学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §16 各論(骨折) 上肢 / QJ29P069

理由で解く 柔道整復師

QJ29P069 柔道整復理論

出典:第29回柔道整復師国家試験(2021)午後 問69
問題
転位のある鎖骨骨折の患者の姿勢で誤っているのはどれか。
選択肢
1 健側の手で患側上肢を支える。
2 頭部を患側に傾ける。
3 上腕は外転肢位をとる。
4 すり足歩行となる。
解答
正解3(上腕は外転肢位をとる。)
解説

転位のある鎖骨骨折の患者は、骨折部の緊張と振動を避けるための決まった姿勢をとる。上肢は体幹につけた下垂位が基本で、外転肢位はとらない。

鎖骨骨折では、近位骨片が胸鎖乳突筋に引かれて上後方へ、遠位骨片は上肢の重みと大胸筋・小胸筋の牽引で下前内方へ転位する。そのため患者は胸鎖乳突筋の起始部の緊張をゆるめようとして頭部を患側へ傾け、顔は健側へ向ける。同時に健側の手で患側の肘や前腕を支えて上肢の重みを取り除き、上肢は体幹に密着させたまま動かさない。歩行でも踵接地の衝撃が骨折部に伝わらないよう、歩幅の小さいすり足になる。いずれも「骨片を動かす力を減らす」ための姿勢と理解すると、丸暗記せずに判断できる。応急処置では患者が自分でとっているこの肢位をそのまま保ち、三角巾などで前腕を吊って上肢の重みを除いてから固定に移る。

✓ 3. これが誤り(設問の答え)
上腕は外転肢位をとる。
上腕を外転すると肩甲帯が動いて鎖骨に剪断力が加わり、骨片がずれて疼痛が強まる。実際の患者は上腕を体幹に密着させた内転・下垂位を保つ。したがって「外転肢位をとる」は患者の姿勢として当てはまらず、これが設問の答えとなる。搬送や固定の際も、この内転・下垂位を崩さないように上肢ごと体幹に添わせて支える。
✗ 1. 正しい(答えではない)
健側の手で患側上肢を支える。
上肢の重みは遠位骨片を下方へ引き下げる力になる。健側の手で患側の肘を下から支えるとこの重みが除かれ、疼痛が軽くなる。実際にみられる典型的な姿勢である。
✗ 2. 正しい(答えではない)
頭部を患側に傾ける。
頭部を患側に傾けると胸鎖乳突筋の起始と停止が近づき、近位骨片を引き上げる張力がゆるむ。顔は健側を向く形になる。これも典型的な姿勢で、答えではない。
✗ 4. 正しい(答えではない)
すり足歩行となる。
通常の歩行では踵接地のたびに衝撃が体幹を通じて鎖骨へ伝わる。それを避けるため歩幅を小さくし、足を床から離さないすり足になる。実際にみられる所見であり、答えではない。
ポイント
  • 近位骨片=胸鎖乳突筋に引かれて上後方、遠位骨片=上肢の重み+大胸筋・小胸筋で下前内方へ転位する。
  • 頭部を患側に傾け顔は健側を向く(胸鎖乳突筋の緊張をゆるめる姿勢)。
  • 健側の手で患側の肘を支え、上肢は体幹につけた内転・下垂位。外転や挙上はしない。
  • 歩行は衝撃を避けるすり足になる。
  • 覚え方=すべて「骨片を動かす力を減らす」ための姿勢。外転だけが骨片を動かす方向なので浮く。
比較表
骨片働く主な力転位方向患者の姿勢との関係
近位骨片胸鎖乳突筋の牽引上後方頭部を患側に傾けて筋の張力をゆるめる
遠位骨片上肢の重み、大胸筋・小胸筋下前内方健側の手で肘を支え、重みを取り除く
骨折部全体歩行時の衝撃・振動歩幅の小さいすり足歩行になる
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