学習トップ理由で解く 柔道整復師外科学概論 ▸ §18 胸部外傷(救急法) / QJ31P055

理由で解く 柔道整復師

QJ31P055 外科学概論

出典:第31回柔道整復師国家試験(2023)午後 問55
問題
胸部外傷で正しいのはどれか。
選択肢
1 緊張性気胸の治療は酸素療法である。
2 内開放性気胸では膿胸を起こしやすい。
3 肋骨骨折の好発部位は第1~3肋骨である。
4 第5〜8肋骨の多発骨折で胸壁動揺を起こしやすい。
解答
正解4(第5〜8肋骨の多発骨折で胸壁動揺を起こしやすい。)
解説

隣接する複数の肋骨がそれぞれ2か所以上で折れると、その部分の胸壁が呼吸と逆向きに動く胸壁動揺(フレイルチェスト)が生じます。折れやすい中位肋骨、なかでも第5〜8肋骨あたりの多発骨折は、これを起こしやすい典型例です。

肋骨は上位(第1〜3)が鎖骨・肩甲骨と厚い筋層に守られ、下位(第11・12)は浮遊肋で外力を逃がせるため、実際に折れやすいのは中位肋骨(第4〜9、なかでも第5〜8)です。教科書によっては好発部位を「第5〜8肋骨」と記載するものもありますが、どちらも「中位が折れやすい」という同じ事実を、範囲を広くとるか狭くとるかの違いで表しているにすぎず、本問の選択肢3(第1〜3)と選択肢4(第5〜8)はいずれもこの理解で判断できます。ここが複数本・各2か所以上で折れると胸郭の連続性が失われ、吸気時に陥凹し呼気時に膨隆する奇異呼吸(胸壁動揺)が起こって換気効率が落ちます。ただし予後を左右するのは動揺そのものより、その下に生じている肺挫傷による低酸素血症で、酸素投与と十分な鎮痛、必要に応じて陽圧換気で対応します。一方、緊張性気胸は胸腔にたまった空気が一方向弁のように逃げ場を失って縦隔を圧排し、静脈還流を妨げる閉塞性ショックの病態で、酸素投与だけでは改善しません。頸静脈怒張、気管の健側偏位、患側呼吸音の消失、急速に進む血圧低下を認めたら、直ちに救急要請して緊急脱気・胸腔ドレナージができる施設へつなぐことが最優先です。

✓ 4. 正しい
第5〜8肋骨の多発骨折で胸壁動揺を起こしやすい。
ここでいう「壁動揺」は胸壁動揺(フレイルチェスト)を指すものと読めます。第5〜8肋骨は中位肋骨のなかでも最も折れやすい範囲で、教科書によってはここをそのまま「肋骨骨折の好発部位」と記載します(より広く第4〜9肋骨と示す記載とも矛盾しません)。複数本が各2か所以上で折れると胸郭の支持性が失われて奇異呼吸を生じます。呼吸に伴って胸壁の一部だけがへこむ動きを見たら、肺挫傷の合併を念頭に酸素と鎮痛が行える医療機関へ速やかに搬送します。
✗ 1. 誤り
緊張性気胸の治療は酸素療法である。
酸素投与は補助にすぎません。原因は胸腔内に閉じ込められた空気なので、まず太い針での胸腔穿刺による緊急脱気を行い、続いて胸腔ドレナージで持続的に空気を抜きます。放置すれば閉塞性ショックから心停止に至るため、疑った時点で直ちに救急要請します。
✗ 2. 誤り
内開放性気胸では膿胸を起こしやすい。
内開放性気胸は肺や気管支の損傷によって胸腔が気道と交通したもので、外気に直接さらされません。感染(膿胸)を起こしやすいのは、胸壁に開放創ができて胸腔が外界と交通する外開放性気胸のほうです。外開放性気胸では創部を三辺テーピングなどで覆いつつ、緊張性気胸への移行に注意しながら搬送します。
✗ 3. 誤り
肋骨骨折の好発部位は第1~3肋骨である。
この肢の論点は、第1〜3肋骨は折れにくいという点です。第1〜3肋骨は鎖骨・肩甲骨と厚い筋層に保護されているため骨折しにくく、好発するのは中位肋骨(第4〜9、なかでも第5〜8)です。したがって「好発部位は第1〜3」という記述は誤りになります。逆にここが折れている場合は高エネルギー外傷を意味し、鎖骨下動脈損傷や腕神経叢損傷、大血管損傷の合併を疑う必要があります。
ポイント
  • 肋骨骨折の好発は中位肋骨(第4〜9、とくに第5〜8)。教科書によっては「第5〜8肋骨」と記載されるが、同じ事実の範囲の取り方の違い。
  • 上位(第1〜3)は鎖骨・肩甲骨と筋層に保護され、下位(第11・12)は浮遊肋で外力を逃がすため折れにくい。
  • 胸壁動揺(フレイルチェスト)=隣接する複数肋骨がそれぞれ2か所以上骨折 → 奇異呼吸。
  • フレイルチェストの予後を決めるのは合併する肺挫傷。酸素・鎮痛・必要に応じ陽圧換気。
  • 緊張性気胸の第一選択は緊急脱気→胸腔ドレナージ。酸素だけでは改善しない。
  • 第1〜3肋骨の骨折は高エネルギー外傷のサイン。鎖骨下動脈・腕神経叢損傷を疑う。
比較表
気胸の種類胸腔がどこと交通するか主な問題初期対応
閉鎖性気胸交通なし(閉じている)肺の虚脱経過観察〜脱気
内開放性気胸気道(肺・気管支損傷)空気漏れの持続ドレナージ
外開放性気胸外界(胸壁の開放創)汚染・感染(膿胸)、換気障害創の被覆+ドレナージ
緊張性気胸一方向弁で流入のみ縦隔偏位・閉塞性ショック緊急脱気→ドレナージ
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