学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §24 臨床実地問題 / QJ30P112

理由で解く 柔道整復師

QJ30P112 柔道整復理論

出典:第30回柔道整復師国家試験(2022)午後 問112
問題
14歳の女子。ソフトボール部活動中、左投げで遠投をしたところ「ガクッ」と音とともに肩に違和感を自覚し来所した。左上腕を下方へ引き下げたところ、肩峰と上腕との間に間隙ができた。考えられるのはどれか。
選択肢
1 動揺性肩関節症
2 リトルリーガー肩
3 ベネット(Bennett) 損傷
4 肩峰下インピンジメント症候群
解答
正解1(動揺性肩関節症)
解説

上腕を下方へ引くと肩峰と骨頭の間に段差(サルカスサイン)ができるのは、下方への関節弛緩を示す所見。動揺性肩関節症を考える。

動揺性肩関節症(ルーズショルダー)は、明らかな脱臼の既往がなくても関節包が広く緩く、骨頭が下方あるいは多方向へ偏位してしまう状態をいう。若年女性に多く、両側性のことも珍しくない。遠投・スパイク・水泳のように上肢を大きく加速させる動作で、腕が「抜けそう」「ガクッとする」という脱力感や不安感を訴えるのが典型的な訴え方である。診察では上腕を下方へ牽引したときに肩峰の下に陥凹(間隙)が触れるサルカスサインが決め手になる。設問の「肩峰と上腕との間に間隙ができた」はまさにこれを指している。対応は順序が大切で、まず症状を誘発している投球を一時中止し、不安定性の方向(下方か多方向か)と程度、および他の投球障害の合併を評価する。そのうえで腱板(とくに棘下筋・肩甲下筋)と肩甲帯(前鋸筋・僧帽筋下部)の求心位保持トレーニングを段階的に導入し、投球量とフォームを調整しながら段階的に競技復帰させる。逆に安静一辺倒で終わらせると不安定性は改善しないため、休ませて終わりにもしない。成長期の中学生であることを踏まえ、保護者・指導者とも復帰の見通しを共有しておく。

✓ 1. 正しい
動揺性肩関節症
上腕の下方牽引で肩峰下に間隙(サルカスサイン)が生じるのは下方不安定性の所見であり、動揺性肩関節症に特徴的。若年女性、オーバーヘッド動作中の「ガクッ」という脱力感という背景とも合致する。
✗ 2. 誤り
リトルリーガー肩
投球の反復により上腕骨近位骨端線が離開するストレス障害。投球時痛と上腕骨近位(骨端線部)の圧痛が主体で、関節そのものは緩んでいないため下方牽引で間隙はできない。
✗ 3. 誤り
ベネット(Bennett) 損傷
投球肩の後下方関節唇周囲に形成される骨性の隆起(骨棘)で、フォロースルー期に肩後方の痛みを訴えるのが特徴。痛みの部位も病態も異なり、関節弛緩の所見は伴わない。
✗ 4. 誤り
肩峰下インピンジメント症候群
肩峰下腔で腱板や滑液包が挟み込まれる病態。挙上途中で痛む有痛弧(ペインフルアーク)、ニアー徴候・ホーキンス徴候が陽性となる。関節が緩むのではなく狭くなる病態であり、サルカスサインとは方向性が逆。
ポイント
  • サルカスサイン(上腕下方牽引で肩峰下に陥凹)=下方不安定性=動揺性肩関節症
  • 若年女性・両側性・脱臼の既往なし・オーバーヘッド動作での脱力感が典型像
  • リトルリーガー肩は骨端線、ベネット損傷は後下方関節唇周囲の骨棘と、いずれも「緩み」ではない
  • 肩峰下インピンジメントは肩峰下腔の狭小化。ペインフルアーク、ニアー・ホーキンス徴候で見る
  • 対応の順序は「まず投球を一時中止して不安定性の方向と程度を評価」→「腱板・肩甲帯の求心位保持トレーニング」→「投球量・フォームを調整して段階的に復帰」
  • 休ませるだけの安静一辺倒でも、痛みを押して投げ続けるのでもない。評価してから段階的に戻す
比較表
疾患主な訴え特徴的所見
動揺性肩関節症抜けそう・ガクッとする脱力感サルカスサイン陽性、多方向不安定性
リトルリーガー肩成長期の投球時痛上腕骨近位骨端線部の圧痛、画像で骨端線開大
ベネット損傷フォロースルー期の肩後方痛後下方関節唇周囲の骨性隆起
肩峰下インピンジメント症候群挙上途中の痛みペインフルアーク、ニアー/ホーキンス徴候
この問題の解説の修正を依頼する

解説に誤り・改善点があればお知らせください。件名と本文は自動入力済みです(編集できます)。お名前・メールアドレスは任意です。送信内容は玄康株式会社(黒澤一弘)に届きます。