学習トップ理由で解く 柔道整復師生理学 ▸ §3 循環 / QJ29A085

理由で解く 柔道整復師

QJ29A085 生理学

出典:第29回柔道整復師国家試験(2021)午前 問85
問題
図の心電図の矢印が示す波形が反映するのはどれか。
図
選択肢
1 心房の脱分極
2 心房の再分極
3 心室の脱分極
4 心室の再分極
解答
正解1(心房の脱分極)
解説

心電図の各波は心筋の電気的興奮を順に写したものである。図(第I誘導、3拍分の記録)では3本の矢印がいずれも、背の高い鋭い波(QRS群)の直前にある低くなだらかな小さい波を指している。この位置と形の波はP波であり、P波が反映するのは心房の脱分極。したがって正答は1である。

心臓の興奮は洞房結節で発生し、心房筋を伝わって房室結節へ集まり、ヒス束・左右脚・プルキンエ線維を経て心室筋全体へ広がる。この電気的興奮の広がり(脱分極)と、もとの静止電位へ戻る過程(再分極)を体表から記録したものが心電図である。1心拍の基本波形は、心房の脱分極を表す小さなP波、心室の脱分極を表す鋭く大きなQRS群、心室の再分極を表すなだらかなT波の順に並ぶ。心房の再分極(Ta波)も理論上は生じるが、振幅が小さいうえに時間的にQRS群と重なるため、通常の心電図では独立した波として現れない。波形を読むときは、まず最も大きく目立つQRS群を見つけ、その直前にある小さな波をP波、直後のなだらかな波をT波と位置づけると、順番を取り違えにくい。時間の計測では用語の区別も重要で、波の「起始から起始まで」を測るものを間隔(interval)、波と波の間の平坦な基線部分を部分(segment)と呼び分ける。

✓ 1. 正しい
心房の脱分極
矢印が指しているのは、鋭く尖ったQRS群の手前に位置する低くなだらかな小さい波、すなわちP波である。P波は洞房結節で生じた興奮が左右の心房筋へ広がっていく脱分極を反映する。3拍とも同じ位置に同じ形の波が現れていることも、これが規則的な洞調律のP波であることを裏づける。なお、P波の始まりからQRS群の始まりまでがPQ(PR)間隔で、房室結節での伝導遅延を含み房室伝導時間の指標になる(正常0.12〜0.20秒、延長すればⅠ度房室ブロック)。このうちP波の終わりからQRS群の始まりまでの平坦な基線部分はPQ部分(PQセグメント/PRセグメント)と呼び、間隔とは区別する。房室結節でのこの遅れがあるおかげで、心房収縮による心室への血液充満が終わってから心室が収縮できる。
✗ 2. 誤り
心房の再分極
心房の再分極に対応する波はTa波と呼ばれるが、心房筋は心室筋に比べて量が少なく電位が小さいうえ、発生する時期がQRS群と重なるため、通常の心電図では埋もれて識別できない。実際この図でもQRS群の周辺に独立した波は見当たらない。心電図上で「見える再分極波」はT波(心室の再分極)だけと押さえておくとよい。
✗ 3. 誤り
心室の脱分極
心室の脱分極を反映するのはQRS群で、心電図のなかで最も振幅が大きく幅の狭い(およそ0.10秒未満)鋭い波形として現れる。心筋量の多い心室が刺激伝導系を介してほぼ同時に興奮するため電位が大きくなる。図で最も背が高く尖っている波がそれであり、矢印が指しているのはその鋭い波ではなく、手前にある低くなだらかな波である。
✗ 4. 誤り
心室の再分極
心室の再分極を反映するのはQRS群に続くT波で、脱分極に比べて時間をかけて進むため、なだらかで幅の広い波になる。図でも各拍のQRS群の後方にその波が確認できるが、矢印が指しているのはQRS群より前にある波なのでT波ではない。なお、QRS群の始まりからT波の終わりまでのQT間隔が心室の電気的収縮時間にあたる。
ポイント
  • P波=心房の脱分極、QRS群=心室の脱分極、T波=心室の再分極。この3つの対応が心電図読解の土台。
  • 心房の再分極波(Ta波)は振幅が小さくQRS群と重なるため、通常は記録上に現れない。
  • PQ(PR)間隔=P波の始まりからQRS群の始まりまで。房室結節での伝導遅延を含む房室伝導時間の指標で、正常0.12〜0.20秒。P波そのものを含む区間なので「平坦」ではない。
  • PQ部分(PQセグメント)=P波の終わりからQRS群の始まりまでの平坦な基線部分。間隔(起始基準)と部分(基線)を混同しない。
  • QT間隔=QRS群の始まりからT波の終わりまでで、心室の電気的収縮時間を表す。
  • 刺激伝導系の順路は洞房結節→心房筋→房室結節→ヒス束→左脚・右脚→プルキンエ線維→心室筋。
  • 矢印問題はQRS群の前か後かを見るだけで足りる。心電図は電気現象の記録で、機械的収縮はそれよりわずかに遅れて起こる。
比較表
波形・区間反映する電気現象範囲・形の特徴
P波心房の脱分極小さくなだらか。QRS群の直前に現れる
QRS群心室の脱分極振幅が最大で幅の狭い鋭い波(およそ0.10秒未満)
T波心室の再分極QRS群に続く、幅の広いなだらかな波
Ta波心房の再分極電位が小さくQRS群に埋没し、通常は識別できない
PQ(PR)間隔房室伝導時間(房室結節での遅延を含む)P波の始まり〜QRS群の始まり。P波を含む区間で約0.12〜0.20秒
PQ部分(PQセグメント)心房興奮の完了から心室興奮の開始までP波の終わり〜QRS群の始まり。基線に近く平坦
QT間隔心室の電気的収縮時間QRS群の始まり〜T波の終わり
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