学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §9 総論 軟部組織損傷 / QJ29P073

理由で解く 柔道整復師

QJ29P073 柔道整復理論

出典:第29回柔道整復師国家試験(2021)午後 問73
問題
末梢神経損傷で正しいのはどれか。
選択肢
1 チネル徴候は再生の先端部でみられる。
2 一過性神経伝導障害では逆行性変性が起こる。
3 軸索断裂では中枢側にワーラー変性が起こる。
4 自律神経障害の急性期では皮膚温が低下する。
解答
正解1(チネル徴候は再生の先端部でみられる。)
解説

チネル(Tinel)徴候は、再生してきた軸索の先端部を叩いたときに支配領域へ放散する痛み・しびれで、神経再生がどこまで進んだかを示す所見である。

軸索が断たれると、損傷部より末梢の軸索と髄鞘が変性・崩壊する(ワーラー変性)。中枢側の断端からは1日あたり1〜数mmの速さで軸索が伸び出すが、伸びたばかりの再生軸索は髄鞘が未熟で機械刺激に過敏である。そのため先端部を軽く叩打すると、その神経の支配領域へ向かって放散するしびれや痛みが生じる。数週間おきに叩打点を確認し、陽性となる位置が末梢へ移動していれば再生が進行していると判断でき、逆に同じ位置にとどまれば再生の停滞を疑う。損傷の程度はセドン(Seddon)分類で一過性神経伝導障害・軸索断裂・神経断裂に分けられ、変性の有無と回復の見込みが異なる。

✓ 1. 正しい
チネル徴候は再生の先端部でみられる。
髄鞘が未熟な再生軸索の先端は刺激に過敏で、そこを叩打すると支配領域に放散痛が出る。経過を追って陽性部位が末梢へ移動すれば再生が進んでいる証拠となるため、回復の判定に用いられる。
✗ 2. 誤り
一過性神経伝導障害では逆行性変性が起こる。
一過性神経伝導障害(ニューラプラキシー)は局所の圧迫や阻血による伝導ブロックで、軸索の連続性は保たれている。ワーラー変性も逆行性変性も起こらず、数日から数週で完全に回復するのが特徴である。
✗ 3. 誤り
軸索断裂では中枢側にワーラー変性が起こる。
ワーラー変性が起こるのは損傷部より末梢側である。細胞体から切り離された軸索が栄養を絶たれて崩壊するため、方向は「末梢側」と覚える。中枢側は断端から1〜2ランビエ絞輪程度の逆行性変性にとどまる。
✗ 4. 誤り
自律神経障害の急性期では皮膚温が低下する。
急性期は血管運動神経が麻痺して血管が拡張するため、支配域の皮膚は紅潮して温かくなり、発汗は消失して乾燥する。皮膚温の低下や皮膚の萎縮・爪の変化がみられるのは慢性期であり、時期が逆になっている。
ポイント
  • チネル徴候=再生軸索の先端を叩打して生じる放散痛。陽性部位が末梢へ移動すれば再生進行。
  • ワーラー変性は必ず「損傷部より末梢側」。中枢側は1〜2絞輪程度の逆行性変性のみ。
  • 一過性神経伝導障害は軸索の連続性が保たれ、変性を起こさず数日〜数週で完全回復。
  • 自律神経障害は急性期=血管拡張で温かく乾燥、慢性期=冷たく皮膚萎縮。
  • 軸索の再生速度は約1mm/日。損傷部位から支配筋までの距離で回復時期を見積もる。
比較表
セドン分類病態ワーラー変性回復
一過性神経伝導障害局所の伝導ブロック、軸索は連続起こらない数日〜数週で完全回復
軸索断裂軸索は断裂、神経内膜は保たれる末梢側に起こる再生軸索が伸びて回復。チネル徴候が末梢へ移動
神経断裂神経幹が完全に断裂末梢側に起こる自然回復は望めず縫合などの手術が必要
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