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理由で解く 柔道整復師

QJ28A085 生理学

出典:第28回柔道整復師国家試験(2020)午前 問85
問題
スターリングの心臓の法則はどれか。
選択肢
1 心室拡張期容積が増加すると1回拍出量が増加する。
2 電気的興奮は刺激伝導系によって心室全体に拡がる。
3 心臓は外部からの刺激がなくても自発的に興奮・収縮する。
4 プラトー相に細胞内へ流入するCa2+が収縮の引き金となる。
解答
正解1(心室拡張期容積が増加すると1回拍出量が増加する。)
解説

スターリングの心臓の法則(フランク・スターリングの法則)は、拡張期に心室へ多く血液が入るほど、次の収縮で送り出す量も増えるという関係を指します。したがって選択肢1が該当します。

はじめに、この問題の読み方を確認しておきます。本問は記述の正誤を問うのではなく「どれがスターリングの心臓の法則にあたるか」を選ぶ定義同定型の設問です。選択肢2・3・4は、いずれも心臓の別の重要な性質(刺激伝導系による興奮伝導、自動能、興奮収縮連関)を述べたもので、記述内容そのものはすべて正しいものです。以下の各ブロックに付いた✗は「記述が誤り」という意味ではなく「問われている法則の説明ではない」という意味なので、いずれも正しい知識としてそのまま覚えてください。そのうえで法則の中身を見ていきます。心筋は引き伸ばされるほど(至適長までは)収縮力が強くなる性質をもちます。拡張期に心室が大きく充満すると心筋線維が伸ばされ、アクチンとミオシンの重なり方が収縮に有利な配置になり、加えて細いフィラメントのCa2+感受性も高まるため、発生する張力が増して1回拍出量が増加します。この法則の生理学的な意味は「静脈還流量が増えれば、神経やホルモンの指令がなくても心臓が自動的に拍出量を合わせる」という点にあり、これによって右心と左心の拍出量が長期にわたって釣り合い、肺や体循環に血液が滞留しません。心臓の性質は名前と内容を一対一で結びつけておくと、この形式の出題で迷わなくなります。

✓ 1. 正しい
心室拡張期容積が増加すると1回拍出量が増加する。
これがスターリングの心臓の法則そのものです。拡張終期容積(前負荷)が増える=心筋が引き伸ばされることで収縮力が増し、1回拍出量が増加します。「入った分だけ出す」と言い換えると理解しやすい法則です。
✗ 2. 誤り
電気的興奮は刺激伝導系によって心室全体に拡がる。
記述内容自体は正しいものの、これは刺激伝導系(興奮伝導性)の説明であって、スターリングの心臓の法則ではありません。洞房結節→房室結節→ヒス束→左脚・右脚→プルキンエ線維という伝導路を通って、興奮が心室全体へ拡がります。法則の名前とは対応しないため、本問の答えにはなりません。
✗ 3. 誤り
心臓は外部からの刺激がなくても自発的に興奮・収縮する。
記述内容自体は正しいものの、これは自動能(自動性)の説明であって、スターリングの心臓の法則ではありません。洞房結節の細胞が緩やかな脱分極(ペースメーカー電位)を自発的に繰り返すことで拍動が始まります。心臓が神経の支配を断たれても拍動を続けるのはこの自動能によるもので、国家試験頻出の正しい知識です。この記述自体を誤りと覚えてしまわないよう注意してください。法則の名前とは対応しないため、本問の答えにはなりません。
✗ 4. 誤り
プラトー相に細胞内へ流入するCa2+が収縮の引き金となる。
記述内容自体は正しいものの、これは興奮収縮連関の説明であって、スターリングの心臓の法則ではありません。心筋活動電位のプラトー相でL型Ca2+チャネルから流入したCa2+が筋小胞体からのCa2+放出を誘発し(Ca誘発性Ca遊離)、収縮が起こります。法則の名前とは対応しないため、本問の答えにはなりません。
ポイント
  • スターリングの心臓の法則=拡張期の心室充満(前負荷・拡張終期容積)が増えるほど、心筋が伸ばされて収縮力が増し、1回拍出量が増加する。
  • 機序:至適長までの伸展でアクチン・ミオシンの重なりが最適化され、細いフィラメントのCa2+感受性も上昇する。
  • 意義:静脈還流量の変化に心臓が自動で対応し、右心と左心の拍出量が釣り合う。
  • 混同しやすい3項目を区別する。自動能=洞房結節が自発的に興奮/刺激伝導系=興奮が伝わる道/興奮収縮連関=プラトー相のCa2+流入が引き金。この3つはいずれも心臓に実際に備わる正しい性質であり、本問では「法則の名前と対応しない」ために選ばれないだけである。
  • 前負荷↑で拍出量↑、後負荷(動脈圧)↑で拍出量↓、交感神経刺激(収縮力↑)は心機能曲線を上方へ移動させる。
比較表
心臓の性質・概念内容記述の正誤本問での対応
スターリングの心臓の法則拡張期容積(前負荷)が増えると1回拍出量が増える正しい選択肢1(=正答)
興奮伝導性(刺激伝導系)洞房結節→房室結節→ヒス束→左右脚→プルキンエ線維で心室全体へ正しい選択肢2(法則名が対応しない)
自動能(自動性)外部刺激なしに洞房結節が自発的に興奮を発生正しい選択肢3(法則名が対応しない)
興奮収縮連関プラトー相のCa2+流入→筋小胞体からのCa2+放出→収縮正しい選択肢4(法則名が対応しない)
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