学習トップ理由で解く 柔道整復師整形外科学 ▸ §19 部位別各論 手関節 / QJ30P065

理由で解く 柔道整復師

QJ30P065 整形外科学

出典:第30回柔道整復師国家試験(2022)午後 問65
問題
手指伸筋腱皮下断裂の原因で誤っているのはどれか。
選択肢
1 手関節ガングリオン
2 変形性手関節症
3 関節リウマチ
4 コーレス(Colles)骨折
解答
正解1(手関節ガングリオン)
解説

手指伸筋腱の皮下断裂は、腱が骨の不整な面や骨棘に擦れ続けること、あるいは滑膜炎で腱の栄養・血行が障害されることで起こる。手関節ガングリオンは腱を摩耗させないため、1が原因として当てはまらず、これが答えとなる。

皮下断裂とは、開放創がないまま腱が切れる状態をいう。橈骨遠位端骨折(コーレス骨折)後は、リスター結節部で長母指伸筋腱が骨折部の不整な骨面に擦れ、加えてこの部位の腱の血行が乏しいことから、受傷の数週間から数か月後に断裂することがある。関節リウマチでは、手関節背側の滑膜炎と尺骨頭の背側突出(尺骨頭症候群)により、小指・環指側の伸筋腱から順に断裂する。変形性手関節症でも関節縁の骨棘が同じように腱を摩耗させる。一方ガングリオンは関節包や腱鞘から生じるゼリー状の内容をもつ嚢腫で、手関節背側に弾性硬の腫瘤として触れ、部位によっては神経を圧迫することはあるが、腱を摩耗させて断裂させる原因にはならない。明らかな外傷がないのに指が伸ばせなくなった場合は、腱断裂と後骨間神経麻痺の鑑別が必要なので、早期に医療機関へつなぐ。

✓ 1. 原因として当てはまらない(これが答え)
手関節ガングリオン
関節包や腱鞘から生じる粘液を含む嚢腫で、手関節背側に好発する。無痛性の腫瘤や軽い運動時痛が主症状で、周囲の神経を圧迫して症状を出すことはあっても、伸筋腱を摩耗・断裂させる機序をもたない。
✗ 2. 原因になる(設問の答えではない)
変形性手関節症
関節縁に形成された骨棘の上を伸筋腱が滑走し続けることで腱が摩耗し、皮下断裂に至る。骨の凹凸が「やすり」のように働くという点で、コーレス骨折後の断裂と同じ機序である。
✗ 3. 原因になる(設問の答えではない)
関節リウマチ
手関節背側の滑膜炎が腱を内側から侵し、さらに遠位橈尺関節の破綻で背側に突出した尺骨頭が腱を摩耗させる。小指側の伸筋腱から順に断裂していく形をとり、伸筋腱皮下断裂の代表的な原因である。
✗ 4. 原因になる(設問の答えではない)
コーレス(Colles)骨折
骨折部の骨性隆起やリスター結節での摩擦に加え、この部位の腱の血行が乏しいことから、受傷後しばらく経ってから長母指伸筋腱が皮下断裂する。母指の指節間関節を自分で伸ばせなくなることで気づかれる。
ポイント
  • 伸筋腱皮下断裂の三大要因は、骨の不整・骨棘による摩耗、滑膜炎、腱の血行障害。
  • コーレス骨折後はリスター結節部での長母指伸筋腱断裂。母指の指節間関節が自動伸展できなくなる。
  • 関節リウマチでは尺骨頭の背側突出と滑膜炎により、小指・環指側から順に伸展できなくなる。
  • ガングリオンは関節包・腱鞘由来の嚢腫で、腱断裂の原因にはならない。神経圧迫症状の有無を確認する。
  • 外傷がないのに指が伸びない場合は、腱断裂か後骨間神経麻痺かの鑑別が必要。早期に医師の診察へつなぐ。
比較表
原因おもな機序断裂しやすい腱・現れ方
コーレス骨折後骨折部の骨面やリスター結節での摩耗+腱の血行障害長母指伸筋腱。母指の指節間関節が伸ばせない
関節リウマチ手関節背側の滑膜炎+尺骨頭の背側突出小指・環指側の伸筋腱から順に。中手指節関節が伸ばせない
変形性手関節症関節縁の骨棘による摩耗手関節背側を通る伸筋腱
手関節ガングリオン関節包・腱鞘由来の嚢腫。腫瘤や神経圧迫は起こすが腱を摩耗させない腱断裂の原因にはならない
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