学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §22 各論(軟部組織損傷) 上肢 / QJ30P096

理由で解く 柔道整復師

QJ30P096 柔道整復理論

出典:第30回柔道整復師国家試験(2022)午後 問96
問題
前腕コンパートメント症候群で正しいのはどれか。
選択肢
1 4つの区画に分かれる。
2 橈側伸筋群に好発する。
3 急性型は組織間液が減少する。
4 慢性型は筋膜の肥厚がみられる。
解答
正解4(慢性型は筋膜の肥厚がみられる。)
解説

慢性(労作性)コンパートメント症候群では、筋膜の肥厚と伸展性低下が内圧上昇の背景となります。正しいのは4です。

コンパートメント(筋区画)は、骨・骨間膜・筋間中隔・深筋膜で囲まれた伸び縮みしにくい閉鎖空間です。前腕は掌側(屈筋)区画・背側(伸筋)区画・外側(橈側)区画の3区画で構成されます(4区画は下腿)。急性型では骨折や打撲による出血・浮腫で組織間液が増加し、内圧が上昇して細動脈が圧迫され、筋・神経の虚血が進みます。前腕で放置するとフォルクマン拘縮という不可逆的な後遺障害に至るため、他動伸張時痛(罹患区画の筋を伸ばす方向へ他動的に動かしたときの疼痛。前腕の掌側区画なら手指・手関節の他動伸展)や安静時の強い持続痛を認めた時点で固定を緩め、直ちに医師へ引き継ぐ判断が求められます。一方、慢性型は運動時に筋容積が増えて内圧が上がるもので、繰り返す負荷で肥大した筋と、肥厚して伸びにくくなった筋膜のミスマッチが本態です。運動をやめれば症状が軽快するのが急性型との決定的な違いです。

✓ 4. 正しい
慢性型は筋膜の肥厚がみられる。
反復する運動負荷により筋は肥大する一方、筋膜は肥厚して伸展性が低下します。運動で筋容積が増したときに区画が容積の増加を吸収できず、内圧が上昇して疼痛・しびれが出現し、休息で軽快します。
✗ 1. 誤り
4つの区画に分かれる。
前腕は掌側(屈筋)・背側(伸筋)・外側(橈側)の3区画です。4区画に分かれるのは下腿(前方・外側・浅後方・深後方)で、混同しやすい定番の引っかけです。
✗ 2. 誤り
橈側伸筋群に好発する。
好発するのは掌側(屈筋)区画、なかでも深指屈筋・長母指屈筋といった深層屈筋です。この部位の虚血がフォルクマン拘縮の直接の原因になります。
✗ 3. 誤り
急性型は組織間液が減少する。
出血や浮腫によって組織間液は増加します。閉鎖空間で容積が増えるために内圧が上昇し、循環障害が起こるという因果関係を押さえてください。
ポイント
  • 前腕は3区画(掌側・背側・外側)、下腿は4区画。区画数の対比で問われやすい。
  • 急性型は出血・浮腫による組織間液の増加 → 内圧上昇 → 虚血。好発は掌側の深層屈筋。
  • 他動伸張時痛(passive stretch pain)は早期の重要徴候。伸ばす方向は罹患区画で決まり、前腕掌側(屈筋)区画では手指・手関節の他動伸展で誘発される。5P(疼痛・蒼白・知覚異常・麻痺・脈拍消失)が揃うのは進行例。
  • 疑ったら固定を緩めて患肢を心臓の高さに保ち、挙上や冷却に頼らず直ちに医師へ搬送する。放置するとフォルクマン拘縮に至る。
  • 慢性(労作性)型は筋肥大と筋膜肥厚が背景。運動時に増悪し休息で軽快する。負荷量の調整とフォーム改善が対応の基本。
比較表
項目急性型慢性(労作性)型
誘因骨折・打撲・過度な圧迫固定反復する運動負荷
内圧上昇の機序出血・浮腫による組織間液の増加運動時の筋容積増加+筋膜の肥厚・伸展性低下
経過急速に進行。安静で軽快しない運動中に増悪し、休息で軽快
対応緊急。固定除去と速やかな医師への搬送(筋膜切開)負荷調整・フォーム改善。難治例は筋膜切開
後遺障害フォルクマン拘縮通常は残らない
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