学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §16 各論(骨折) 上肢 / QJ31P087

理由で解く 柔道整復師

QJ31P087 柔道整復理論

出典:第31回柔道整復師国家試験(2023)午後 問87
問題
コーレス(Colles) 骨折後に疼痛が残存する要因でないのはどれか。
選択肢
1 長母指伸筋腱断裂
2 尺骨茎状突起偽関節
3 遠位橈尺関節不全脱臼
4 三角線維軟骨複合体損傷
解答
正解1(長母指伸筋腱断裂)
解説

長母指伸筋腱断裂が答え。これはコーレス骨折の代表的な合併症ではあるが、現れるのは母指を伸ばせないという運動障害で、疼痛が残る原因ではない。

コーレス骨折後に手関節痛が残るとき、痛みの出どころは尺側にあることが多い。骨折時に尺骨茎状突起も折れ、癒合せず偽関節になると、そこに付着する三角線維軟骨複合体(TFCC)ごと不安定になって尺側部痛が続く。橈骨の短縮や背側傾斜が残れば遠位橈尺関節のかみ合わせが崩れて不全脱臼となり、ドアノブを回す・タオルを絞るといった回内外動作で痛む。TFCC自体の損傷も同じく尺側部痛と回内外時痛を生む。一方、長母指伸筋腱は骨折部(リスター結節付近)で骨の凹凸に擦られたり血行障害を受けたりして、受傷から数週〜数か月後に突然断裂する。このとき患者が気づくのは「母指の先が伸ばせない」ことで、痛みはむしろ乏しい。だから固定期間中から母指の自動伸展を定期的に確認し、伸ばせなくなったら早めに医療機関へつなぐ。

✓ 1. これが答え(疼痛残存の要因ではない)
長母指伸筋腱断裂
骨折部で腱が摩耗・阻血して遅発性に断裂し、母指IP関節の伸展不能をきたす。主症状は運動障害であり、疼痛の残存を説明するものではない。
✗ 2. 答えではない(疼痛残存の要因である)
尺骨茎状突起偽関節
骨癒合が得られないと、付着する三角線維軟骨複合体ごと不安定となり、手関節尺側の痛みが持続する。
✗ 3. 答えではない(疼痛残存の要因である)
遠位橈尺関節不全脱臼
橈骨の短縮や背側傾斜が残ると関節のかみ合わせが崩れ、前腕の回内外で尺側部痛と可動域制限が生じる。
✗ 4. 答えではない(疼痛残存の要因である)
三角線維軟骨複合体損傷
TFCCは遠位橈尺関節と尺骨手根間のクッション兼安定装置。損傷すると尺側部痛、握力低下、回内外時のクリックが残る。
ポイント
  • コーレス骨折後の遺残疼痛は尺側が中心。尺骨茎状突起偽関節・遠位橈尺関節不全脱臼・TFCC損傷が三本柱。
  • 長母指伸筋腱断裂は遅発性合併症。主症状は母指IP関節の伸展不能で、疼痛は乏しい。固定中から母指の自動伸展を確認する。
  • 橈骨の短縮・背側傾斜(掌側傾斜の消失)を残さない整復と固定が、後の疼痛予防につながる。
  • その他の合併症=正中神経障害(手根管症候群)、複合性局所疼痛症候群(CRPS)、手指拘縮、肩手症候群。
  • 固定中から手指・肘・肩の自動運動を指導し、挙上と腫脹の管理を続ける。母指が伸びない、しびれが強まる、灼けるような痛みが増すときは早めに医療機関へつなぐ。
比較表
合併症主症状疼痛残存の要因か
長母指伸筋腱断裂母指IP関節の伸展不能要因ではない(運動障害が主)
尺骨茎状突起偽関節手関節尺側痛要因である
遠位橈尺関節不全脱臼回内外時の尺側痛、可動域制限要因である
三角線維軟骨複合体損傷尺側痛、握力低下、クリック要因である
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