学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §17 各論(骨折) 下肢 / QJ29P088

理由で解く 柔道整復師

QJ29P088 柔道整復理論

出典:第29回柔道整復師国家試験(2021)午後 問88
問題
下腿骨骨幹部骨折の後遺症と原因の組合せで誤っているのはどれか。
選択肢
1 偽関節-無理な運動療法
2 変形治癒-早期の荷重開始
3 膝関節拘縮・PTB キャストの使用
4 足関節尖足位拘縮・下腿コンパートメント症候群
解答
正解3(膝関節拘縮・PTB キャストの使用)
解説

下腿骨骨幹部骨折の後遺症は「血行の乏しさ」と「固定・荷重の管理」で説明できる。PTBキャストは膝の屈伸を残して早期荷重を可能にする装具であり、膝関節拘縮を作る原因としてはむしろ逆で、これが答え。

下腿は前内側面が皮下直下にあって軟部組織に乏しく、栄養血管の分布も中下1/3境界付近で乏しくなる。そのため骨癒合が遅れやすく、癒合が完成する前に軸圧や剪断力・回旋力が加わると偽関節や変形治癒に傾く。一方で長期の下腿ギプス固定は膝と足関節を同時に不動化して拘縮と廃用を招くため、体重を膝蓋腱と脛骨顆部で受けて足関節以下だけを制動するPTB(patellar tendon bearing)キャストが用いられる。PTBキャストは膝の屈伸を妨げない設計なので、膝関節拘縮の「原因」ではなく「対策」の側にある。

✓ 3. これが答え(成り立たない組合せ)
膝関節拘縮・PTB キャストの使用
PTBキャストは膝蓋腱と脛骨顆部で荷重を受け、膝関節の屈伸を許したまま骨折部の軸圧を減らす。骨癒合期の早期荷重・早期歩行を可能にして膝拘縮や大腿四頭筋の萎縮を防ぐ目的で使うものなので、拘縮の原因として結び付けるのは筋が通らない。膝の拘縮を避けたい場面では、長下肢ギプスからPTBキャストへの移行と大腿四頭筋の等尺性収縮訓練を早期から並行させるとよい。
✗ 1. 答えではない(成り立つ組合せ)
偽関節-無理な運動療法
骨癒合には骨折端の適度な圧迫と安定が要る。仮骨形成期に過度な運動や捻り・剪断が繰り返し加わると、できかけの仮骨が壊れては作り直されることになり、やがて骨折端が硬化して偽関節に至る。下腿骨幹部はもともと血行に乏しく偽関節の好発部位でもあるため、可動域も荷重も段階を踏んで上げていく。
✗ 2. 答えではない(成り立つ組合せ)
変形治癒-早期の荷重開始
仮骨が力学的な強度を得る前に体重をかけると、骨折部が屈曲・短縮したまま固まり、内反や前弯(反張)などの変形を残して癒合する。荷重は仮骨形成の程度を確認しながら、部分荷重から全荷重へ進めるのが原則。
✗ 4. 答えではない(成り立つ組合せ)
足関節尖足位拘縮・下腿コンパートメント症候群
区画内圧の上昇で筋が阻血に陥ると、生き残った筋線維が瘢痕化して短縮する(阻血性拘縮)。下腿後方区画(下腿三頭筋・後脛骨筋・長趾屈筋など)が侵されると足関節は底屈位で固まり、尖足位拘縮となる。強い腫脹・安静時痛・他動伸張時痛が続くときは区画の緊満を確認し、速やかに医師へつなぐ。
ポイント
  • 下腿骨幹部、とくに中下1/3境界部は血行に乏しく、遷延治癒・偽関節の好発部位。
  • 偽関節の敵は「動かしすぎ」、変形治癒の敵は「早すぎる荷重」。どちらも安定と時間の不足で説明がつく。
  • PTBキャストは膝蓋腱で荷重を受け、膝の屈伸を残す。拘縮を作る道具ではなく、拘縮と廃用を防ぐ道具。
  • コンパートメント症候群 → 後方区画の阻血性拘縮 → 足関節尖足位拘縮、という流れで覚える。
  • 腫脹・他動伸張時痛が強いときは自己判断で経過をみず、早期に医療機関へつなぐ。
比較表
後遺症主な原因対応のポイント
偽関節・遷延治癒固定不良、過度な運動療法、もともとの血行不良癒合期は安定を優先し、運動は段階的に
変形治癒(内反・反張など)早すぎる全荷重、整復位の保持不良仮骨形成を確認しながら部分荷重から
足関節尖足位拘縮コンパートメント症候群後の阻血性拘縮、底屈位での長期固定固定は足関節90度、腫脹・伸張時痛は要注意
膝関節拘縮長下肢ギプスによる長期不動PTBキャストへの移行と四頭筋訓練で予防する
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