学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §24 臨床実地問題 / QJ30P114

理由で解く 柔道整復師

QJ30P114 柔道整復理論

出典:第30回柔道整復師国家試験(2022)午後 問114
問題
30歳の男性。職業はプログラマーである。10日程前から前腕外側に腫脹と圧痛を自覚して来所した。来所時、母指を自動運動させると痛みが増強し握雪音が聴取できた。考えられるのはどれか。
選択肢
1 回内筋症候群
2 狭窄性腱鞘炎
3 腱交叉症候群
4 三角線維軟骨複合体損傷
解答
正解3(腱交叉症候群)
解説

前腕遠位橈側(背側)の腫脹・圧痛に、母指の自動運動での増悪と握雪音が加わる。第1区画と第2区画の腱が交差する部位で摩擦が起きた腱交叉症候群である。

長母指外転筋と短母指伸筋(第1伸筋区画)は、前腕遠位で長・短橈側手根伸筋(第2伸筋区画)の上を斜めに乗り越えて走行する。この交差部(リスター結節から近位およそ4〜8cm)で腱と腱周囲組織が擦れ合うと、腱周囲炎を起こして腫脹・熱感・圧痛を生じ、母指や手関節を動かしたときに「雪を握るような」ザクザクとした軋轢音(握雪音・捻髪音)が触知・聴取できる。手関節を背屈位に保ったまま母指を反復して使う作業、たとえばキーボード操作やマウス操作、また漕艇や重量挙げなどで発症しやすい。対応としては、まず手関節背屈位での反復動作を減らす作業環境の調整(キーボード・マウスの高さ、リストレストの使用、こまめな休憩)を具体的に提案し、急性期には局所の安静・冷却と、母指から手関節を含む固定を行う。

✓ 3. 正しい
腱交叉症候群
第1区画と第2区画の腱交差部に生じる腱周囲炎。前腕遠位橈背側の腫脹・圧痛と、母指の自動運動での疼痛増強、そして握雪音という三つがそろう本症例の典型像である。握雪音が触れることが鑑別の最大の手がかりになる。
✗ 1. 誤り
回内筋症候群
円回内筋の二頭間などで正中神経が絞扼される絞扼性神経障害。症状は前腕近位「掌側」の痛みと、正中神経領域(母指〜環指橈側)のしびれで、腫脹や握雪音は伴わない。部位も性質も異なる。
✗ 2. 誤り
狭窄性腱鞘炎
この場合はド・ケルバン病を指し、第1区画の腱鞘が橈骨茎状突起部で狭窄する。母指運動での痛みは共通するが、圧痛部位はもっと遠位の橈骨茎状突起上であり、腱鞘の肥厚と滑動時痛が主体で、握雪音は通常みられない。フィンケルスタインテストが陽性となる。
✗ 4. 誤り
三角線維軟骨複合体損傷
手関節「尺側」の痛みを主症状とする損傷で、前腕の回内外や手関節尺屈で疼痛が誘発される。痛む部位が橈側と尺側で正反対であり、母指の自動運動とは直接結びつかない。
ポイント
  • 握雪音(捻髪音)+前腕遠位橈背側の腫脹=腱交叉症候群を第一に考える
  • 部位の目安はリスター結節の近位4〜8cm。ド・ケルバン病(橈骨茎状突起部)より近位にある
  • 第1区画(長母指外転筋・短母指伸筋)が第2区画(長短橈側手根伸筋)の上を交差する構造が原因
  • 手関節背屈位での母指の反復使用(PC作業、漕艇など)が誘因
  • 急性期は安静・冷却・母指を含む固定。あわせて作業環境の調整まで具体的に助言する
比較表
疾患痛む部位特徴的所見
腱交叉症候群前腕遠位橈背側(リスター結節の近位4〜8cm)腫脹・熱感・握雪音
ド・ケルバン病(狭窄性腱鞘炎)橈骨茎状突起部フィンケルスタインテスト陽性、腱鞘の肥厚
回内筋症候群前腕近位掌側正中神経領域のしびれ、円回内筋部の圧痛
TFCC損傷手関節尺側回内外・尺屈で疼痛、尺屈回外テスト陽性
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