学習トップ理由で解く 柔道整復師外科学概論 ▸ §20 臨床実地問題 / QJ29P056

理由で解く 柔道整復師

QJ29P056 外科学概論

出典:第29回柔道整復師国家試験(2021)午後 問56
問題
23歳の男性。バイクを運転中に転倒し、救急車にて搬入された。CT 検査で後腹膜腔に多量の血腫を認めた。損傷を受けている臓器はどれか。
選択肢
1 小腸
2 肝臓
3 膵臓
4 脾臓
解答
正解3(膵臓)
解説

後腹膜腔に血腫ができたということは、出血源が後腹膜にある臓器だという意味です。本問で問われる小腸(空腸・回腸)・肝臓・脾臓はいずれも腹膜内臓器であり、後腹膜臓器は膵臓です。バイク転倒という受傷機転もこれに合致します。

腹部の臓器は、腹膜に包まれて腹腔内にある腹膜内臓器(肝臓・脾臓・胃・空腸・回腸・横行結腸など)と、腹膜の背側にある後腹膜臓器(膵臓・十二指腸の大部分・腎臓・尿管・副腎・上行結腸・下行結腸・腹部大動脈・下大静脈など)に分かれます。出血した臓器がどちらに属するかで血液のたまる場所が変わるため、CTで後腹膜血腫を認めたという情報は、そのまま損傷臓器の候補を絞る手がかりになります。膵臓は第1〜2腰椎の前を横に走り、椎体という硬い土台の上に乗っているため、ハンドルバーなどによる上腹部の強い前後方向の外力で椎体との間に挟まれて損傷します。バイク転倒は典型的な受傷機転です。さらに膵臓は後腹膜にあるため腹膜刺激症状が出にくく、発見が遅れやすいという特徴もあります。血清・尿中アミラーゼの上昇や造影CTで評価し、主膵管が損傷しているかどうかが治療方針を決める要点になります。

✓ 3. 正しい
膵臓
膵臓は後腹膜臓器なので、損傷すると出血は後腹膜腔にたまります。椎体の前に固定されているため上腹部への鈍的外力で挟み込まれて損傷しやすく、バイク運転中の転倒という機転にも合致します。後腹膜にあるぶん腹膜刺激症状が乏しく、受傷直後は症状が軽く見えることがあるため、アミラーゼの推移と造影CTでの再評価が重要です。膵液の漏出は周囲組織を消化するため、主膵管損傷の有無を確認します。
✗ 1. 該当しない
小腸
空腸・回腸は腸間膜をもつ腹膜内臓器で、腹腔内で可動性があります。損傷すれば腸内容が腹腔内に漏れて腹膜炎を起こし、出血も腹腔内にたまるため、後腹膜血腫という所見にはなりません。腹部全体の圧痛・筋性防御といった腹膜刺激症状や、遊離ガス(フリーエア)の有無が診断の手がかりになります。なお解剖学的には、小腸は十二指腸・空腸・回腸からなり、このうち十二指腸は大部分が後腹膜臓器で、損傷すれば実際に後腹膜血腫を来しうる点は押さえておきましょう。ただし外傷の文脈で単に「小腸」といえば、腸間膜をもち可動性のある空腸・回腸を指すのが通例です。本問では選択肢3に膵臓が挙がっており、上腹部への鈍的外力という受傷機転ともあわせて、後腹膜血腫の出血源としては膵臓を選びます。
✗ 2. 該当しない
肝臓
肝臓は右上腹部にある腹膜内臓器で、損傷時の出血は腹腔内にたまります。実質臓器で血流が豊富なため大量出血を来しやすく、腹腔内出血による出血性ショックが問題になりますが、血腫が後腹膜に限局することは典型的ではありません。腹腔内出血の有無を素早く見るには、超音波検査(FAST)が用いられます。
✗ 4. 該当しない
脾臓
脾臓は左上腹部にある腹膜内臓器で、腹部外傷で最も損傷されやすい実質臓器のひとつですが、出血は腹腔内にたまります。左季肋部の打撲や左下位肋骨骨折に伴って損傷し、左肩への放散痛(ケール徴候)を示すことがあります。この症例のように出血が後腹膜腔に限られている場合は、脾損傷は考えにくくなります。
ポイント
  • 後腹膜血腫を見たら、出血源は後腹膜臓器と考える。膵臓・十二指腸大部分・腎臓・尿管・副腎・上行結腸・下行結腸・腹部大動脈・下大静脈。
  • 腹膜内臓器(肝臓・脾臓・胃・空腸・回腸・横行結腸など)の損傷では、出血は腹腔内にたまる。
  • 「小腸」は解剖学上は十二指腸・空腸・回腸を指し、このうち十二指腸だけは大部分が後腹膜臓器。ただし外傷の文脈で単に「小腸」といえば腸間膜をもつ空腸・回腸を指すのが通例。
  • 膵臓は第1〜2腰椎の前で椎体に押しつけられて損傷する。ハンドルバー外傷・シートベルト外傷が典型的な機転。
  • 膵損傷は後腹膜にあるため腹膜刺激症状が乏しく、発見が遅れやすい。血清・尿中アミラーゼと造影CTで評価する。
  • 治療方針は主膵管損傷の有無で分かれる。膵液漏出は周囲組織を消化するため経過観察を怠らない。
比較表
臓器腹膜との位置関係出血のたまる場所損傷時の主な所見
膵臓後腹膜臓器後腹膜腔腹膜刺激症状が乏しい、アミラーゼ上昇、上腹部・背部痛
小腸(空腸・回腸)腹膜内臓器(腸間膜あり)腹腔内腸内容漏出による腹膜炎、遊離ガス
十二指腸(参考)後腹膜臓器(大部分)後腹膜腔後腹膜血腫、症状が乏しく診断が遅れやすい
肝臓腹膜内臓器腹腔内右上腹部痛、大量の腹腔内出血、出血性ショック
脾臓腹膜内臓器腹腔内左季肋部痛、左肩への放散痛、左下位肋骨骨折の合併
腎臓(参考)後腹膜臓器後腹膜腔側腹部痛、血尿、側腹部の腫脹
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