学習トップ理由で解く 柔道整復師生理学 ▸ §4 呼吸 / QJ31A100

理由で解く 柔道整復師

QJ31A100 生理学

出典:第31回柔道整復師国家試験(2023)午前 問100
問題
ヘモグロビンの酸素解離曲線が左方にシフトする要因はどれか。
選択肢
1 pHの上昇
2 温度の上昇
3 酸素分圧の上昇
4 2,3-ジホスホグリセリン酸の増加
解答
正解1(pHの上昇)
解説

pHが上がる(アルカリ性に傾く)とヘモグロビンの酸素親和性が高まり、酸素解離曲線は左方へ移動する。

酸素解離曲線は、横軸の酸素分圧に対する縦軸の酸素飽和度を表すS字状の曲線である。曲線が左に寄るのは酸素と結びつきやすい(放しにくい)状態で、その要因はpHの上昇、二酸化炭素分圧の低下、体温の低下、2,3-ジホスホグリセリン酸の減少である。逆にpHの低下と二酸化炭素分圧の上昇では曲線が右方へ移動し、組織へ酸素を放しやすくなる。この水素イオン(pH)と二酸化炭素によるヘモグロビンの酸素親和性の変化をボーア効果とよぶ。体温の上昇や2,3-ジホスホグリセリン酸の増加も同じく右方移動の要因だが、これらはボーア効果とは別の機序によるものなので、まとめて「ボーア効果」と呼ばないように注意する。運動中の筋は酸性で温かく二酸化炭素が多いので右へずれて酸素が届きやすくなり、肺では逆の条件で酸素を取り込みやすくなる、と生理的な意味とセットで理解すると、丸暗記に頼らずに判断できる。

✓ 1. 正しい
pHの上昇
水素イオン濃度が下がるとヘモグロビンは酸素と結合しやすくなり、曲線は左方へ移動する。これはボーア効果が左向きに働いた状態にあたる。過換気などでアルカローシスになると、末梢組織で酸素を放しにくくなるのはこのためである。
✗ 2. 誤り
温度の上昇
体温が上がると酸素親和性が下がり、曲線は右方へ移動する。発熱時や運動中の筋で酸素が届きやすくなる、理にかなった変化である。ただしこれはボーア効果ではなく、温度による親和性の変化である。
✗ 3. 誤り
酸素分圧の上昇
酸素分圧は曲線の横軸そのものなので、上昇すると曲線上の位置が右上へ動いて飽和度が上がるだけである。曲線の位置(酸素親和性)を変える要因ではないため、シフトの要因とは区別する。
✗ 4. 誤り
2,3-ジホスホグリセリン酸の増加
赤血球の解糖系で作られ、ヘモグロビンに結合して酸素を放しやすくする。したがって増加は右方移動の要因である。慢性の低酸素状態や貧血、高地滞在で増える。これもボーア効果とは別の機序による右方移動である。
ポイント
  • 左方移動=酸素と結びつきやすい:pH上昇、二酸化炭素分圧低下、体温低下、2,3-ジホスホグリセリン酸減少。
  • 右方移動=酸素を放しやすい:①pH低下・二酸化炭素分圧上昇(=ボーア効果)/②体温上昇・2,3-ジホスホグリセリン酸増加(ボーア効果とは別機序)。
  • ボーア効果は水素イオン(pH)と二酸化炭素によるヘモグロビン酸素親和性の変化を指す用語。体温や2,3-DPGによる移動は含まない。
  • 組織(末梢)では右方の条件、肺では左方の条件がそろい、酸素の受け渡しに都合よくできている。
  • 胎児ヘモグロビン(HbF)は2,3-ジホスホグリセリン酸と結合しにくく曲線が左方にあるため、母体から酸素を受け取れる。
  • 一酸化炭素はヘモグロビンとの親和性が極めて高く、曲線を左方へずらして組織への酸素放出も妨げる。
比較表
要因上昇・増加したとき低下・減少したとき
pH(ボーア効果)左方移動(酸素を放しにくい)右方移動(酸素を放しやすい)
二酸化炭素分圧(ボーア効果)右方移動左方移動
体温(ボーア効果とは別機序)右方移動左方移動
2,3-ジホスホグリセリン酸(ボーア効果とは別機序)右方移動左方移動
酸素分圧曲線上の位置が動くだけで、曲線自体は移動しない
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