学習トップ理由で解く 柔道整復師外科学概論 ▸ §20 臨床実地問題 / QJ30P056

理由で解く 柔道整復師

QJ30P056 外科学概論

出典:第30回柔道整復師国家試験(2022)午後 問56
問題
28歳の男性。バイク走行中に転倒し右側腹部を打撲した。意識清明、自立歩行可能で救急車にて来院した。待っている間に、冷汗が生じ顔面が蒼白となった。下腿浮腫はみられない。収縮期血圧 60mmHg、脈拍 126/分であった。考えられるのはどれか。
選択肢
1 心原性ショック
2 アナフィラキシーショック
3 敗血症性ショック
4 出血性ショック
解答
正解4(出血性ショック)
解説

受傷直後は歩けていた若年男性が、時間をおいて冷汗・顔面蒼白・低血圧・頻脈をきたした経過は、腹腔内出血による出血性(循環血液量減少性)ショックとして考えるのが妥当である。

右側腹部の打撲では肝臓や右腎など実質臓器の損傷が起こりうる。これらの損傷は、いったん被膜下に血腫がとどまって症状に乏しい時期があり、後から被膜が破れて急速な出血に転じる「遅発性」の経過をとることがある。本例が来院時に意識清明・自立歩行可能でありながら待機中に急変したのは、この二相性の経過に合致する。循環血液量が減ると交感神経が代償的に働き、心拍数を上げ末梢血管を収縮させるため、頻脈と冷汗・顔面蒼白・四肢冷感という「冷たいショック」の所見がそろう。ショック指数(脈拍数÷収縮期血圧)は126÷60=約2.1で、これは循環血液量の大きな喪失を示唆する値である。対応としては、太い静脈路を2本確保して急速輸液・輸血を行いながら、FASTや造影CTで出血源を確認し、動脈塞栓術や開腹手術による止血につなげる。

✓ 4. これが答え
出血性ショック
右側腹部打撲による実質臓器損傷からの腹腔内出血が想定され、受傷後しばらくして急変する遅発性の経過とも合う。冷汗・顔面蒼白は末梢血管収縮、脈拍126/分は心拍数を上げる代償で、ショック指数約2.1が大量出血を示唆する。
✗ 1. 当てはまらない
心原性ショック
心筋梗塞・重症不整脈・心タンポナーデなどでポンプ機能が破綻して起こる。血液が心臓の手前で滞るため頸静脈怒張や下腿浮腫などのうっ血所見を伴うが、本例は下腿浮腫がなく、若年で心疾患を示す情報もない。
✗ 2. 当てはまらない
アナフィラキシーショック
薬剤・食物・蜂毒などの抗原に曝露して数分〜数十分で発症し、蕁麻疹・掻痒・喘鳴・喉頭浮腫を伴う。末梢血管が拡張するため皮膚はむしろ温かく紅潮する点でも、本例の冷汗・蒼白と合わない。
✗ 3. 当てはまらない
敗血症性ショック
感染巣があり発熱(または低体温)を伴って進行する病態で、初期は末梢血管拡張により四肢が温かい。受傷から短時間で発症する経過ではなく、本例に感染を示す情報もない。
ポイント
  • 外傷後に冷汗・顔面蒼白・頻脈・低血圧がそろえば、まず出血性(循環血液量減少性)ショックを考える。
  • ショック指数=脈拍数÷収縮期血圧。本例は126÷60=約2.1で、大量出血を示唆する。
  • 実質臓器損傷は被膜下血腫がのちに破れる遅発性の経過をとることがあり、受傷直後に歩けていても油断できない。
  • 末梢が冷たいショック(出血性・心原性)と温かいショック(アナフィラキシー・敗血症性の初期)で大きく二分すると鑑別しやすい。
  • 対応は太い静脈路の確保と急速輸液・輸血、FAST/造影CTでの出血源検索、TAEや開腹手術による止血。現場では直ちに救急要請し、保温と体位管理を行いながら搬送につなぐ。
比較表
ショックの型機序末梢の皮膚手がかりとなる所見
循環血液量減少性(出血性)血液・体液の喪失冷たい・蒼白・湿潤外傷歴、頻脈、ショック指数の上昇
心原性ポンプ機能の破綻冷たい頸静脈怒張、下腿浮腫、肺うっ血、心疾患の既往
心外閉塞・拘束性心臓への流入・流出の閉塞冷たい緊張性気胸、心タンポナーデ、肺塞栓
血液分布異常性(アナフィラキシー)血管拡張・透過性亢進温かい・紅潮抗原曝露、蕁麻疹、喘鳴、喉頭浮腫
血液分布異常性(敗血症性)血管拡張初期は温かい感染巣、発熱または低体温
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