学習トップ理由で解く 柔道整復師運動学 ▸ §6 歩行 / QJ30A114

理由で解く 柔道整復師

QJ30A114 運動学

出典:第30回柔道整復師国家試験(2022)午前 問114
問題
パーキンソン(Parkinson)病でみられるのはどれか。
選択肢
1 すくみ足
2 酪酊歩行
3 片麻痺歩行
4 間欠性跛行
解答
正解1(すくみ足)
解説

すくみ足はパーキンソン病の代表的な歩行障害で、1が正しい選択肢です。他の3つは小脳、錐体路、脊柱管・末梢動脈といった別の部位の障害を示す歩行です。

パーキンソン病では中脳黒質緻密部のドパミン神経細胞が変性・脱落し、線条体へ届くドパミンが減少します。その結果、大脳基底核ループが運動の開始・切り替えをうまく促せなくなり、安静時振戦・筋強剛(固縮)・無動/寡動・姿勢反射障害の四徴が現れます。歩行に表れるのが、一歩目が踏み出せない、あるいは歩行途中で足が止まってしまうすくみ足で、歩き出し・方向転換・狭い場所の通過・目的地の直前などで起こりやすいのが特徴です。加えて、歩幅が狭い小刻み歩行、前傾前屈姿勢のまま重心が前方へ移動して止まれない加速歩行・突進現象、腕振りの減少もみられます。すくみ足には、床にテープで線を引く、号令やメトロノームで拍子をとるといった視覚・聴覚のきっかけ(キュー)が有効です。これは外部からの合図が、働きの落ちた大脳基底核を経由する内的な運動開始の回路を迂回し、別の経路(前頭前野〜運動前野・小脳系)で一歩目を引き出すためと説明されます。動作指導では「止まってしまったらその場で足踏みしてから線をまたぐ」など、次の一歩を引き出す手順を具体的に伝え、転倒予防につなげます。

✓ 1. 正しい
すくみ足
足が床に張りついたように出なくなる現象で、大脳基底核による運動の開始・切り替えの障害を反映します。歩き出しと方向転換で目立ち、進行例では転倒の主要因になります。麻痺や筋力低下によるものではなく(筋力が保たれている点が片麻痺歩行との鑑別点です)、運動を開始する内的なきっかけ(基底核からの出力)が働かない状態です。そのため床の線や号令といった外部からのきっかけを与えると、基底核を経由しない別の経路が働いて一歩目が出ることがあります。
✗ 2. 誤り
酩酊歩行
酩酊歩行(失調性歩行)は小脳性運動失調でみられる歩行です。両足を大きく開いた開脚歩行となり、体幹が左右に動揺して酒に酔ったように蛇行するため、この名があります。開眼していても動揺が軽くならないのが特徴で、閉眼で著明に悪化する脊髄後索障害の感覚性失調とはこの点で区別します。小脳障害では測定障害・反復拮抗運動不能・企図振戦も伴います。パーキンソン病の歩行は歩隔がむしろ狭い小刻み歩行で、足を開いて支持基底面を広げる小脳性の像とは逆になります。
✗ 3. 誤り
片麻痺歩行
脳血管障害などで錐体路が障害された痙性片麻痺の歩行です。麻痺側下肢が伸展位で固まり、つま先を引っかけないよう外側へ回して振り出すぶん回し歩行となり、上肢屈曲・下肢伸展のWernicke-Mann肢位を伴います。パーキンソン病は左右差をもって発症することはありますが、麻痺による歩行様式ではありません。
✗ 4. 誤り
間欠性跛行
一定距離を歩くと下肢の痛みやしびれで歩けなくなり、休息すると再び歩けるようになる症状です。腰部脊柱管狭窄症(前屈や座位で軽快し、自転車は乗れる)と、閉塞性動脈硬化症などの末梢動脈疾患(休むだけで軽快し、足背動脈拍動が減弱)が代表で、いずれも歩行距離に依存する点がパーキンソン病のすくみ足と異なります。
ポイント
  • パーキンソン病は中脳黒質のドパミン神経変性。四徴は安静時振戦・筋強剛(固縮)・無動/寡動・姿勢反射障害。
  • 歩行の特徴はすくみ足、小刻み歩行、加速歩行・突進現象、前傾前屈姿勢、腕振りの減少。
  • すくみ足は麻痺や筋力低下ではなく、運動開始の内的なきっかけ(基底核出力)の障害。歩き出し・方向転換・狭所通過で出やすい。
  • 床の目印や号令などの外的キューが有効なのは、障害された基底核経由の回路を迂回して別経路で一歩目を引き出せるため。
  • 歩行の型から病巣を逆算する。開脚・動揺→小脳、ぶん回し→錐体路、歩行距離依存→脊柱管狭窄・末梢動脈疾患。
  • 転倒リスクが高いので、方向転換は大きく回る、床の障害物を減らすなど環境調整と動作手順の指導を組み合わせる。
比較表
歩行の型みえかた主な病態・障害部位
すくみ足・小刻み歩行一歩目が出ない、歩幅が狭い、前傾で加速し止まれないパーキンソン病(大脳基底核・黒質ドパミン系)
酩酊歩行(失調性歩行)開脚し体幹が動揺、方向が定まらない小脳性運動失調(小脳・小脳路)
片麻痺歩行(ぶん回し歩行)麻痺側下肢を外側へ回して振り出す、Wernicke-Mann肢位脳血管障害後の痙性片麻痺(錐体路)
間欠性跛行一定距離歩くと下肢痛・しびれ、休むと再び歩ける腰部脊柱管狭窄症、閉塞性動脈硬化症
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