学習トップ理由で解く 柔道整復師整形外科学 ▸ §14 疾患別各論 神経・筋疾患 / QJ27P061

理由で解く 柔道整復師

QJ27P061 整形外科学

出典:第27回柔道整復師国家試験(2019)午後 問61
問題
変形と原因の組合せで正しいのはどれか。
選択肢
1 三尖手-胸郭出口症候群
2 鷲手-外反肘
3 下垂手-後骨間神経麻痺
4 猿手-ギヨン(Guyon)管症候群
解答
正解2(鷲手-外反肘)
解説

手の変形は「どの神経が、どの高さで障害されたか」で決まる。外反肘では肘の内側を走る尺骨神経が長年引き伸ばされて遅発性尺骨神経麻痺を起こし、鷲手(わしで)をきたす。正答は2。

前腕・手を動かす3本の神経を、支配筋と障害高位で整理しておくと組合せ問題は崩れない。橈骨神経は手関節と指の伸筋群を、正中神経は前腕屈筋群と母指球筋を、尺骨神経は骨間筋・虫様筋(第3・4)など手内在筋の大半と小指球筋を支配する。したがって上腕での橈骨神経麻痺は下垂手、肘より遠位の後骨間神経麻痺は下垂指、正中神経麻痺は猿手、尺骨神経麻痺は鷲手となる。ここで注意したいのが「三尖手」で、これだけは神経麻痺による変形ではなく、軟骨無形成症でみられる先天性の手の形態異常である。この整理を当てはめると、誤りの3つ(選択肢1・3・4)はいずれも、責任神経がずれている(下垂手は後骨間神経ではなく上腕での橈骨神経、猿手はギヨン管=尺骨神経ではなく正中神経)か、そもそも神経麻痺による変形ではない(三尖手)かのどちらかにあたる。変形と原因が過不足なく対応しているのは、選択肢2の鷲手-外反肘だけである。

✓ 2. 正しい
鷲手-外反肘
外反肘は、小児期の上腕骨外顆骨折が偽関節や変形治癒に終わったあとに残る遺残変形である。肘の内側(尺骨神経溝)を通る尺骨神経が、外反した肘によって長期にわたり牽引・摩擦を受け続けるため、受傷から年余を経て麻痺が現れる。これが遅発性尺骨神経麻痺で、骨間筋・虫様筋が働かなくなるとMP関節が過伸展しIP関節が屈曲した鉤爪状の肢位、すなわち鷲手になる。小児の肘外傷後は、変形の残存とその先の神経障害まで見越して経過を追い、小指側のしびれや巧緻運動のしにくさが出てきた時点で専門医の評価につなぐ。
✗ 1. 誤り
三尖手-胸郭出口症候群
三尖手(trident hand)は軟骨無形成症でみられる先天性の手の形態異常で、指が全体に短く、第3指と第4指の間が開いて手が三叉(トライデント)状に見えるものをいう。神経麻痺で生じる変形ではないため、そもそも神経の絞扼性障害と組み合わせること自体が成り立たない。胸郭出口症候群で前面に出るのは、腕神経叢の下神経幹(C8・T1)や鎖骨下動静脈が斜角筋隙・肋鎖間隙・小胸筋下で圧迫されて起こる前腕尺側から小指にかけてのしびれ、手内在筋の萎縮、上肢を挙げる姿勢での症状増悪である。
✗ 3. 誤り
下垂手-後骨間神経麻痺
後骨間神経は橈骨神経の深枝が回外筋(フローゼのアーケード)を貫いた先の枝で、指の伸筋群を支配する。長橈側手根伸筋・短橈側手根伸筋への枝はそれより近位で分かれているため、後骨間神経が障害されても手関節の背屈は保たれ、指のMP関節だけが伸展できない下垂指となる。純粋な運動枝なので感覚障害を伴わない点も手がかりになる。手関節も指もそろって伸ばせない下垂手は、上腕の橈骨神経溝など、より高位での橈骨神経麻痺の像である。責任神経の高さが一段ずれている組合せといえる。
✗ 4. 誤り
猿手-ギヨン(Guyon)管症候群
ギヨン管(尺骨神経管)は手関節掌側の尺側、豆状骨と有鉤骨鉤の間にあり、通るのは尺骨神経である。ここで絞扼されると手内在筋の麻痺と小指球の萎縮が起こり、変形としては鷲手を呈する。自転車のハンドルや工具で手掌尺側を圧迫し続ける作業が誘因になりやすい。一方の猿手は正中神経麻痺で母指球が萎縮し母指の対立ができなくなった手で、代表的な原因は手根管症候群である。つまり責任神経そのものが取り違えられている。
ポイント
  • 下垂手=上腕での橈骨神経麻痺/下垂指=後骨間神経麻痺(手関節背屈は残り、感覚障害を伴わない)。
  • 猿手=正中神経麻痺(手根管症候群など)。母指球の萎縮と母指対立不能。
  • 鷲手=尺骨神経麻痺(肘部管症候群、外反肘後の遅発性麻痺、ギヨン管症候群)。MP過伸展+IP屈曲の鉤爪肢位。
  • 三尖手は神経麻痺の変形ではなく、軟骨無形成症の先天性手所見(指が短く第3・4指の間が開く)。
  • 胸郭出口症候群はC8・T1中心のしびれ・手内在筋萎縮・上肢挙上での増悪が中心像。
  • 組合せ問題は「責任神経がずれていないか」「そもそも神経麻痺の変形か」の2点で誤答を切る。本問で両方を満たすのは鷲手-外反肘のみ。
  • 小児の上腕骨外顆骨折後は外反肘の残存を長期に追い、しびれや巧緻性低下が出たら専門医につなぐ。
比較表
変形責任神経・障害部位手の形・特徴
下垂手橈骨神経(上腕・橈骨神経溝)手関節も指も伸展できない。手背橈側の感覚障害を伴う
下垂指後骨間神経(回外筋部)手関節背屈は可能。指のMP伸展のみ不能、感覚障害なし
猿手正中神経(手根管など)母指球の萎縮、母指の対立不能
鷲手尺骨神経(肘部管、外反肘、ギヨン管)MP関節過伸展+IP関節屈曲の鉤爪状。骨間筋・小指球の萎縮
三尖手神経麻痺ではない(軟骨無形成症)指が短く第3指と第4指の間が開く先天性の形態異常
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