学習トップ理由で解く 柔道整復師リハビリテーション医学 ▸ §4 リハビリテーション医学の評価と診断 / QJ30P014

理由で解く 柔道整復師

QJ30P014 リハビリテーション医学

出典:第30回柔道整復師国家試験(2022)午後 問14
問題
神経伝導検査の所見でないのはどれか。
選択肢
1 陽性鋭波
2 潜時遅延
3 伝導ブロック
4 持続時間の延長
解答
正解1(陽性鋭波)
解説

神経伝導検査は末梢神経を電気で刺激し、そこから誘発された波形の「潜時・振幅・伝導速度・持続時間」を測る検査である。選択肢のうち陽性鋭波だけは針筋電図で記録される安静時の異常自発電位であり、神経伝導検査の所見ではない。

神経伝導検査(NCS)では、運動神経なら支配筋から複合筋活動電位(CMAP)を、感覚神経なら感覚神経活動電位(SNAP)を導出する。読み取るのは「刺激してから波が立つまでの時間(潜時)」「波の高さ(振幅)」「2点間の距離÷潜時差(伝導速度)」「波の横幅(持続時間)」という誘発波形のパラメータである。髄鞘が傷む脱髄型では伝導が遅く・不揃いになるため潜時遅延、伝導速度低下、伝導ブロック、時間的分散による持続時間の延長が現れる。軸索が減る軸索変性型では、届く線維の数そのものが減るので振幅低下が主体となる。一方、針筋電図は筋に針電極を刺して筋線維自身の電気活動を捉える検査で、脱神経が起こるとおよそ2〜3週後から安静時に陽性鋭波や線維自発電位が出現する。「電気で刺激して神経を測る=NCS」「針を刺して筋を測る=針筋電図」と道具立てで切り分けると、所見の帰属で迷わなくなる。

✓ 1. これが答え(神経伝導検査の所見ではない)
陽性鋭波
陽性鋭波は、脱神経に陥った筋を安静にしたときに針筋電図で記録される異常自発電位である。名のとおり初めに陽性方向へ鋭く振れ、その後ゆっくり基線へ戻る波形をとる。神経伝導検査はあくまで外から与えた電気刺激に対する誘発波を見る検査なので、刺激と無関係に筋が勝手に出す自発電位は記録対象にならない。したがって本問の条件(神経伝導検査の所見でないもの)に当てはまる。
✗ 2. 神経伝導検査の所見(答えではない)
潜時遅延
刺激してから筋の反応が立ち上がるまでの時間が延びる所見で、遠位潜時の延長として表される。髄鞘が障害されて跳躍伝導が乱れると伝導に時間がかかるために生じ、手根管症候群での正中神経遠位潜時延長が代表例である。NCSで直接測定する基本パラメータそのものなので、除外肢にはならない。
✗ 3. 神経伝導検査の所見(答えではない)
伝導ブロック
障害部より遠位で刺激すると十分な大きさのCMAPが得られるのに、障害部より近位で刺激すると振幅・面積が著明に低下する現象をいう。局所の脱髄で興奮がその区間を越えられないために起こり、2点以上を刺激して比べるNCSでなければ捉えられない所見である。よって除外肢にはならない。
✗ 4. 神経伝導検査の所見(答えではない)
持続時間の延長
神経束の中には伝導速度の異なる線維が混在しており、脱髄でそのばらつきが大きくなると各線維の到達時刻がずれる(時間的分散)。その結果、合成された誘発波形が横に間延びして持続時間が延長する。これもNCSの波形から読み取る所見であり、除外肢にはならない。
ポイント
  • 所見の帰属は道具立てで切る。神経伝導検査=電気刺激による誘発波(CMAP/SNAP)、針筋電図=針電極で拾う筋線維の自発電位・随意収縮時の運動単位電位。
  • 神経伝導検査で測る4つの柱は、潜時・振幅・伝導速度・持続時間。
  • 脱髄型は潜時遅延/伝導速度低下/伝導ブロック/時間的分散(持続時間延長)、軸索変性型は振幅低下が主体、と対にして覚える。
  • 陽性鋭波・線維自発電位は脱神経後およそ2〜3週で安静時に出現する針筋電図所見。発症直後には出ないため、検査時期の判断にも使われる。
  • 障害部位(どこか)と病態(脱髄か軸索か)を決めるには、神経伝導検査と針筋電図を組み合わせて評価する。
比較表
項目神経伝導検査(NCS)針筋電図(needle EMG)
方法皮膚上から末梢神経を電気刺激し、誘発波を記録筋に針電極を刺入し、筋線維の電気活動を記録
記録される波複合筋活動電位(CMAP)、感覚神経活動電位(SNAP)安静時の自発電位、随意収縮時の運動単位電位
主な指標潜時、振幅、伝導速度、持続時間、伝導ブロック陽性鋭波、線維自発電位、運動単位電位の振幅・持続時間、干渉波形
脱髄でみられる所見潜時遅延、伝導速度低下、伝導ブロック、時間的分散著明な脱神経電位は乏しい
軸索障害でみられる所見CMAP/SNAP振幅の低下脱神経後2〜3週で陽性鋭波・線維自発電位が出現
わかること障害の部位(区間)と伝導の性状脱神経の有無・程度、神経原性か筋原性かの鑑別
この問題の解説の修正を依頼する

解説に誤り・改善点があればお知らせください。件名と本文は自動入力済みです(編集できます)。お名前・メールアドレスは任意です。送信内容は玄康株式会社(黒澤一弘)に届きます。