学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §24 臨床実地問題 / QJ30P105

理由で解く 柔道整復師

QJ30P105 柔道整復理論

出典:第30回柔道整復師国家試験(2022)午後 問105
問題
18歳の男子。柔道の練習中に足払いを頻回に受けた際、下腿部に疼痛を感じた。下袴に血液の付着がみられたが、そのまま練習を継続した。3日後、疼痛および腫脹が増強し来所した。来所時、下腿部に発赤を伴う腫脹、熱感がみられ体温は38.5°Cであった。考えられるのはどれか。2つ選べ。
選択肢
1 蜂窩織炎
2 シンスプリント
3 脛骨悪性骨腫瘍
4 急性コンパートメント症候群
解答
正解1(蜂窩織炎)、4(急性コンパートメント症候群)
解説

下腿に創を負ったまま練習を続け、3日後に発赤・熱感・腫脹の増強と38.5℃の発熱が出ている。創からの感染による蜂窩織炎と、腫脹による区画内圧上昇=急性コンパートメント症候群の両方を考え、いずれも直ちに医師へ紹介する。

下袴への血液付着は、足払いを受けた下腿に皮膚の傷ができていたことを示す。ここから細菌が真皮深層から皮下組織に侵入すれば蜂窩織炎となり、境界の不明瞭な発赤・熱感・腫脹・圧痛に発熱が加わる。放置すると壊死性軟部組織感染症や敗血症へ進み得るため、抗菌薬治療が必要である。もう一つ、反復する打撲による筋内出血と炎症性の腫脹は、下腿の閉じた筋区画の内圧を高める。安静にしていても増強する強い疼痛、区画の緊満感、他動的伸張痛が急性コンパートメント症候群の早期の手がかりで、脈拍消失や麻痺が出るのは末期であり、それを待って判断してはならない。放置すれば筋の阻血壊死からフォルクマン拘縮に至るため、疑った時点で施術と圧迫を中止し、患肢は心臓の高さに保って(挙上しすぎると灌流圧がさらに下がる)直ちに医師へ搬送する。柔道の練習では、皮膚に傷ができた時点で洗浄と被覆を行い、練習を中断して経過をみるよう平素から指導しておく。

✓ 1. 正しい(2つのうちの1つ)
蜂窩織炎
創部から細菌が皮下組織に入り込んで起こる感染症で、境界不明瞭な発赤・熱感・腫脹・圧痛と発熱を示す。血液付着=創の存在、3日という潜伏期間、38.5℃の発熱という経過がよく合致する。抗菌薬治療が必要なため医師へ紹介する。
✓ 4. 正しい(2つのうちの1つ)
急性コンパートメント症候群
反復する打撲による筋内出血と、感染に伴う炎症性腫脹が加わって下腿の区画内圧が上がった状態。安静時にも増す強い疼痛、緊満感、他動的伸張痛が手がかりで、疼痛の程度が外傷の見た目に釣り合わないときに疑う。時間との勝負であり、圧迫を外し患肢を心臓の高さに保って直ちに医師へつなぐ。
✗ 2. 誤り
シンスプリント
走行やジャンプの反復による使いすぎで、脛骨内側縁の中下1/3にびまん性の疼痛と圧痛が出るもの。発赤・熱感を伴わず、38.5℃の発熱も説明できない。単回の打撲を契機に3日で急変する経過も当てはまらない。
✗ 3. 誤り
脛骨悪性骨腫瘍
骨肉腫は10代の膝周囲に好発し、局所の腫脹・熱感や発熱を示すこともあるが、経過は数週から数か月かけて夜間痛と腫脹が進むのが通例である。明らかな外傷を契機に3日で急激に悪化した本例には合わない。ただし外傷をきっかけに発見される例もあるため、経過に合わない痛みが長引くときは画像評価を勧める。
ポイント
  • 創+発赤・熱感・腫脹+発熱=蜂窩織炎。抗菌薬が必要で医師へ紹介する。
  • 反復打撲後の強い腫脹=急性コンパートメント症候群。安静時痛・緊満感・他動的伸張痛が早期サイン。
  • 5P(疼痛・蒼白・脈拍消失・麻痺・感覚異常)のうち脈拍消失や麻痺は末期。それを待たずに判断する。
  • 患肢は心臓の高さに保つ(挙上しすぎない)、圧迫を外す、直ちに医師へ。
  • シンスプリントは発熱・発赤を伴わず、悪性骨腫瘍は数週〜数か月の経過をとる。
比較表
疾患経過発熱・発赤決め手
蜂窩織炎創から数日あり境界不明瞭な発赤・熱感・圧痛+発熱
急性コンパートメント症候群受傷後数時間〜数日局所の緊満・熱感安静時痛、他動的伸張痛、区画の緊満
シンスプリント数週の使いすぎなし脛骨内側縁中下1/3のびまん性圧痛
脛骨悪性骨腫瘍数週〜数か月ときにあり夜間痛、進行する腫脹、画像での骨破壊
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