学習トップ理由で解く 柔道整復師外科学概論 ▸ §18 胸部外傷(救急法) / QJ29P055

理由で解く 柔道整復師

QJ29P055 外科学概論

出典:第29回柔道整復師国家試験(2021)午後 問55
問題
胸腔ドレナージを直ちに必要とするのはどれか。
選択肢
1 膿胸
2 縦隔気腫
3 肋骨骨折
4 緊張性気胸
解答
正解4(緊張性気胸)
解説

胸腔ドレナージを「直ちに」必要とするのは緊張性気胸です。胸腔内にたまり続ける空気が心臓への静脈還流を妨げ、放置すれば短時間で閉塞性ショックから心停止に至るためです。

緊張性気胸では、胸膜の損傷部が一方弁のようにはたらき、吸気のたびに胸腔へ空気が入って呼気で出ていかないため、胸腔内圧が陽圧のまま上昇し続けます。患側の肺が虚脱するだけでなく、縦隔が健側へ押しやられ、上・下大静脈が圧迫・屈曲して心臓に戻る血液が減り、心拍出量が急激に低下します。したがってこの病態は「呼吸の問題」であると同時に「循環の問題」であり、時間との勝負になります。診断は画像を待たず、患側の呼吸音減弱・打診での鼓音・頸静脈怒張・気管の健側偏位・皮下気腫・血圧低下といった身体所見で行い、まず太い針で胸腔を穿刺して脱気し(緊急脱気)、続いて胸腔ドレーンを留置して持続的に空気を抜きます。ほかの選択肢の疾患も胸腔ドレナージを行うことはありますが、「今この場で行わなければ命に関わる」緊急度をもつのは緊張性気胸です。

✓ 4. 正しい
緊張性気胸
一方弁機構により胸腔内圧が上がり続け、縦隔偏位と静脈還流の低下から閉塞性ショックに陥ります。数分から数十分で致死的になりうるため、画像診断を待たずに緊急脱気を行い、その後に胸腔ドレーンを留置して持続吸引します。柔道整復の現場で強い呼吸困難と頸静脈怒張、気管偏位を認めたら、体位を安楽に保ちつつ直ちに救急要請し、所見を具体的に伝えます。
✗ 1. 該当しない(ドレナージは行うが「直ちに」ではない)
膿胸
膿胸は胸腔内に膿がたまった状態で、確かに胸腔ドレナージが治療の柱になります。ただし進行は緊張性気胸ほど急激ではなく、抗菌薬投与と並行して、画像で貯留部位を確認したうえで計画的にドレーンを留置します。線維素で隔壁ができた症例では胸腔鏡下の掻爬や、慢性期には剥皮術が必要になることもあります。「ドレナージが必要な疾患」ではありますが、「分単位で直ちに」という緊急度の点で緊張性気胸とは異なります。
✗ 2. 該当しない
縦隔気腫
縦隔気腫は空気が縦隔内にたまった状態で、胸腔ではないためドレナージの対象になりません。多くは安静と経過観察で自然に吸収されます。むしろ大切なのは原因の検索で、気管・気管支損傷や食道穿孔といった重篤な背景がないかを確認します。気胸を合併している場合は、その気胸に対して胸腔ドレナージを行うことになります。
✗ 3. 該当しない
肋骨骨折
単独の肋骨骨折は、鎮痛と呼吸のしやすさを確保する保存療法が基本で、それ自体はドレナージの適応ではありません。痛みで呼吸が浅くなると無気肺や肺炎を招くため、十分な鎮痛と深呼吸・排痰の指導が要点になります。骨折端が肺や血管を傷つけて気胸・血胸を合併した場合に、初めて胸腔ドレナージが必要になります。多発肋骨骨折によるフレイルチェストでは呼吸管理も検討します。
ポイント
  • 緊張性気胸=一方弁機構で胸腔内圧が上昇し続ける状態。縦隔偏位→静脈還流低下→閉塞性ショック。分単位で致死的。
  • 診断は身体所見で行い、画像を待たない。患側呼吸音減弱、打診で鼓音、頸静脈怒張、気管の健側偏位、皮下気腫、血圧低下。
  • 処置の順序は「まず穿刺による緊急脱気 → 続いて胸腔ドレーン留置」。
  • 膿胸はドレナージ適応だが計画的に行う疾患。縦隔気腫は胸腔でないため対象外、原因(気管・食道損傷)の検索が要点。
  • 単独肋骨骨折は鎮痛が主体。気胸・血胸の合併があって初めてドレナージ。
比較表
病態たまるもの/部位胸腔ドレナージ緊急度まず行うこと
緊張性気胸空気/胸腔(陽圧が持続)必要最緊急(分単位)身体所見で判断し緊急脱気、続いてドレーン留置
膿胸膿/胸腔必要準緊急〜計画的抗菌薬+画像確認のうえドレーン留置
縦隔気腫空気/縦隔適応外原因次第安静・経過観察と、気管・食道損傷の検索
肋骨骨折(単独)不要低い鎮痛と呼吸・排痰の指導、合併症の監視
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