学習トップ理由で解く 柔道整復師整形外科学 ▸ §14 疾患別各論 神経・筋疾患 / QJ29P062

理由で解く 柔道整復師

QJ29P062 整形外科学

出典:第29回柔道整復師国家試験(2021)午後 問62
問題
手根管症候群の症状で正しいのはどれか。
選択肢
1 小指球筋萎縮
2 手背感覚鈍麻
3 母指対立運動低下
4 手指開排運動低下
解答
正解3(母指対立運動低下)
解説

母指対立運動の低下です。手根管で正中神経が圧迫され、正中神経が支配する母指球筋(短母指外転筋・母指対立筋)が働かなくなります。

手根管は手根骨がつくる溝と、その上に張る屈筋支帯(横手根靱帯)で囲まれた狭いトンネルで、9本の屈筋腱と正中神経が一緒に通ります。腱鞘の腫脹や内圧上昇で神経が圧迫されると、まず母指から環指橈側(橈側3指半)の掌側にしびれが出ます。夜間から明け方に強く、手を振ると軽くなるのが典型です。進行すると母指球が痩せ、母指を小指の方へ回して向かい合わせる対立運動や外転が弱くなり、手のひらが平らになった猿手を呈します。診察ではティネル徴候、ファレンテスト、手根管圧迫テストを用います。妊娠・授乳期、透析、関節リウマチ、手を酷使する作業が背景にあります。夜間に手関節を中間位で保つ装具や作業内容の調整を行い、母指球の萎縮や持続する筋力低下があれば手根管開放術の検討が必要になるため、早めに整形外科へつなぎます。

✓ 3. 正しい
母指対立運動低下
母指対立筋・短母指外転筋は正中神経の反回枝が支配し、手根管を通った先で分岐します。圧迫が続くとこれらが萎縮して母指の対立・外転が弱くなり、猿手となります。
✗ 1. 誤り
小指球筋萎縮
小指球筋は尺骨神経の支配です。萎縮するのは肘部管症候群やギヨン管症候群など尺骨神経の障害であり、手根管症候群で痩せるのは母指球です。
✗ 2. 誤り
手背感覚鈍麻
手背の感覚は主に橈骨神経浅枝と尺骨神経手背枝が担います。正中神経が受け持つのは手掌橈側3指半と、示指・中指などの指尖背側にとどまるため、手背全体の鈍麻は手根管症候群では説明できません。なお母指球部の掌側の感覚を担う掌枝は手根管の外を通るため、この部分の感覚が保たれるのも特徴です。
✗ 4. 誤り
手指開排運動低下
指を開いたり閉じたりする動きは背側・掌側骨間筋が担い、これらは尺骨神経支配です。低下していればフロマン徴候や鷲手を伴う尺骨神経麻痺を考えます。
ポイント
  • 手根管を通るのは正中神経。だから症状は橈側3指半のしびれと母指球の筋力低下・萎縮(猿手)。
  • 夜間から明け方のしびれ、手を振ると軽快するのが典型的な訴え。
  • 母指球部の掌側の感覚は掌枝が手根管の外を通るため保たれやすい。鑑別のヒントになる。
  • 小指球の萎縮・手指の開排低下は尺骨神経障害を示す。手根管症候群では出ない。
  • 夜間装具と作業調整で対応し、筋萎縮が出ていれば手術も選択肢になるため早期に紹介する。
比較表
比べる点手根管症候群(正中神経)肘部管・ギヨン管症候群(尺骨神経)
しびれる範囲母指〜環指橈側(橈側3指半)の掌側環指尺側〜小指
萎縮する筋母指球(猿手)小指球・骨間筋(鷲手)
弱くなる動き母指の対立・外転手指の開排、母指内転(フロマン徴候)
誘発テストファレンテスト、ティネル徴候、手根管圧迫テスト肘屈曲テスト、ティネル徴候
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