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理由で解く 柔道整復師

QJ29P010 衛生学・公衆衛生学

出典:第29回柔道整復師国家試験(2021)午後 問10
問題
消毒剤と殺菌できる病原体の組合せで誤っているのはどれか。
選択肢
1 クロルヘキシジン-結核菌
2 消毒用エタノール-MRSA
3 70%イソプロパノール-緑膿菌
4 次亜塩素酸ナトリウムーーノロウイルス
解答
正解1(クロルヘキシジン-結核菌)
解説

クロルヘキシジンは低水準消毒薬で、結核菌には効きません。組合せとして誤っているのは1です。

消毒薬は抗微生物スペクトル(どこまで効くか)で3つの水準に分けて整理します。高水準消毒薬(グルタラール、過酢酸、フタラール)は芽胞を含むほぼすべての微生物に有効で、内視鏡など器具の消毒に用います。中水準消毒薬(次亜塩素酸ナトリウム、ポビドンヨード、消毒用エタノール、イソプロパノール)は結核菌に有効な一群ですが、同じ中水準でもウイルスへの効き方に差があるので薬剤ごとに分けて覚えます。次亜塩素酸ナトリウム・ポビドンヨードは結核菌に加えて、ノロウイルスなどエンベロープを持たないウイルスにも有効です。これに対しアルコール(消毒用エタノール・イソプロパノール)は、一般細菌・結核菌・エンベロープを持つウイルスには有効ですが、非エンベロープウイルスと芽胞には効きにくいという弱点があります。低水準消毒薬(クロルヘキシジン、ベンザルコニウムなどの第四級アンモニウム塩、両性界面活性剤)は一般細菌には有効ですが、クロルヘキシジンは緑膿菌・セラチアなどのグラム陰性桿菌に対して効果が劣り(希釈液の汚染事例も知られています)、結核菌・芽胞・多くの非エンベロープウイルスには無効です。したがって、ノロウイルスのような非エンベロープウイルスや芽胞が問題になる場面ではアルコールに頼らず、次亜塩素酸ナトリウムで対応します。施術所では、手指衛生にはアルコール、吐物処理や環境の清拭には次亜塩素酸ナトリウム、というように対象微生物に合わせて薬剤を選びます。

✓ 1. これが答え(組合せが誤り)
クロルヘキシジン-結核菌
クロルヘキシジングルコン酸塩は低水準消毒薬で、グラム陽性菌を中心とした一般細菌には有効ですが(緑膿菌・セラチアなどのグラム陰性桿菌には効果が劣ります)、結核菌・芽胞・多くのウイルスには無効です。結核菌を対象にするなら、消毒用エタノールや次亜塩素酸ナトリウムなど中水準以上を選びます。なお粘膜への使用でアナフィラキシーの報告があり、粘膜には用いません。
✗ 2. 答えではない(組合せは正しい)
消毒用エタノール-MRSA
MRSAは抗菌薬への耐性を持ちますが、消毒薬に対する抵抗性は通常の黄色ブドウ球菌と変わらず、消毒用エタノールで有効です。「薬剤耐性菌=消毒薬も効かない」ではない点が要注意です。
✗ 3. 答えではない(組合せは正しい)
70%イソプロパノール-緑膿菌
イソプロパノールは細菌に対して有効で、緑膿菌などのグラム陰性桿菌にも効きます(この点が、緑膿菌に効果の劣るクロルヘキシジンとの違いです)。ただしエタノールと比べてウイルスへの効果は劣り、脱脂作用が強く皮膚刺激性も高いという違いがあります。
✗ 4. 答えではない(組合せは正しい)
次亜塩素酸ナトリウムーーノロウイルス
ノロウイルスはエンベロープを持たないためアルコールが効きにくい代表格ですが、次亜塩素酸ナトリウムは有効です。吐物・便の処理には0.1%(1,000ppm)程度、環境の清拭には0.02%程度と、濃度を使い分けます。
ポイント
  • 高水準(グルタラール・過酢酸・フタラール)=芽胞を含めほぼすべてに有効。器具用。
  • 中水準①(次亜塩素酸ナトリウム・ポビドンヨード)=結核菌に加え、ノロウイルスなど非エンベロープウイルスにも有効。
  • 中水準②アルコール(消毒用エタノール・イソプロパノール)=一般細菌・結核菌・エンベロープウイルスに有効。非エンベロープウイルスと芽胞には効きにくい。
  • 低水準(クロルヘキシジン・ベンザルコニウム・両性界面活性剤)=一般細菌が中心(クロルヘキシジンは緑膿菌などグラム陰性桿菌に効果が劣る)。結核菌・芽胞・非エンベロープウイルスには無効。
  • ノロウイルス(非エンベロープ)にはアルコールが効きにくく、次亜塩素酸ナトリウムを用いる。
  • MRSAは抗菌薬耐性であって消毒薬耐性ではない。通常のアルコール消毒で対応できる。
比較表
水準代表的な薬剤一般細菌結核菌非エンベロープウイルス芽胞
高水準グルタラール、過酢酸、フタラール
中水準次亜塩素酸ナトリウム、ポビドンヨード△(条件により)
中水準消毒用エタノール、イソプロパノール×〜△×
低水準クロルヘキシジン、ベンザルコニウム○※×××

※低水準薬の「一般細菌」はグラム陽性菌が中心。クロルヘキシジンは緑膿菌・セラチアなどのグラム陰性桿菌に対して効果が劣り、希釈液が汚染された事例も報告されている。「70%イソプロパノール-緑膿菌(選択肢3)が正しいなら、クロルヘキシジン-緑膿菌も同じ」と読み替えないこと。

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