学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §9 総論 軟部組織損傷 / QJ32P068

理由で解く 柔道整復師

QJ32P068 柔道整復理論

出典:第32回柔道整復師国家試験(2024)午後 問68
問題
運動器損傷で正しいのはどれか。
選択肢
1 打撲では介達痛がある。
2 脱臼では異常可動性がある。
3 靱帯断裂では最終域感がある。
4 末梢神経損傷では代償運動がある。
解答
正解4(末梢神経損傷では代償運動がある。)
解説

損傷にはそれぞれ「そこにしか出ない所見」がある。末梢神経損傷では、麻痺した筋の働きを別の筋が肩代わりする代償運動(トリック運動)がみられるので、4が正しい。

打撲は直達外力を受けた場所そのものの軟部組織損傷なので、痛みは押した局所に限られる。脱臼は関節端が完全に転位して周囲の軟部組織に引っかかるため、他動的に動かすとバネのように元へ戻る弾発性固定を示す。靱帯が完全に切れると、その靱帯が本来受け止めていた動きを止められなくなるので、不安定性テストでの「止まり」が消える。これに対し末梢神経損傷では筋そのものは壊れていないため、麻痺を免れた筋を総動員して見かけ上の動作を作り出す。四つの選択肢は「どの構造が壊れたか」に置き換えると、症状が自動的に決まる。

✓ 4. 正しい
末梢神経損傷では代償運動がある。
神経が断たれても支配外の筋は健在なので、患者は残った筋と関節の連動を使って目的の動作を作ろうとする。橈骨神経麻痺(下垂手)では、手関節を能動的に掌屈させると腱固定効果(テノデーシス効果)によって手指伸筋腱が緊張し、見かけ上MP関節が伸展する。また正中・尺骨神経支配の虫様筋・骨間筋が伸筋腱膜を介してIP関節を伸展させるため、指が自力で伸びているように見える。三角筋麻痺で体幹を傾けて挙上したように見せるのも代表例。評価では手関節を中間位に保持したまま手指の伸展を診るなど、代償を封じた肢位で改めて筋力を診ると、麻痺の範囲を取り違えずに済む。
✗ 1. 誤り
打撲では介達痛がある。
打撲は外力を受けた部位の限局した損傷なので、圧痛はその一点(直達痛)に出る。介達痛(離れた部位から力を伝えると骨折部が痛む)や軸圧痛は骨折を疑う一般外傷症状であり、打撲でこれらが陽性なら骨損傷の合併を考えて画像評価につなぐ。
✗ 2. 誤り
脱臼では異常可動性がある。
異常可動性(本来動かない部位が動く)は骨折の固有症状。脱臼の固有症状は弾発性固定・変形・関節窩の空虚で、動かそうとすると抵抗があり、離せば元の異常肢位に戻る。両者を取り違えると整復操作の選択を誤るため、まず「関節が外れているのか、骨が折れているのか」を所見で切り分ける。
✗ 3. 誤り
靱帯断裂では最終域感がある。
完全断裂では制動する構造が失われるため、不安定性テストでの最終域感(エンドポイント)は消失または不明瞭になる。逆に、動揺があってもしっかりした止まりが触れるなら部分損傷を示唆する。健側と必ず比べ、動揺と最終域感の両方を記録するのが基本。
ポイント
  • 骨折の固有症状=異常可動性・軋轢音・転位/変形。脱臼の固有症状=弾発性固定・変形・関節窩の空虚。
  • 介達痛・軸圧痛は骨折を疑うサイン。打撲は原則として直達痛(局所の圧痛)のみ。
  • 靱帯完全断裂では動揺性が増し、最終域感(エンドポイント)は消える。必ず健側と比較する。
  • 末梢神経損傷では麻痺筋の働きを他筋や腱の張力が肩代わりする代償運動が出る。橈骨神経麻痺では手関節掌屈による腱固定効果、虫様筋・骨間筋によるIP関節伸展が見かけ上の指伸展をつくる。
  • 手関節を中間位に保って手指の伸展を診るなど、代償を封じた肢位で筋力を診ると麻痺範囲を見誤らない。
比較表
損傷壊れた構造特徴的な所見
打撲皮下・筋などの軟部組織限局した直達痛・腫脹・皮下出血(介達痛は原則なし)
骨折骨の連続性異常可動性・軋轢音・転位/変形、介達痛・軸圧痛
脱臼関節の適合弾発性固定・変形・関節窩の空虚
靱帯断裂関節の制動機構動揺性増大、最終域感の消失
末梢神経損傷筋への指令経路支配筋の麻痺・感覚障害、代償運動(トリック運動)
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