学習トップ理由で解く 柔道整復師整形外科学 ▸ §16 部位別各論 肩・肩甲帯 / QJ28P063

理由で解く 柔道整復師

QJ28P063 整形外科学

出典:第28回柔道整復師国家試験(2020)午後 問63
問題
肩腱板断裂の慢性期所見で正しいのはどれか。
選択肢
1 上肢の挙上が不可能である。
2 肩関節の回旋拘縮がある。
3 肩峰骨頭間距離が広がる。
4 夜間痛がある。
解答
正解4(夜間痛がある。)
解説

肩腱板断裂の慢性期を代表する所見は夜間痛である。腱板が上腕骨頭を関節窩へ引きつける働きを失うため骨頭は上方へずれ、肩峰骨頭間距離はむしろ狭くなる。

腱板(棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋)は、上腕骨頭を関節窩に押しつけて回転の支点をつくる「求心力」を担っている。断裂するとこの支点が崩れ、三角筋の上向きの力が抑えられずに骨頭が上方へ移動し、肩峰下で腱板と滑液包が繰り返し挟まれる。慢性期にはこれに、肩峰下滑液包の炎症と癒着、棘上筋・棘下筋が萎縮して肩甲骨の棘上窩・棘下窩が陥凹して見えること、運動時の軋轢音が加わってくる。痛みは夜間に強まるのが特徴で、臥位になると肩峰下の内圧が上がって血流がうっ滞するためと説明される。一方で関節包そのものは縮んでいないので、他動での可動域は比較的保たれ、三角筋の代償によって挙上できる例も少なくない。この「痛むが動く」という組み合わせが、可動域そのものが失われる肩関節周囲炎との分かれ目になる。

✓ 4. 正しい
夜間痛がある。
夜間痛は腱板断裂の慢性期で最も多く訴えられる症状である。横になると肩峰下滑液包周囲の内圧が上がって血流がうっ滞し、日中の動作で生じた炎症の刺激が重なって痛みが強まる。「患側を下にして眠れない」「痛みで目が覚める」という訴えが典型で、就寝時は肘の下に枕やタオルを入れて上腕を軽度外転・やや前方に支える肢位をとると楽になることが多い。
✗ 1. 誤り
上肢の挙上が不可能である。
腱板が断裂しても三角筋が働くため、痛みをこらえれば挙上できる例が多い。慢性期に特徴的なのはむしろ、挙上の途中(およそ60〜120度)で痛む有痛弧徴候や、他動で挙げた腕を保持できずに落ちてしまうdrop arm sign(とくに広範囲断裂で陽性となりやすい)のように「挙がるが途中でつまずく」所見である。まったく挙がらない場合は、広範囲断裂に加えて腋窩神経麻痺なども念頭に置き、三角筋の収縮の有無と肩外側の知覚を確かめる。
✗ 2. 誤り
肩関節の回旋拘縮がある。
腱板断裂では関節包の縮みがないため、他動での可動域、とくに外旋は保たれるのが原則である。他動外旋が明らかに出ないほどの回旋拘縮があるなら、まず肩関節周囲炎(凍結肩)を考える。長期の使用制限によって二次的な拘縮が加わることはあるが、慢性期の代表所見として挙げるものではない。評価では自動と他動の可動域を必ず分けて測り、どちらが制限されているかを記録する。
✗ 3. 誤り
肩峰骨頭間距離が広がる。
向きが逆である。腱板は骨頭を関節窩へ引きつけて回転の支点をつくるので、断裂するとその抑えが外れ、三角筋の上向きの力によって骨頭が上方へ移動する。結果として肩峰骨頭間距離(正常でおよそ7〜14mm)は狭くなり、5mm以下であれば広範囲断裂を疑う目安になる。単純X線正面像で健側と見比べると読み取りやすい。
ポイント
  • 腱板は骨頭を関節窩へ引きつけて回転の支点をつくる。断裂すると三角筋の上向きの力が優位になり骨頭が上方化し、肩峰骨頭間距離(正常およそ7〜14mm)は狭くなる。
  • 慢性期の代表所見は、夜間痛・有痛弧徴候(およそ60〜120度)・drop arm sign・棘上筋および棘下筋の萎縮(その結果、肩甲骨の棘上窩・棘下窩が陥凹して見える)・運動時の軋轢音。
  • 挙上は三角筋の代償でできることが多い。完全に挙がらないときは広範囲断裂に加え腋窩神経麻痺なども確認する。
  • 他動可動域は保たれるのが原則。強い回旋(外旋)制限があれば肩関節周囲炎(凍結肩)を鑑別に上げる。自動と他動を分けて測るのが要点。
  • 対応は、就寝時に上腕を支える肢位の指導、肩甲帯と腱板の機能訓練、日常動作の工夫。改善しない場合や脱力が強い場合は画像評価と専門医への紹介につなげる。
比較表
項目肩腱板断裂(慢性期)肩関節周囲炎(凍結肩)
夜間痛あり(特徴的)あり(拘縮期に強い)
自動挙上三角筋の代償で可能なことが多い可動域そのものが制限される
他動可動域比較的保たれる全方向、とくに外旋が制限
drop arm sign陽性となりうる(とくに広範囲断裂。小さな断裂では陰性のこともある)判定不能(他動でも挙上位を作れず、テストが成立しない)
肩峰骨頭間距離狭くなる(5mm以下は広範囲断裂を示唆)変化しにくい
筋萎縮棘上窩・棘下窩に陥凹(棘上筋・棘下筋の萎縮)目立ちにくい
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