じる肩甲骨の挙上・内転・上方回旋
菱形筋肩甲背神経生じる肩甲骨の内転・下方回旋
三角筋腋窩神経生じない肩関節の外転・屈曲・伸展
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