学習トップ理由で解く 柔道整復師外科学概論 ▸ §6 失血と輸血・輸液 / QJ29P049

理由で解く 柔道整復師

QJ29P049 外科学概論

出典:第29回柔道整復師国家試験(2021)午後 問49
問題
新鮮凍結血漿の適応はどれか。
選択肢
1 失血
2 肺水腫
3 低栄養
4 肝不全
解答
正解4(肝不全)
解説

新鮮凍結血漿(FFP)の目的はただ一つ、「凝固因子の補充」です。凝固因子の大半は肝臓で合成されるため、肝不全で凝固因子が不足し出血傾向を来した状態が典型的な適応になります。

血液製剤は「何を補いたいのか」で使い分けます。酸素運搬能が足りなければ赤血球濃厚液、止血に必要な血小板が足りなければ濃厚血小板、凝固因子が足りなければ FFP、というのが原則です。FFP には第 I 因子(フィブリノゲン)をはじめ各種凝固因子が含まれており、複数の凝固因子が同時に不足し、かつ出血しているか観血的処置を控えている場面で用います。具体的には肝障害・肝不全、播種性血管内凝固症候群(DIC)、大量輸血に伴う希釈性凝固障害、抗凝固薬の緊急補正などです。逆に、循環血液量を増やす目的や膠質浸透圧を保つ目的、栄養補給の目的で FFP を使うのは適応外とされています。それらは輸液製剤やアルブミン製剤、栄養療法で対応すべきで、輸血には感染症伝播、アレルギー、輸血関連急性肺障害(TRALI)、輸血関連循環過負荷(TACO)といったリスクが伴うからです。「必要な成分を、必要なときだけ」が輸血療法の考え方です。

✓ 4. これが答え
肝不全
凝固因子はフィブリノゲンや第 II・VII・IX・X 因子など、そのほとんどが肝臓で合成されます。肝不全ではこれらの産生が低下してプロトロンビン時間(PT)が延長し、出血傾向を来します。複数の因子が同時に不足しているので、単一因子製剤ではなく FFP による補充が理にかなっています。出血しているとき、あるいは観血的処置の前に投与するのが原則で、検査値の異常だけを理由に反射的に投与するものではありません。なお、ビタミン K の欠乏や吸収障害が主因であればまずビタミン K を投与します。
✗ 1. 答えではない
失血
失血で不足するのは循環血液量と赤血球による酸素運搬能ですから、まず細胞外液補充液などの輸液を行い、必要に応じて赤血球濃厚液を投与するのが基本です。FFP を循環血液量の補充目的で使うことは適応外とされています。ただし大量出血で凝固因子が希釈・消費され、PT・APTT の延長やフィブリノゲンの低下が確認された場合には、凝固障害の是正として FFP を併用します。つまり「出血しているから FFP」ではなく「凝固因子が足りないから FFP」と考えます。
✗ 2. 答えではない
肺水腫
肺水腫はすでに血管内から肺胞・間質へ水分が漏れ出ている状態で、FFP を投与すれば容量負荷が加わって悪化します。輸血自体が輸血関連循環過負荷(TACO)や輸血関連急性肺障害(TRALI)を招く可能性もあります。対応は酸素化の確保と原因(心不全なら利尿薬や後負荷軽減など)に応じた治療で、FFP の適応ではありません。
✗ 3. 答えではない
低栄養
FFP を蛋白源・アルブミン源として栄養補給に用いることは適応外です。含まれる蛋白量に対して感染症伝播やアレルギーなどのリスクが見合いません。低栄養には、腸が使えるならまず経腸栄養、それが困難なら静脈栄養で、必要な熱量と蛋白・微量元素を計画的に補います。
ポイント
  • FFP の目的は凝固因子の補充ただ一つ。「何が足りないか」で製剤を選ぶ。
  • 典型的な適応は肝不全・肝障害、DIC、大量輸血に伴う希釈性凝固障害、抗凝固薬の緊急補正など、複数因子が同時に不足する病態。
  • 循環血液量の補充・膠質浸透圧の維持・栄養補給を目的とした FFP 使用は適応外。
  • 失血の基本は輸液+赤血球濃厚液。凝固障害を伴うことが確認されたときに FFP を併用する。
  • 輸血には感染症伝播、アレルギー、TRALI、TACO のリスクがあるため、必要な成分を必要なときだけ投与する。
比較表
製剤補うもの主な適応
赤血球濃厚液酸素運搬能失血・貧血による組織の酸素不足
濃厚血小板血小板血小板減少・機能低下による出血や出血リスク
新鮮凍結血漿(FFP)凝固因子(フィブリノゲンを含む)肝不全、DIC、希釈性凝固障害など複数因子の欠乏
アルブミン製剤膠質浸透圧低アルブミン血症に伴う難治性の浮腫・腹水など
晶質液(細胞外液補充液)循環血液量・細胞外液脱水、出血の初期輸液
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