学習トップ理由で解く 柔道整復師生理学 ▸ §3 循環 / QJ28A086

理由で解く 柔道整復師

QJ28A086 生理学

出典:第28回柔道整復師国家試験(2020)午前 問86
問題
ジョギングをしている時の循環系の変化で正しいのはどれか。
選択肢
1 静脈還流量は減少する。
2 胃や腸への動脈は拡張する。
3 下肢筋群への動脈は拡張する。
4 収縮期血圧は低下する。
解答
正解3(下肢筋群への動脈は拡張する。)
解説

ジョギングのような動的運動では、働いている骨格筋の動脈が拡張して血流が大幅に増え、その一方で内臓の血管は収縮して血液が再配分されます。よって選択肢3が正しい記述です。

運動を始めると交感神経活動が高まり、心拍数と心収縮力が増して心拍出量が増加します。ここで重要なのが血流の「配分の切り替え」です。活動している下肢の骨格筋では、局所にたまる代謝産物(アデノシン、K+、H+、CO2など)による代謝性血管拡張が交感神経性の血管収縮に打ち勝ち、さらにアドレナリンによるβ2受容体刺激も加わって細動脈が拡張し、筋血流は安静時の数倍から十数倍にまで増えます。反対に、当面働かなくてよい消化管や腎臓の血管は交感神経性に収縮し、そのぶんの血液が筋へ回されます。加えて、下肢の収縮弛緩による筋ポンプと、深く速い呼吸による呼吸ポンプが静脈還流量を増やし、スターリングの法則に従って1回拍出量も増加します。その結果、収縮期血圧は上昇し、末梢血管抵抗の低下により拡張期血圧はほぼ変わらないかやや低下して、脈圧が広がります。運動時の循環は「心臓の出力を上げつつ、行き先を筋へ振り替える」と一言でまとめられます。

✓ 3. 正しい
下肢筋群への動脈は拡張する。
活動筋では局所の代謝産物による血管拡張作用が優位となり、細動脈が拡張して血流が大きく増加します。運動中に酸素と栄養を最も必要とする場所へ、優先的に血液を送るための反応です。
✗ 1. 誤り
静脈還流量は減少する。
実際には増加します。下肢の筋収縮が静脈を圧迫し、静脈弁と協働して血液を心臓へ押し戻す筋ポンプが働き、さらに呼吸が深くなることで胸腔内圧の変動による呼吸ポンプも強まるためです。静脈還流の増加は1回拍出量の増加に直結します。
✗ 2. 誤り
胃や腸への動脈は拡張する。
運動中の消化管の動脈は、交感神経(α受容体)を介して収縮します。内臓血流を減らして筋へ血液を回すのが運動時の血流再配分です。なお食後の安静時は逆に消化管血流が増えるので、「食後すぐの激しい運動は避ける」という指導の根拠にもなります。
✗ 4. 誤り
収縮期血圧は低下する。
心拍出量の増加に伴い、収縮期血圧は上昇します。一方、筋の血管拡張で全末梢血管抵抗が下がるため拡張期血圧はほぼ不変か軽度低下し、脈圧が拡大するのが動的運動の特徴です。運動中に収縮期血圧が低下する場合は正常な反応ではありません。これは大動脈弁狭窄症・重症の冠動脈疾患・左室機能低下など重篤な心疾患を示唆する所見で、運動テストの中止基準にも挙げられる危険サインです。ただちに運動を中止して安静をとらせ、胸痛・失神・冷汗・強い息切れを伴うときは救急要請を含めた対応を行います。症状がその場で治まった場合でも、心疾患が背景にある可能性があるため自己判断で運動を再開させず、医療機関の受診をすすめてください。
ポイント
  • 運動時は交感神経活動が高まり、心拍数・心収縮力が増加して心拍出量が増える。
  • 活動筋の細動脈は、局所代謝産物(アデノシン、K+、H+、CO2)による代謝性血管拡張とβ2受容体刺激で拡張し、血流が大幅に増加する。
  • 消化管・腎の血管は交感神経性に収縮し、血流が筋へ再配分される(皮膚は体温上昇に伴い後半で拡張)。
  • 筋ポンプ・呼吸ポンプにより静脈還流量が増加し、スターリングの法則で1回拍出量も増える。
  • 血圧は収縮期が上昇、拡張期はほぼ不変〜やや低下し、脈圧が拡大する。
  • 運動中の収縮期血圧の低下は運動中止基準にあたる危険サイン(大動脈弁狭窄症、重症の冠動脈疾患、左室機能低下などを示唆)。ただちに運動を中止して安静→胸痛・失神・冷汗・強い息切れを伴えば救急要請→症状が治まっても運動を再開させず医療機関の受診をすすめる、まで行う。
比較表
項目安静時ジョギングなどの動的運動時
骨格筋の動脈収縮傾向(心拍出量の約2割が配分)拡張し血流が大幅に増加
消化管・腎の動脈比較的多く配分収縮して血流が減少
静脈還流量基礎レベル筋ポンプ・呼吸ポンプで増加
心拍出量基礎レベル心拍数・1回拍出量の増加で著明に増加
収縮期血圧/拡張期血圧基準値収縮期は上昇/拡張期は不変〜やや低下
運動中に収縮期血圧が低下したら異常反応(運動中止基準)。中止・安静→胸痛や失神を伴えば救急要請→治まっても医療機関受診をすすめる
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