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理由で解く 柔道整復師

QJ29P011 衛生学・公衆衛生学

出典:第29回柔道整復師国家試験(2021)午後 問11
問題
熱中症で正しいのはどれか。
選択肢
1 輻射熱は影響しない。
2 意識障害は起こさない。
3 湿度が高い時に起こりやすい。
4 高齢者に起こることはまれである。
解答
正解3(湿度が高い時に起こりやすい。)
解説

湿度が高いと汗が蒸発せず、気化熱による放熱ができなくなるため熱中症が起こりやすくなります。正解は3です。

体熱は輻射・伝導・対流・蒸発の4つの経路で放散されますが、気温が皮膚温に近づくと前の3つがほとんど働かず、発汗による蒸発だけが頼りになります。湿度が高いと汗は流れ落ちるだけで蒸発せず、体温が上がり続けます。この考え方から、暑熱環境の評価にはWBGT(暑さ指数)が使われ、屋外では湿球温度×0.7+黒球温度×0.2+乾球温度×0.1で求めます。重みが最も大きいのが湿球温度(湿度の影響)で、黒球温度が輻射熱を反映する点が計算式から読み取れます。熱中症の重症度はI度(めまい・立ちくらみ・こむら返り・大量発汗)、II度(頭痛・嘔吐・倦怠感・集中力低下)、III度(意識障害・けいれん・高体温・肝腎機能障害)に分類されます。現場ではまず涼しい場所へ移して衣服をゆるめ、頸部・腋窩・鼠径部を冷やし、自分で水分(塩分を含むもの)が摂れるかを確認します。ここまでの現場対応で完結してよいのはI度までで、頭痛・嘔吐・倦怠感といったII度の症状がみられれば、その場で経過をみるのではなく、冷却を続けながら原則として医療機関を受診させます(経口摂取が困難なら点滴による補液が必要です)。意識がはっきりしない、けいれんがある、自力で水分が飲めない場合はIII度を疑い、ただちに救急要請したうえで搬送までの間も冷却を継続します。

✓ 3. 正しい
湿度が高い時に起こりやすい。
高温下での主な放熱手段は発汗による蒸発ですが、湿度が高いと汗が蒸発できず気化熱を奪えません。WBGTで湿球温度の重みが最も大きい(屋外で0.7)のは、この機序を反映しているためです。
✗ 1. 誤り
輻射熱は影響しない。
直射日光やアスファルト・壁面からの輻射熱は体への熱の流入を増やします。WBGTにも黒球温度として組み込まれており、日陰の確保や遮熱シートの利用が有効な対策になります。
✗ 2. 誤り
意識障害は起こさない。
III度(熱射病)では体温調節が破綻し、意識障害・けいれん・高体温・多臓器障害を起こします。「呼びかけへの反応がおかしい」と感じた時点で救急要請し、搬送までの間も冷却を続けます。その手前のII度(頭痛・嘔吐・倦怠感)の段階でも、現場で様子をみるのではなく医療機関へつなぐのが原則です。
✗ 4. 誤り
高齢者に起こることはまれである。
高齢者は体内水分量が少なく、口渇を感じにくく、発汗や皮膚血流の増加といった体温調節反応も低下しているため高リスクです。熱中症による死亡の多くを高齢者が占め、住居内での発症が目立ちます。喉の渇きを待たずに定期的な水分摂取を促し、室温を測って冷房を使うよう勧めます。
ポイント
  • 高温下の放熱は発汗による蒸発が主。湿度が高いと蒸発できず熱中症のリスクが上がる。
  • WBGT(屋外)=湿球0.7+黒球0.2+乾球0.1。湿度の重みが最大、黒球温度が輻射熱を反映する。
  • 重症度はI度(めまい・立ちくらみ・こむら返り)、II度(頭痛・嘔吐・倦怠感・集中力低下)、III度(意識障害・けいれん・高体温)。
  • 共通の初期対応は「涼しい場所へ移動 → 衣服をゆるめ、頸部・腋窩・鼠径部を冷却」。
  • 重症度別の判断:I度=現場で塩分を含む水分を摂らせ、改善を確認する(改善しなければ受診)。II度=原則として医療機関を受診させる(経口摂取が困難なら点滴が必要)。III度=ただちに救急要請し、搬送までの間も冷却を継続。
  • 高齢者は体内水分量の少なさ、口渇感と体温調節反応の低下により高リスク。屋内発症が多い。
比較表
重症度主な症状対応
I度めまい、立ちくらみ、こむら返り、大量発汗涼しい場所で休ませ、塩分を含む水分を与えて冷却。そばで見守り、改善を確認する(改善しなければ医療機関へ)
II度頭痛、嘔吐、倦怠感、集中力・判断力の低下原則として医療機関を受診させる(冷却しながら搬送。経口摂取が困難なら点滴が必要)
III度意識障害、けいれん、高体温、肝腎機能障害ただちに救急要請。搬送までの間も冷却を継続

※日本救急医学会の熱中症重症度分類では、I度=現場での応急処置と見守りで対応可能、II度=医療機関への搬送が必要、III度=入院加療(場合により集中治療)が必要、と区分されている。II度は「改善しなければ受診」ではなく、原則として受診が必要である点に注意。

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