学習トップ理由で解く 柔道整復師一般臨床医学 ▸ §3 診察各論 視診 / QJ30P026

理由で解く 柔道整復師

QJ30P026 一般臨床医学

出典:第30回柔道整復師国家試験(2022)午後 問26
問題
腹壁静脈の怒張をきたす疾患はどれか。
選択肢
1 肝硬変
2 胆嚢炎
3 虫垂炎
4 膀胱炎
解答
正解1(肝硬変)
解説

腹壁の皮静脈が浮き出て怒張する所見は、門脈圧亢進のサインです。選択肢のなかで門脈圧亢進をきたすのは肝硬変だけです。

腸管や脾臓からの静脈血は門脈を通って肝臓へ流れ込みます。肝硬変では線維化と再生結節によって肝内の血管抵抗が上がり、門脈の圧が高くなります。行き場を失った血液は圧の低い体循環側へ逃げ道(側副血行路)を作り、臍傍静脈から腹壁の皮静脈へ流れ込むと、臍を中心に放射状の太い静脈が浮き出ます。同じしくみで食道・胃静脈瘤(破れると吐血)や直腸静脈瘤も生じます。肝硬変ではこのほか、腹水、黄疸、クモ状血管腫、手掌紅斑、女性化乳房、羽ばたき振戦(肝性脳症)といった所見が組み合わさります。腹部の炎症性疾患や膀胱の感染症では門脈圧は上がらないため、腹壁静脈の怒張は起こりません。

✓ 1. 正しい
肝硬変
肝内の血流抵抗上昇で門脈圧が亢進し、臍傍静脈を介する側副血行路が発達して腹壁静脈が怒張します。臍を中心に放射状に広がる形から「メドゥーサの頭」とよばれます。
✗ 2. 誤り
胆嚢炎
胆石などによる胆嚢の炎症で、右季肋部痛、発熱、マーフィー徴候が特徴です。門脈圧は上がらないため腹壁静脈の怒張はきたしません。
✗ 3. 誤り
虫垂炎
心窩部痛から右下腹部痛へ移動し、マックバーネー点の圧痛やブルンベルグ徴候(反跳痛)を示します。局所の炎症であり、腹壁静脈の怒張とは無関係です。
✗ 4. 誤り
膀胱炎
頻尿・排尿痛・残尿感が三徴で、恥骨上部の不快感を伴います。下部尿路の感染症であり、門脈系とは関係しません。
ポイント
  • 腹壁静脈怒張(メドゥーサの頭)=門脈圧亢進のサイン。代表疾患は肝硬変。
  • 門脈圧亢進の三大側副路:食道・胃静脈瘤、腹壁皮静脈、直腸静脈瘤。食道静脈瘤破裂は吐血・下血で緊急。
  • 肝硬変の身体所見セット:腹水、黄疸、クモ状血管腫、手掌紅斑、女性化乳房、羽ばたき振戦。
  • 腹部の視診は、腹壁静脈の怒張・膨隆・手術瘢痕・皮膚線条を順に見る習慣をつける。
  • 腹壁静脈の怒張に気づいたら、腹部への手技は控え、内科での評価につなげる。
比較表
疾患主な腹部所見腹壁静脈怒張
肝硬変腹水、肝腫大または萎縮、黄疸あり(門脈圧亢進)
胆嚢炎右季肋部痛、マーフィー徴候、発熱なし
虫垂炎右下腹部痛、マックバーネー点圧痛、反跳痛なし
膀胱炎頻尿・排尿痛・残尿感、恥骨上部不快感なし
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