学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §16 各論(骨折) 上肢 / QJ29P082

理由で解く 柔道整復師

QJ29P082 柔道整復理論

出典:第29回柔道整復師国家試験(2021)午後 問82
問題
合併症による神経障害で図の運動が不能となるのはどれか。
図
選択肢
1 上腕骨内側上顆骨折
2 モンテギア (Monteggia)骨折
3 烏口下脱臼
4 月状骨脱臼
解答
正解2(モンテギア (Monteggia)骨折)
解説

モンテギア(Monteggia)骨折は尺骨骨幹部骨折に橈骨頭脱臼を合併したもので、前方へ脱臼した橈骨頭が橈骨神経深枝(後骨間神経)を圧迫する。その結果、手指MP関節の伸展と母指の伸展・外転が不能となり、下垂指(drop finger)を呈する。

本問は、図に描かれた「不能となっている運動」がどの神経の障害によるものかを読み取り、その神経を傷めやすい外傷を選ぶ問題である。ここでは図そのものを再現できないが、正答が2であることから、図は後骨間神経麻痺で不能となる運動、すなわち手指MP関節の伸展(下垂指)を示していると考えられる。以下はその前提で読み進めてほしい。4つの選択肢はそれぞれ別の神経に対応しており(1=尺骨神経、2=橈骨神経深枝、3=腋窩神経、4=正中神経)、もし図が肩の外転不能を示していれば答えは烏口下脱臼、母指の対立不能を示していれば月状骨脱臼になる。つまり「図がどの運動を示しているか」を決めないかぎり答えは絞れず、そこが本問の要点である。解剖を確認すると、橈骨神経は肘の外側で浅枝(知覚)と深枝(運動)に分かれ、深枝は回外筋の入口(フローゼのアーケード)を通って前腕背側の伸筋群を支配する。橈骨頭が脱臼するとこの部位で深枝が牽引・圧迫され、後骨間神経麻痺を生じる。長・短橈側手根伸筋は分岐前の枝で支配されるため手関節の背屈は残りやすい一方、総指伸筋や長母指伸筋などが麻痺して手指MP関節の伸展、母指の伸展・外転が不能となる。深枝は運動枝であるため知覚障害は原則として伴わない。尺骨骨幹部骨折を見たら必ず肘関節を含めて橈骨頭の位置と手指の伸展を確認する、という手順につながる知識である。

✓ 2. 該当する(設問の答え)
モンテギア (Monteggia)骨折
モンテギア骨折は尺骨骨幹部骨折に橈骨頭脱臼を合併したもので、脱臼した橈骨頭が橈骨神経深枝(後骨間神経)を圧迫する。その結果、総指伸筋や長母指伸筋が麻痺し、手指MP関節の伸展や母指の伸展・外転が不能となる(下垂指)。図が示しているのがこの手指伸展の障害であれば、それを起こすのは選択肢のうちこれだけであり、これが答えとなる。
✗ 1. 該当しない
上腕骨内側上顆骨折
合併しやすいのは尺骨神経麻痺である。内側上顆後面の尺骨神経溝を走るため損傷を受けやすく、骨間筋の麻痺で指の内転・外転が不能となり、環指・小指の鷲手変形やフローマン徴候がみられる。後骨間神経麻痺による手指伸展の障害とは症状が異なる。
✗ 3. 該当しない
烏口下脱臼
肩関節前方脱臼の代表型で、合併しやすいのは腋窩神経麻痺である。三角筋が麻痺して肩関節の外転が不能となり、肩外側の知覚障害を伴う。障害されるのは肩の運動であり、前腕・手指の伸展障害とは異なる。
✗ 4. 該当しない
月状骨脱臼
掌側へ転位した月状骨が手根管内で正中神経を圧迫し、正中神経麻痺を生じる。母指球筋の麻痺で母指の対立が困難となる猿手を呈し、橈側3本半の掌側に知覚障害を伴う。障害されるのは母指の対立であり、伸展運動の障害ではない。
ポイント
  • モンテギア骨折=尺骨骨幹部骨折+橈骨頭脱臼。合併症は橈骨神経深枝(後骨間神経)麻痺。
  • 後骨間神経麻痺=手指MP関節の伸展・母指の伸展外転が不能(下垂指)。手関節背屈は残りやすく、知覚障害は伴わない。
  • 上腕骨内側上顆骨折=尺骨神経麻痺(鷲手・指の内外転不能・フローマン徴候)。
  • 烏口下脱臼=腋窩神経麻痺(肩外転不能・肩外側の知覚障害)。
  • 月状骨脱臼=正中神経麻痺(猿手・母指対立不能・橈側3指半の知覚障害)。
  • この型の設問は「図の運動 → 障害されている神経 → その神経を傷める外傷」の順にたどる。
比較表
外傷合併しやすい神経障害不能となる主な運動
モンテギア骨折橈骨神経深枝(後骨間神経)手指MP関節の伸展、母指の伸展・外転
上腕骨内側上顆骨折尺骨神経指の内転・外転、母指の内転(フローマン徴候)
烏口下脱臼腋窩神経肩関節の外転
月状骨脱臼正中神経母指の対立
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